インプラント治療に保証はついているの? どんなケースが対象になる?

写真拡大 (全5枚)

決して治療費は安くない「インプラント治療」。不安は治療の痛みだけでなく、費用や治療後の経過などにまで及びます。もし、インプラント治療後、すぐに不具合が起きてしまった場合、保証は適用するのでしょうか。金銭面や治療面の不安を解決するために、「高木デンタルクリニック」の高木先生が、インプラントの保証について解説してくれました。

監修歯科医師:
高木 有哉(高木デンタルクリニック 院長)

日本大学歯学部卒業。日本大学大学院歯学研究科歯科補綴学講座卒業。東京都新宿区の川口歯科診療所に勤務。2019年、東京都文京区の「高木デンタルクリニック」院長に就任。一般歯科治療から口腔外科、矯正歯科まで、幅広く診療しており、真心をこめた丁寧な対応を心がけている。歯学博士。ノーベルバイオケア専門医、インビザライン認定医。

標準でメーカー保証がついている

編集部

インプラント治療には、保証期間はあるのでしょうか?

高木先生

たいていの場合、インプラント治療には保証がついています。インプラント器具のメーカーによって異なりますが、当クリニックで使っているメーカーには、5年間の保証がついています。中には、10年間保証してくれるメーカーもあるようです。

編集部

保証があれば不安も解消されそうですね。保証がついていると、どのような治療が受けられるのでしょうか?

高木先生

保証期間中にインプラントが取れたり欠けたりして破損した場合、無料で新しい器具を入れることができます。また、器具の代金だけでなく、手術にかかる費用も無料になりますよ。ただし、費用はかかりませんが再手術になるため、治療はまた最初からになります。つまり、保証ではどうしようもない、時間的なコストはどうしてもかかってしまいます。

編集部

インプラントが破損した場合、例外なく保証対象に当てはまるのでしょうか?

高木先生

食事など日常生活の範囲内で破損したものに関しては、保証の対象になります。しかし、メインテナンスをまったくしていなかったり、殴られるといった不慮の事故にあったりして破損した場合などは、保証対象外になることもあります。また、土台となる骨がなくなったことが破損の原因だと、そもそも再手術ができません。

編集部

インプラントの治療前に、保証に関する契約などは必要ですか?

高木先生

基本的にインプラント保証は治療とセットなので、特別な契約などはありません。ただし、保証が有効なのは、同じクリニックで再手術する場合がほとんどなので、そこに関しては注意が必要です。どちらにせよ、治療前に医師からの説明があると思いますよ。

トラブルの放置は厳禁

編集部

インプラント治療後におきやすいトラブルについても、教えてください。

高木先生

トラブルの多くは、被せ物が破損するというケースです。土台のネジが壊れることもありますが、可能性は相当低いですよ。今まで1000件以上治療した中で、数件しか見たことがありません。メーカー保証は基本的に土台部分ですが、もちろん被せ物の保証も当クリニックの場合は5年間ついています。ほかのクリニックに関しても、同じような感じではないでしょうか。

編集部

「もしかしたら、インプラントのトラブルがおきているかも……」というサインはありますか?

高木先生

インプラントの土台にトラブルがおきていると、歯が揺れます。他方、被せ物のトラブルの場合は欠けることが多く、歯に食べ物がつまりやすくなるのがサインです。食べ物がつまったり歯が揺れたりしても、痛みがあるわけではないので、そのまま放置する人もいます。しかし、これが悪化の原因になります。初期であれば手術をせずに治せることも多いので、異常を感じたらすぐに来院してください。

編集部

これらのトラブルは、なにが原因なのでしょうか?

高木先生

トラブルの多くは、歯ぎしりが原因です。就寝中、歯ぎしりで無意識のうちに、歯に大きな負担をかけてしまっているのです。歯ぎしりは、マウスピースで防止できるので、治療後の経過観察などで注意を受けたら、相談してみるといいかもしれません。

4か月に一度はメインテナンスを

編集部

トラブルを避けるためにも、治療後に気をつけるべきことはなんですか?

高木先生

やはり、定期的にきちんとメインテナンスを受けることです。インプラント自体はむし歯になりませんが、汚れや被せ物の破損が原因で、周囲の組織に炎症がおきる「インプラント周囲炎」になることがあります。骨が少しずつなくなり、インプラントが脱落することもあるので、気をつけたいですね。

編集部

ほか、注意点があれば教えてください。

高木先生

インプラントを入れていない、まだ残っている歯を大切にすることも重要です。残りの生えている歯のケアをしっかりとおこなえば、噛む力が維持できます。インプラントをした歯だけでなく、口内全体をしっかりとケアしましょう。

編集部

メインテナンスは、どれくらいの頻度でおこなえばいいですか?

高木先生

最低でも、4か月に一度はメインテナンスを受けるようにしましょう。インプラント治療は手術後も続いていくものなので、しっかりと定期的に来院してください。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

高木先生

インプラント治療をする際、患者さんによく怖くないかを聞かれますが、手術自体は麻酔をしておこなうため、治療中に痛むことはありません。個人的には、抜歯のほうが痛いと思います。手術が怖いからとブリッジを選択する人もいますが、インプラントだと1本の歯で済むところを、ブリッジは3本の歯を治療しなければいけません。その分、メインテナンスも大変になります。術後に痛みや腫れがおこることがありますが、それは体を回復しようとしておこる症状です。心配することはないので、インプラント治療をあまり怖がらないでください。

編集部まとめ

インプラント治療には保証が標準でついており、特別な契約などは必要ないとのことでした。また、費用がかからずに再手術もしてもらえるようですが、異変を感じたまま放置すると、イチからの治療になるので手間がかかります。そうならないためにも、定期的なメインテナンスや早めの治療を推奨します。