最内粘るダイワスカーレットと外から差すウオッカ(撮影:下野雄規)

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 10月29日(日)に東京競馬場で行われる天皇賞(秋)(3歳上・GI・芝2000m)。秋の中距離王者決定戦として幾多の名勝負を生んできた同競走だが、本稿では“宿命のライバル対決”といわれた08年のレースを振り返ってみたい。

 ウオッカとダイワスカーレット――。同世代の2頭は牡馬と互角以上に渡り合い、同時に競馬史に残る好敵手でもあった。両者が初顔合わせとなった07年のチューリップ賞ではウオッカが先着したが、その後の桜花賞、秋華賞、有馬記念ではダイワスカーレットがリベンジ。天皇賞(秋)が5度目の激突であり、ダイワスカーレットが今回も意地を見せるのか、ウオッカが久々の祝杯をあげるのか、多くのファンが注目していた。

 秋風すり抜ける夕暮れ、東京競馬場の15時40分。10万人超のファンが固唾をのんで見守る中、高らかにファンファーレが響き、ゲートが開いた。初の府中、長い直線は覚悟のもと、ダイワスカーレットが果敢にハナを主張。2F目から11秒台の厳しいラップがたんたんと刻まれ、1000m通過は58.7という速い流れとなった。一方のウオッカは中団の7番手あたりで待機し、先行集団に睨みをきかせる。

 大ケヤキを通過してもスピードは緩まず、直線に入ると失速どころか11.3-11.3となお加速。ダイワスカーレットは勝負を決めにかかるが、ウオッカも黙っていない。馬場の中央をディープスカイと併せ馬の形で懸命に追いすがり、3頭はもつれあっていく。内で粘るダイワスカーレットか、外から差すウオッカか、間から伸びるディープスカイか。だが、最後は牝馬2頭の鼻先がぴったり重なったところがゴール。改めて両者の“宿命”を印象付けた。

 長時間におよぶ写真判定は、わずか2cmという差でウオッカに軍配。1円玉の直径と同じだけの、たった少しの差が答えを分けた。ダイワスカーレットは続く有馬記念を制して引退。5戦にわたるライバル物語はウオッカが2度先着、ダイワスカーレットが3度先着とほぼ互角。約15年が経った今でも語り草になる名勝負、そして名ライバルだった。天皇賞(秋)が来るたび、多くのファンが思い出す一戦であることは間違いない。