この夏、Googleとサムスン(Samsung)は、最新の共同マーケティング活動を発表した。テック大手Googleとハードウェア大手のサムスンによるこのキャンペーンでは、2000年代初頭のノスタルジーを取り入れるとともに、TikTokerのアディソン・レイ氏を広告塔として起用し、Z世代をターゲットとしている。

レイ氏を起用した同社の最新の広告キャンペーンでは、Googleは、Android搭載サムスンGalaxyデバイスを、Googleのアプリやサービスと組み合わせて使うことで、どのように楽しい時間を作り出せるかを伝えている。

「古きよき時代時代」というトレンド



Googleのプラットフォームおよびエコシステムブランドマーケティング担当バイスプレジデントのエイドリアン・ロフトン氏は、「私たちは(2021年に続いて)2022年においてもパートナーシップを継続し、Galaxy S22シリーズを含むサムスンのプレミアム・デバイスの購入を促進するためのGoogle主導のキャンペーンを行った」と述べた。

このキャンペーンでは、サムスンのハードウェア上でGoogleのサービスがどのように利用できるかを示している。バックストリート・ボーイズ(Backstreet Boys)の楽曲を使った広告では、レイ氏はサムスンのスマートフォンに搭載されているGoogle機能(鼻歌で楽曲を検索する機能)を使って両社を宣伝している。

「古きよき時代時代」を活用した、懐かしさを基盤にしたマーケティングトレンドは現在人気があり、かつブランドにとって安全な手段となる。Googleとサムスンはこの流れに明らかに便乗しようとしているのだ。「私たちの(ブランド)ミッションを届けるために、我々はいつもストーリーを使ったアプローチを活用してきた。軽やかで親しみやすい方法でアプローチすることが、私たちがもっとも得意としている方法だ」とロフトン氏は言う。

両社が協力するのはこれが初めてではない。サムスンとGoogleは2021年後半に提携し、サムスンの折りたたみ式スマートフォンGalaxy Zシリーズを「未来は(たたまれた状態から)開かれる(The Future Is Unfolding)」キャンペーンで宣伝した。このキャンペーンにおいて、GoogleのブランドとプロダクトがGalaxyとペアを組んだ。Googleとサムスンは、このキャンペーンの成果を公表することを控えた。

クリエイターを「活用」する



ロフトン氏は全体的な予算の詳細を明らかにしていないため、広告予算のどの程度がキャンペーンに割り当てられているかは不明だ。カンター(Kantar)のデータによると、Googleは2022年これまで、マーケティング事業に2億1000万ドル(約280億円)強を費やしている。ロフトン氏は、ソーシャルプラットフォームとコネクテッドテレビの間で広告予算がどのように分配されているかについてもコメントを避けた。

ほかの大手ブランドと協力して双方のパートナーのためのブランド認知度を高めるという手法は、Googleのマーケティング戦略の一部として行われてきた。DIGIDAYが最近報じたように、GoogleはKFCと提携してアプリのマーケティング戦略を立て、その一環としてKFCのアプリの新バージョンを消費者向けに開発してブランドを強化し、顧客が同チェーンの製品を購入しやすいようにした。

今日の広告市場では、ブランドはクリエイターとより多くのコラボレーションを行っている。なぜなら、ブランドはクリエイターのユニークなオーディエンスとファンベースを活用しながら、新しいオーディエンスやリーチの難しいオーディエンスにリーチできるからだ。

TikTokスターの選考過程で、Googleは、「世界中の情報を整理して誰にとってもアクセスしやすく便利にする」という同社のブランド価値を体現していると考えるインフルエンサーを探し出した。また、Z世代のなかでも 「iPhoneからAndroidへ乗り換え」るかもしれないユーザーたちに向けて広くアピールできる人材を探していたと、ロフトン氏は述べた。

クリエイターを広告に起用する理由



動画や画像編集用のモバイルアプリを開発するライトリックス(Lightricks)のブランドコラボレーション担当バイスプレジデントのコーベット・ドラミー氏は、「このような広告は、クリエイターを従来型の大衆市場向け広告キャンペーンに引き込むという、これまでと異なる方法で共同制作しようとするものだ。しかし、コンテンツが実際にクリエイターによって制作されたものではないため、スピード、コスト、機敏性など、クリエイターと協力することの重要な利点の多くが活用されない」と指摘する。

とはいえ、Googleの狙いはクリエイター活用だけにあったわけではない。オバーロ(Oberlo)によると、TikTokユーザーの39%が18歳から24歳だ。そして、アディソン・レイ氏のオーディエンスは主に24歳以下であり、Googleは業界でもっとも影響力のある人材の1人と協力し、若いオーディエンスたちに何ができるかを実証する機会を見出したのだ。

「アディソンやチャーリー・ダミリオ(Charli D'Amelio)のようなスターたちはZ世代にとって認識しやすい顔であるため、雑然とした状況を切り抜けるのに役立つ」とAIソーシャルデータおよびコンバージョン技術を手がけるインフルエンシャル(Influential)のCEOであるライアン・デタート氏は述べている。「バックストリート・ボーイズを介したノスタルジックさの取り込みにより、若い頃の歌に音の親近感を持つミレニアル世代も捉えることができる」。

[原文:Why Google and Samsung partnered with TikTok personality Addison Rae for ’90s nostalgia-filled campaign]

Julian Cannon(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)