2023年に大ブレイク。ジョニー志村さんの「観察眼」とは(撮影:尾形文繁)

自然な表情と話し方の“タモリさん”のモノマネで、一躍大ブレイクを果たしたジョニー志村さん。キャリアは23年目、50歳の現在も芸を磨き続けている。

ビッグチャンスにつながった“タモリさん”のモノマネの背景にあったのは、鋭い「観察眼」徹底した「分析思考」だ。

「できるからやるモノマネ」ではなく「やりたいからやるモノマネ」にこだわる。自身のスタイルを貫くジョニーさんの姿勢は、ビジネスパーソンにも役立つ。

2022年12月17日放送の『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)を転機に、ジョニーさんは大ブレイクのチャンスをつかんだ。

本番では「テレフォンショッキングのゲストに来たとんねるず」を、こにわとあしべによる“とんねるず”と共に披露。自然な“タモリさん”は業界内外で反響を呼び、今や、テレビを中心に引っ張りだことなった。

*この記事の前半:似過ぎる"タモリ"で大ブレイク!50歳芸人の挑戦

鏡を見ながら「笑ってしまう」くらい似ていた

28歳でモノマネ芸人に。

活動初期から、“タモリさん”はレパートリーにあった

しかし当初は、浜田省吾や舘ひろしなど、サングラスをかけた歌手に扮する「モノマネメドレーのつなぎ」として「こんにちは。タモリで〜す。続いては……」とつぶやく程度。

40代半ば、所属事務所の社長から「タモさん、できるんじゃない?」とすすめられ、本腰を入れて研究するようになった。

当時はスキンヘッドであったが、髪の毛を伸ばしたところ「歳をとったせいか、顔が似てきた」と実感。

研究の成果を確かめるべく、鏡を見ながら意識的にほうれい線を落とし、眉毛を上げたら「自分でも笑ってしまうくらい」に板に付いた。


神奈川・八景島シーパラダイスにて。イルカにマイクを向ける姿にも貫禄が(写真:ジョニー志村さん提供)

しかし、当初は表情だけだった。

“タモリさん”の独特な「会話の間」話し方を分析しはじめたのは『ザ・細かすぎて〜』の最終オーディション参加がきっかけに。

共演するこにわとあしべの「足を引っ張らないように」と、猛練習した。

『ザ・細かすぎて〜』で披露した元ネタは『森田一義アワー 笑っていいとも!』の名物コーナー、“タモリさん”とゲストが軽快にトークする「テレフォンショッキング」。

“とんねるず”が“タモリさん”との思い出を語り合い、番組終了後について問いただすくだりだ。

「1分ほどのVTR」を見返して徹底的に研究

最終オーディションへの参加決定から当日までの1週間で、ジョニーさんは「1分ほどのVTR」を何度も見返して研究した。

繰り返し観察したところ「今のタモリさんは、のどに声を引っかける感じで話すのか」と発見。

何かを思い出して「あぁ〜!」と発する瞬間のリアクション、そして、本番でも披露した台詞「長い付き合いだよねぇ?」「あ〜、ごぼ天うどん!」「それは絶対言うなって」「決まってないよ何も!」を、身体に刷り込ませた。


口角の下げ方、場面に応じた声のトーンなども徹底的に研究したという(撮影:尾形文繁)

以降、コツをつかみ、“タモリさん”のモノマネをブラッシュアップ。

自身のスタイルは「できるからやるモノマネ」ではなく「やりたいからやるモノマネ」と述べるジョニーさんの根底には、モノマネ相手への敬意もにじむ。

そして、巧みなモノマネの背景には、相手の「癖」を見抜く「観察眼」と「分析思考」がある。ビジネスパーソンにとっても、学びたくなるスキルだ。

「相手の癖」をよく見て、自分に取り入れる

日常生活で、ふと「この人を見習いたい!」と衝動に駆られるとき、憧れの先輩や上司、友人などに近づくには何をするべきか。ジョニーさんに尋ねた。

マネする秘訣は『よく見ること』です。ただ見るのではなく、じっくり『この人は癖がないか?』と観察する。そうすれば、ぼんやりと見ているだけでは気づかない癖が見えてきます。それから、見つけた癖を『いかに自分に取り入れるか』と、考えるのも必要です」


自分の声を客観的に知るべく、スマホの録音機能による“声マネ”の壁打ちも(撮影:尾形文繁)

意識したうえで「観察」して「分析思考」を持つ。

この姿勢は、好印象な相手に近づくために限らず、印象のよくない相手を“反面教師”として、自分の振る舞いを正すのにも使えそうだ。

表情、身ぶり手ぶり、話し方……。声はいつ「どのようなトーン」になるのか、相手との会話で「目線を外すのか」と、実際、タモリさんのモノマネを研究した際には、細かく観察したという。

さらに、幼少期から国旗が好きだったジョニーさんには「世界の国旗と首都がパッと言える」という意外な特技も。

その特技にも、相手の特徴を見抜く鋭い「観察眼」の片鱗があった。

「世界196カ国(外務省・2023年3月20日時点)の国旗と首都を、独自の語呂合わせで覚えたんです。たとえば、アルメニアであれば、上から赤・青・オレンジと三色旗の特徴を捉えて、首都がエレバンだから『アルメニアの人は肩が凝るから、エレキバンを貼るんだな』と(笑)」

ここで「アルメニア」が出たのは、インタビュー現場で筆者が実際に出題したため。実際、ネット検索のうえで出題したところ、即座に回答したのは驚いた。

「天才肌」ではないから、日々の努力を

幼少期からの経験もまた、モノマネ芸人の糧に。

かつて、自宅で集めていた国旗のレプリカを売り払ってしまい、モノマネ芸人として「売れたら買い集めよう」としたのも、活動の原動力になったそうだ。


売れ続けるのは「難しい」と痛感。熾烈なモノマネ界で生き残るため、芸を磨き続ける(撮影:尾形文繁)

自身はパッと見てすぐモノマネができる「天才肌」ではなく「細かく観察して、アウトプットしていかなければできない」タイプと自称。

50歳での大ブレイクを果たしてもなお、ジョニーさんは努力を重ねつづける

*この記事の前半:似過ぎる"タモリ"で大ブレイク!50歳芸人の挑戦

(カネコ シュウヘイ : 編集者・ライター)