by Solen Feyissa

アメリカのマイケル・ベネット上院議員が、2023年2月2日付でAppleのティム・クックCEOとGoogleのサンダー・ピチャイCEO宛に直々の書簡を送り、アプリストアから直ちにTikTokを削除するよう要求しました。背景には、中国のアプリであるTikTokに対する国家安全保障の懸念があります。

Bennet Urges Apple, Google to Remove TikTok from App Stores | Press Releases | U.S. Senator Michael Bennet

https://www.bennet.senate.gov/public/index.cfm/press-releases?id=F0E5599B-C7E4-47DC-8C9D-7AD46BC3EF93

TikTok opened a transparency center as it faces renewed threats of government bans - Vox

https://www.vox.com/recode/2023/2/2/23582202/tiktok-headquarters-press-accountability-ban-trump

ベネット上院議員はAppleとGoogleに送った書簡の中で、「ほとんどのソーシャルメディアと同様に、TikTokはユーザーの顔や声紋を含む膨大かつ洗練されたデータを収集しています。しかし、TikTokには他のソーシャルメディアにはない独自の懸念があります。それは、TikTokの親会社であるByteDanceは、中国の法律により『国の情報機関の活動を支援、援助、協力する義務』を負っていることです」と指摘しました。



by Marco Verch Professional Photographer

伝えられるところによると、TikTokはアメリカで3番目に人気のあるソーシャルメディアアプリで、1日平均80分以上TikTokを使っているアメリカ人は1億人以上に及ぶとのこと。そのため、TikTokが国民の個人情報を収集することには強い懸念があると、ベネット上院議員は述べています。

その上でベネット上院議員は、「中国共産党がTikTokをアメリカに対する武器にする可能性があることは明らかです。具体的には、ByteDanceにアメリカ人の機密データを引き渡させたり、アメリカ人が受け取るコンテンツを中国の利益のために操作したりすることが挙げられます。このように重大な懸念が高まっていることから、各社のアプリストアからTikTokを直ちに削除するようお願いします」と述べて、AppleとGoogle両社に対してTikTokの速やかな削除を求めました。

TikTokに危機感を募らせているのは、ベネット上院議員だけではありません。2022年10月には、ByteDanceがTikTokでアメリカ人の位置情報を追跡する計画を進めていたことが明らかになったことがあるほか、その後実際にByteDanceの社員がアメリカ人ジャーナリストのIPアドレスを調べて位置を特定しようとしていたことが判明しました。このような問題を受けて、これまでに27の州政府がTikTokを全面的もしくは部分的に規制する法案を可決しているほか、12月には政府のスマートフォンでTikTokを利用することを禁止する法案が連邦議会で可決されています。

しかし、これらの規制の多くはあくまで政府機関の端末が対象であるため、アメリカの一般市民はTikTokを使うことができます。そのため、2022年末には規制の対象をアメリカ人全員に拡大し、TikTokを全面的に禁止とする「TikTok禁止法案」が議会に提出されました。

「TikTok禁止法案」が議会に提出される、中国共産党へのデータ引き渡し阻止が目的 - GIGAZINE



AppleやGoogleのアプリストアから削除されると、TikTokは巨大な市場を失うことになるため、同社はアメリカ政府の態度を軟化させるべく15億ドル(約1930億円)もの資金を投入してアプリの安全性をアピールしています。

こうした取り組みの一環として、TikTokは2023年1月31日にジャーナリストらをロサンゼルスの本社に招いて、「透明性・説明責任センターのツアー」を実施しました。このイベントでは、テキサスに本拠を置くIT大手のOracleと提携して、アメリカ人ユーザーのデータをアメリカのサーバーに移す「プロジェクト・テキサス」について案内されたほか、アメリカ事業の一部を中国から切り離す計画についても説明されました。

しかし、記者らの前に登壇したTikTok幹部が中国への言及を避けるなど、イベントはジャーナリストらの懸念を解消するのに十分な内容ではなかったとのことで、招待を受けた報道機関の1つであるVoxは「TikTokの新しい透明性と説明責任センターは記者団に、ぱっとしないレコメンデーションアルゴリズムの詳細や、アプリがどのようにコンテンツを管理するかの具体例を提供しましたが、物事をはっきりさせるような話は何もありませんでした」と評しました。