国立がん研究センターと大阪大学などの研究チームは15日、1日の勤務時間が11時間を超える男性は標準的な勤務時間の男性に比べて急性心筋梗塞を発症するリスクが1.6倍になるとする調査結果を発表した。

「労働時間と急性心筋梗塞・脳卒中発症リスクとの関連」
(国立がん研究センター)
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8243.html

労働時間は健康に影響を与える重要な要因のひとつ。一般的に労働時間の長い人は標準的な労働時間の人に比べて健康状態が悪いとする報告はこれまでもあったが、この調査は1993年に茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の5県に住む40〜59歳の男性約1万5千人を対象に行われたアンケート結果をもとに、労働時間と急性心筋梗塞・脳卒中発症との関連を以後約20年間追跡したもの。労働時間と発症リスクの関係をこの規模と期間で追った調査は国内初だ。

今回の調査では1日の労働時間を、7時間未満、7時間以上9時間未満(基準)、9時間以上11時間未満、11時間以上の4つのグループに分類。その後の急性心筋梗塞と脳卒中の発症状況をグループ間で比較した。1日の労働時間が11時間以上のグループは、7時間以上9時間未満のグループと比べて急性心筋梗塞の発症リスクが1.63倍高いことが確認され、その中でも調査開始時の年齢が50〜59歳の男性の場合はそのリスクが2.6倍になっていた。他方、今回の分析では脳卒中の発症リスクとの関連は確認されなかった。

この研究チームは、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸のため、さまざまな生活習慣と、がん、脳卒中、心筋梗塞などの病気との関係を調査・研究している。今回の分析は地方の5地域に居住する男性を対象とした限定的な調査に基づくため、都市部を含む日本全体の男性や労働者に対して一般化することには慎重であるべきとしているが、大規模で長期間の調査結果に基づく労働時間と急性心筋梗塞発症リスクの関連を初めて示した研究としての意義は大きい。今後、労働時間と他の疾病の発症リスクに関しても同様の調査・研究が行われることに期待したい。

医師・専門家が監修「Aging Style」