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岐阜市の市立中学校3年の男子生徒が自殺したとみられる問題で、同級生の男子生徒3人を強要などの疑いで、書類送検する方針を固めたと岐阜新聞(12月20日岐阜新聞Web)が報じた。

岐阜新聞によれば、3人は男子生徒が自殺する前日、学校内のトイレで無理やり土下座させるなどしたという。さらに3人のうちの1人は、亡くなった男子生徒に対する暴行や恐喝の疑いも持たれている。

言葉にならないほどの痛ましいいじめだが、学校問題に取り組んできた弁護士は、刑事事件化することをどう評価するだろうか。またいじめ被害にあった場合、親はどのように対応すればよいのか。高島惇弁護士に聞いた。

●「今後、刑事事件化するケースは増えてくる」

「刑事事件化することについては、今の世論を考慮すると妥当な結論だと思いますし、今後より刑事事件化するケースは増えてくると思います。

今の教育現場においては、いじめ防止対策推進法の施行もあっていじめの認知件数が激増しており、いじめ防止に向けた取り組みも積極的になされています」

認知件数が激増している中で、学校側の対応は十分になされているのか。

「教師として行える活動に限度があるのが実情です。昔のようないわゆる鉄拳制裁は、文部科学省や各教育委員会から厳しく処分されることもあって、非行に走る生徒を完全に抑えるのは現実的には難しいです。

このような状況下において、被害を受けている児童生徒が自殺するような深刻ないじめ案件においては、もはや学校内部で処理することは到底不可能です。第三者委員会や弁護士、捜査機関といった外部の介入が必要不可欠です」

深刻な事案においては、刑事事件化することも適切な対応といえるのか。

「刑事事件を通じて加害者生徒の更生を図ることも可能である以上、積極的に学校外部へ公表して解決を模索しようとする姿勢が、今の社会には受け入れられるのだと考えています」

●いじめ被害にあったら? LINEも有効

被害者側はいじめを受けたら、どのような対応が望ましいのか。

「いじめを受けた度に証拠確保するのが極めて重要となります。例えば、暴行を受けた場合には、外傷を写真撮影したり医師の診断を受けるべきです。暴言などの被害についても、毎日、日記に取ることで一定の信用力が生じることになります。

特に、LINEで記録する形で送信すれば、事後的な改ざんを疑われる可能性もなくなり、より有効であると考えています。また、捜査機関へ早期に相談することで、警察から学校や加害者児童に対し働きかけてくれるケースもあります。

その上で、より重要なのは刑事事件化を目指すことではなく、自殺などの取り返しがつかない被害が生じる前に、いじめの改善措置を講じることです」

具体的には、どのように動けばよいのか。

「いじめの行為態様が深刻化する前に担任や保護者へ相談すべきですし、仮に対応してもらえない場合は、弁護士会などで行っている電話相談に相談されることをお勧めします。

いじめは、決してなくなることはありませんし、刑事事件化することで加害児童の人生設計も大きく変わってしまいます。

だからこそ、安易ないじめを行わないよう教育の場で定期的に伝えていくべきです。また刑事事件化したニュースが報道されることで、他のケースにおいて一定の抑止力が機能することを期待しています」

【取材協力弁護士】
高島 惇(たかしま・あつし)弁護士
退学処分、学校事故、いじめ、体罰など、学校内におけるトラブルを精力的に取り扱っており、「週刊ダイヤモンド」にて特集された「プロ推奨の辣腕弁護士たち」欄にて学校紛争問題が得意な弁護士として紹介されている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp