「一見無駄な時間に思えることのほうが、思い出に残っていたりするよね」(撮影:松永卓也=朝日新聞出版)

「1年生とどう友だちになっていいかわからない」と悩む小学6年生の男の子に、お笑い芸人の小島よしおさんはどう答えるのか? 数多くの子ども向けライブを開催し、YouTubeチャンネル「おっぱっぴー小学校」も人気の小島さん。そんな小島さんが子どもの悩みや疑問に答える書籍『小島よしおのボクといっしょに考えよう』から、小島さんならではの、相手を思いやる距離の縮め方を紹介。年下・年上関係なく、小島さんがコミュニケーションで大切にしていることとは?

年下の子と友だちになりたいけれど…

【相談】
1年生のお世話係が、1週間に1回、回ってきます。1年生はかわいいので、友だちになりたいなと思っているんですが、あまり声がかけられません。どうしたらいいですか。(新6年生・小学6年生・男子)

【よしおの答え】

学年を超えて年下の子と友だちになりたい、って思える君はとてもすてきだね! 自分とは世代の違う人とどう仲良くなれるかな、っていう悩みは大人も抱えているもの。よしおの周りにも、君と同じ悩みを抱えている人は多いよ!

ちなみによしおは年齢にかかわらず、ガンガン話しかけに行けるタイプ。ふだんよしおが人に接するときに気をつけていることや、小学生時代に実際にどうやって低学年の子たちと話していたのかを、伝えるね。どんな方法が君に合っているのか、一緒に考えよう!

まずは、年下・年上関係なく、よしおがコミュニケーションで大切にしているのは、「名前を呼ぶ」こと。「当たり前だよ」って思うかもしれないけど、大人になると、役職がついたりして名前を呼ばれるってことが少なくなるんだ。

「名前」はその人に向けたメッセージ

例えば、「部長」とか「〇〇ちゃんのお母さん」とかね。よしおは仕事柄、現場ごとではじめましてのスタッフさんとかイベンターさん(お笑いイベントを企画したりする人のことだよ)が多いんだけど、そういうときに名前で呼びかけると、一気に距離が縮まる気がするよ。

ポイントは、初対面から名前を呼ぶこと。名前って、その人だけのものだから、「名前を呼ぶ」ってこと自体がその人へ向けたメッセージになると思うんだ。

君の学校がどれくらいの人数かわからないから、もう初対面の子はいないかもしれないけど、できるだけ名前で呼ぶことを意識してみて。無意識のうちにできているかもしれないけど、「名前で呼ぶ」ってことはこの先ずっと大切にしてほしいな。自分のことをちゃんと覚えてくれている、ってうれしいよね。

ちなみに、初対面でのチャンスを逃しちゃうと名前を聞きづらくなっちゃって……というパターンも、大人になると結構ある。だから、最初はやっぱり肝心かな!(実はよしおもよくあるよ(笑)。)

より距離を縮めようとするなら、「あだ名」もいいかもしれないね。よしおは小学生のころ、「こっくん」って呼ばれていた。小島っていう名字からついたあだ名。周りのみんなのことも、あだ名で呼んでいたよ。最近は「あだ名禁止」っていう学校もあるみたいだけど、相手が嫌だと思わないあだ名なら、よしおはいいと思うんだ。

例えば、橋本くんだったら「はしくん」とか「はしもっちゃん」とか。名前を少し変えるくらいのあだ名なら、呼びやすいし、きっと相手も嫌だとは思わないはず。「〇〇って呼んでもいい?」って聞くことを忘れずにね。

そしてもうひとつ初対面のコミュニケーションで大切にしているのは、「会話のキャッチボールの数を多くする」ってこと。どういうことかというと、相手が答えやすい質問をたくさんするんだ。

「どこから通ってきているの?」「血液型なに?」「朝ご飯は何食べた?」みたいな、考えなくても答えられる、受け取りやすい球のような質問を投げるんだ。

返しやすい球なら、きっと返してくれるはず。この方法は、相手について知ることもできるから、おすすめだよ。あらかじめ、相手が答えやすい質問ストックみたいなものをつくっておくといいかもね。ちなみに、この技は大人になってからもたくさん使えるよ!

それから、小学1年生にとって小学6年生ってすっごく大きく見える。君が1年生のころもそう思わなかったかな? だから、相手と目の高さが合うようにかがむことも大事だと思うな。安心感を与えて、1年生が心を開いてくれるといいね。

1年生に声をかけるとき、「〇〇くん、おはよう。朝ご飯は何食べたの?」って、名前を呼んであいさつして、簡単に答えられる質問を投げかけてみて。きっと1年生も喜んでくれるはず!

相手の反応を大切にしよう

次は、より距離を縮める方法を考えていこう。

よしおは小さいころから人を楽しませることが好きだった。小学生のころに、6年生が1年生を引率する遠足があったんだ。そのとき、1年生の子たちを楽しませようと、いろんなことをしたよ。ドラゴンボールの替え歌を友だちと歌って場を盛り上げたり、〇×ゲームやお買い物ゲームを提案したり!

芸人というのは人を楽しませるお仕事。そのときによしおがいつも意識しているのが、相手の反応を確認することなんだ。ギャグを披露したときに、場が盛り上がらなかったり、お客さんが引いていたりしたらそのギャグは封印する。もし、少しでも反応がよければ、もっと面白くできるように努力する。

芸人にはよしおみたいな、お客さんが笑ってくれることを大切にするタイプと、自分の中の面白いというものを追求するタイプがいる。芸の世界だったらどっちが正解、というのはないんだけど、日常生活のなかで相手を楽しませようとする場合、特に低学年の子に向けては、相手が楽しんでくれるか、を考えることが大切だと思うんだ。

よしおはふだん子どもたちに向けたライブをしているんだけど、お客さんで来ている子どもと一緒に「おっぱっぴー」をやったり、一緒に歌を歌ったり、とにかく一緒に楽しんで盛り上がることをライブに取り入れているよ。

一緒に楽しむことを意識して

君に「一発ギャグをやろう!」とは言わないけれど、一緒に楽しめるゲームやクイズを用意しておくのはいい作戦かも。道具や、難しい知識がいらないものなら、すぐにみんなで楽しめるはず。さっきも話したような〇×ゲームはすぐに勝敗がつくから何回も楽しめるね。

他には、心理テストやクイズなんかもいいと思う! 心理テストやクイズを自分で考えるのはなかなか難しいけど、きっと図書館に本がたくさんあるはず。お世話係のときに本を借りておけば準備もばっちりだね。

クイズをやるときは、相手が楽しんでいるか、ちゃんと参加できているかも確認してあげよう。そしてなによりも大切なのが君自身も楽しむこと。“一緒に楽しむ”ことを意識してね!

一発ギャグではないけど、手を使って簡単にできるマジックなんかもおすすめだよ。鉛筆が浮いているように見えるやつとか、親指が手のひらを貫通したように見えるやつとか。知っているかな?

よしおは小学生のころ、「耳に穴が開いちゃった!」っていうマジックをよく披露していたよ。耳を折りたたんで耳の穴を隠すんだ。それで、手を離したら「耳に穴が開いちゃった!」ってね。これは、よしおが低学年のころに高学年のお兄さんにやってもらって、引き継いだ伝統芸(笑)。ネタバレしたら、1年生にもやり方を教えてあげてね。

芸人っていうのは先輩と後輩のつながりが強くて、今までたくさんの先輩にお世話になったし、今ではよしおにもたくさんの後輩ができた。一時期、後輩と一緒に過ごす時間がなんだか無駄に思えちゃって、仕事で必要がなければ一緒にいなくてもいいか、って思ったこともあった。

無駄な時間こそすてきな思い出になる

だけど、たくさんの先輩がよしおにしてくれたように、「無駄な時間も一緒に過ごしたいな」って思うようになったんだ。一緒に過ごしたくだらない時間が、何よりもかけがえのない思い出になっているからね。

ゲームの仕事に行った先輩を迎えに、駅でゲームのコントローラーを首に下げて待っていたり、先輩と居酒屋に行ったときに「あれ? なんか外にでかいハトがいるぞ?」と言われて「いました? ちょっと見てきます」と外に出て暗がりの中、ハトのモノマネをしたり……。

一見無駄な時間に思えることのほうが、思い出に残っていたりするんだ。


運動会の準備とかでもそうだけど、一緒に何かをする、っていう時間はすごく大切。効率的に物事を進めるなら、やることだけやっておしまい、っていうのがスムーズなのかもしれない。だけど、一緒に何かをやって、ときに脱線しておしゃべりしたりふざけあったりすることのほうが人と人との距離を縮める、って思ったんだ。「無駄な時間なんてひょっとしてないんじゃないかな?」と最近は思うようになったよ。

だから、「1年生と友だちになりたい」って君が思っているなら、勇気を出して話しかけてみて。自分が思っていることって相手も思っていることが多いと思うんだ。

きっと1年生も君と仲良くなりたいはず。ぜひ、楽しくてくだらない時間をたくさんつくってほしい。それは、大人になってからも思い出す、大切な時間になるよ。今小学生の間ではやっている遊びとか、よかったらよしおにも教えてね!

……って、僕は思うんだけど、君はどう思うかな?

(小島 よしお : お笑い芸人)