BYDの自動車販売は1〜9月の累計で前年同期比75%の伸びを記録した。写真はBYD車の生産ライン(同社ウェブサイトより)

中国のEV(電気自動車)最大手の比亜迪(BYD)は10月30日、2023年7〜9月期の決算を発表した。同四半期の売上高は前年同期比38.5%増の1621億5100万元(約3兆3162億円)、純利益は同82.2%増の104億1200万元(約2129億円)と大幅な増収増益を達成。四半期ベースの過去最高益を更新した。

1〜9月の累計では、売上高は前年同期比57.7%増の4222億7400万元(約8兆6358億円)、純利益は前年同期の2.3倍の213億6700万元(約4370億円)に上った。

EVは8割増、PHVも7割増

好業績の主因は自動車販売台数の急増だ。1〜9月の販売台数は前年同期比75.4%増の207万9600台。BYDはすでにエンジン車の生産・販売を終了しており、販売の内訳はEVが同80.1%増の104万8400台、PHV(プラグインハイブリッド車)が同72.2%増の102万1800台だった。

注目すべきなのは、7〜9月期のEVのグローバル販売台数が43万1600台に達し、世界首位のテスラの43万5000台に肉薄したことだ。ただし、テスラは7〜9月期に工場の改良工事のため生産ラインを一時停止していた。BYDが2023年通期でテスラを超えらえるかどうかはまだ不明瞭だ。

BYDは中国市場での販売好調に加えて、輸出も急速に伸ばしている。決算報告書によれば、1〜9月の輸出台数は前年同期の5倍超の14万5500台。そのほぼ半分の7万1000台を7〜9月期だけで輸出した。


BYDの輸出は7〜9月期にさらに加速した(写真は同社ヨーロッパ法人のウェブサイトより)

同社の輸出先はヨーロッパ、東南アジア、オーストラリア、南アメリカなど世界の58の国・地域に広がっている。さらに、BYDはタイに年間生産能力約15万台の完成車工場を建設中であり、2023年7月にはブラジルにも同規模の工場を建設すると発表した。

バフェット氏が持ち株を売却

BYDの快進撃に死角はないのか。不透明要素の1つはヨーロッパ市場の動向だ。EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会は10月初旬、中国製EVに対して不当な補助金が支払われていたかどうかに関する調査開始を決定。ヨーロッパ市場への自動車輸出に逆風が吹き始めている。

アメリカの著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社のバークシャー・ハサウェイが、BYD株へのエクスポージャーを落としているのも気がかりだ。


本記事は「財新」の提供記事です

香港証券取引所の開示情報によれば、バークシャーは2022年末時点でBYDの発行済株式の約15%を保有していた。ところが、その後7回にわたって持ち株を売却し、2023年10月15日時点の保有比率は7.98%に低下した。

(訳注:バークシャーは2008年にBYDに初投資した後、2022年に一部を売却するまで14年にわたって長期保有していた)


(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は10月31日

(財新 Biz&Tech)