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最高裁判所は12月23日、改定版「養育費算定表」を公表した。養育費は通常、算定表に基づいて金額が決まることが多いが、算定表の見直しは2003年以来、16年ぶりとなる。通信費用など生活費用が増えていることや、社会情勢が変化していることが考慮された。

離婚問題に取り組んできた中里妃沙子弁護士は「生活の実態に合わせたことで、予想よりも金額が増えましたし、ほぼ全てのケースで増額されることになりました」と評価する。

●もっとも高額なパターンで「月44-46万円」

具体的な例を見ていきたい。

算定表が想定するパターンで、もっとも高額となるのが「夫(年収2000万円)と妻(専業主婦)、子ども3人(全員14歳以下)」の5人家族だ。このケースでは「44-46万円が下限となります。古い算定表では40-42万円でしたから、4万円の増額となりました」(中里弁護士)。

さすがに、ここまでの高年収層の数は多くはないだろう。もう少し現実的な世帯は新基準でどうなるのか。

・「夫(年収600万円)と妻(専業主婦)、子ども2人(全員14歳以下)」:10−12万円

・「夫(年収400万円)と妻(年収400万円)、子ども2人(全員14歳以下)」:2−4万円

・「夫(年収700万円)と妻(年収350万円)、子ども2人(全員15歳以上)」:8-10万円

新しい算定表は、すでに最高裁のサイトで紹介されており、参考にして欲しい。(URL:http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html)

●「できるだけ早くに手をうってほしい」

新しい算定表が使われるのは、今後新たに養育費の金額を決める場合のみとなる。

いま現在、養育費が支払われている世帯には「今回の算定表は、事情の変更にあたりませんので、算定表の基準が変わったことを理由にして増額請求することはできません」(中里弁護士)というが、収入の増減や、再婚・新たな子の誕生などの事情で養育費の増額(減額)調停を行う際には、新しい算定表が用いられるそうだ。

また、養育費の支払いを終える時期は「成年(成人年齢)に達する日まで」とされていることが多い。

民法が改正され、2022年4月から成人年齢は18歳に引き下げられるが、引き下げ前に「成年に達する日まで」とされたものについては、「今回の算定表では、引き下げに関係なく『基本的に20歳と解するのが相当』としました」(中里弁護士)。

なお、算定表で増額となったことにより「未払いが増えてしまうのではないか」と危惧する声もある。

この点について中里弁護士は「会社員であれば給料の差し押さえができ、確実にもらえるようになっています。給料から天引きされて、相手を介さずに会社から直接振り込まれるため、精神的な負担もありません。養育費には時効があるので、『どうせ支払われない』とあきらめず、できるだけ早くに手をうって欲しい」と話す。

また、離婚するにあたっては「裁判所での調停や公正証書で養育費の額をしっかりと決めることが重要。算定表は、あくまで最低額の基準であって、生活環境に合わせた増額も可能です」とも強調した。

【取材協力弁護士】
中里 妃沙子(なかざと・ひさこ)弁護士
東北大学法学部、南カリフォルニア大学ロースクールLLMコース終了。平成7年4月弁護士登録・東京弁護士会・研修センター運営委員会 委員
事務所名:丸の内ソレイユ法律事務所
事務所URL:http://www.maru-soleil.jp