蔚来汽車は7月をピークに販売台数が減少に転じ、経営戦略の見直しを迫られている。写真は6月に発売した新型ステーションワゴン「ET5T」(同社ウェブサイトより)

中国の新興EV(電気自動車)メーカーの蔚来汽車(NIO)が、全従業員の1割前後を11月中に削減することがわかった。

「業績が期待値に届かず、事業継続へのプレッシャーが増している。組織を身軽にして戦いに臨まなければならない」。蔚来汽車の創業者で董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)を務める李斌氏は11月3日、全従業員に宛てた社内メールでそう述べた。

李氏のメールによれば、蔚来汽車は2023年に5つの新型車を投入し、中国EV市場の車両価格が30万元(約616万円)を超えるクラスで4割以上のシェアを獲得した。だが、それでも「目標と実績の乖離は大きい」と、李氏は危機感をにじませた。

「値下げ効果」が長続きせず

蔚来汽車の2023年1月から10月までの販売台数は累計12万6000台。そのなかで7月の販売台数は初めて2万台を超えたが、その後は勢いが続かず、10月は1万6000台に減少した。

7月の販売が好調だった背景には、蔚来汽車が6月中旬に発表した販売戦略の転換がある。同社のEVは電池交換式の設計を採用しており、それ以前は電池交換サービスを無料で提供していた。これを有料化したのと引き換えに、全モデルのメーカー希望価格を3万元(約62万円)引き下げたのだ。

大胆な戦略転換は、蔚来汽車の販売台数を一時的に押し上げた。しかし結果としては、需要の先食いに終わった格好だ。

(訳注:蔚来汽車の販売戦略転換の詳細は『中国新興EVメーカー、全車「59万円値下げ」の賭け』を参照)

中国EV市場の競争は激烈であり、蔚来汽車に立ち止まる余裕はない。同社と理想汽車(リ・オート)、小鵬汽車(シャオペン)の3社は、中国の自動車業界で「造車新勢力」と呼ばれる新興メーカー群を代表する存在だ。

しかし2023年に入って、3社の実績に落差が目立ち始めている。最も好調な理想汽車は10月の販売台数が4万台を突破。1〜10月の累計販売台数は28万台超と、蔚来汽車の2倍以上だ。


蔚来汽車は独自開発したスマートフォンを発売するなど独創性をアピールするが、市場の評価に結びついていない。写真は創業トップの李斌氏(同社ウェブサイトより)

小鵬汽車は2022年後半から販売が伸び悩み、2023年1〜10月の累計販売台数では蔚来汽車に及ばない。だが、2023年後半から勢いを取り戻しつつあり、10月の販売台数は2万台を超えた。また、ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)が7月末に小鵬汽車への出資を発表したことも、資本市場における同社の再評価につながった。

組織スリム化で巻き返せるか

蔚来汽車と小鵬汽車はアメリカのニューヨーク証券取引所に、理想汽車はナスダックにそれぞれ株式を上場している。11月3日時点の時価総額を比較すると、理想汽車の374億8500万ドル(約5兆6368億円)、小鵬汽車の143億3300万ドル(約2兆1553億円)に対し、蔚来汽車は133億9200万ドル(約2兆138億円)と最下位に甘んじている。

創業トップの李氏は冒頭の社内メールの中で、「これからの2年間は激烈な競争を生き抜かなければならない自動車業界の変革期であり、経営環境は不確実性に満ちている」と述べ、組織スリム化の意義を次のように強調した。


本記事は「財新」の提供記事です

「わが社が“決勝”まで勝ち進むには、経営効率を一段と高め、コア事業に十分なリソースを投入しなければならない。そのために、社内組織を最適化し、コスト削減と効率アップを図る機会を逸してはならない」

(財新記者:余聡)
※原文の配信は11月3日

(財新 Biz&Tech)