AIが生成した画像を背景に使用した実験的アニメ「犬と少年」をNetflixが公開しました。Netflixはこのアニメについて「クリエイターを補助するツールとして、画像生成の技術をアニメ制作の背景画に活用することを試みたプロジェクト」であると説明しています。

Netflix クリエイターズ・ベース、rinnaとWIT STUDIOとの共同制作プロジェクト、アニメ「犬と少年」を公開。クリエイター支援の可能性に一手を。 - About Netflix

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アニメ・クリエイターズ・ベース アニメ「犬と少年」本編映像 - Netflix - YouTube

2023年1月31日、Netflixのアニメ部門「Netflix アニメ・クリエイターズ・ベース」と、AIキャラクター開発・研究企業のrinna、アニメ「進撃の巨人」や「SPY×FAMILY」を手がけたWIT STUDIOが共同プロジェクトアニメ「犬と少年」を公開しました。

このプロジェクトではアニメ制作に加えてアニメの背景画生成ツールの共同開発も進められており、「背景美術制作を最新技術で補えるか」の実験が行われました。

セリフのない約3分間のアニメ映像の中には、四季折々の美しい背景画が登場します。



港町



紅葉に照らされる小駅



雪景色など。



このアニメの背景のレイアウトは手書きで描かれています。



手描きの背景を基にAIが生成した画像が以下。スタッフロールにも「Background Designer(背景デザイナー)」が「AI(+Human)」とクレジットされています。



前段階の画像を基にAIが生成した画像が以下です。



最終的に使用された画像には手描きの修正が加えられています。



撮影監督の田中宏侍氏は制作の課題について「日本の制作現場では仕事を完全に分業することで効率化が図られているが、複数の作品を同時進行で進める者も多く、一つの作品に注力することが困難な現状もある。作り手にクリエイティブな仕事をする時間を与える方法を考えたいと思っていた」と述べました。

また、アニメーション監督の牧原亮太郎氏は本プロジェクトの最大の学びについて「ツールと手描きの手法を組み合わせて人間にしかできないことに集中した結果、表現の幅を広げられることを実感した」と語っています。

なお、「Netflixが人間のアーティストへの支払いを避けるためにAIを使用したのでは」「AIに人間の仕事が奪われる」と感じた一部のネットユーザーからは「Humanという形式だけのクレジットに落とし込まれたアニメの世界は怒るべき。アニメ作家がその技術を磨くために費やした、一生分の血と汗と涙の結晶に対する平手打ちだ」などという非難のコメントが寄せられました。





Netflixは、本プロジェクトが「最新技術による適切な支援を通した柔軟なアニメ制作の実現」に寄与する取り組みとなればと話し、アニメ業界の人材不足が懸念されるなか、AIによりアニメ業界を補助する試みを行った真意について説明しました。