“日立鉄道”成長へ猶予は3年、巨大ライバルにどう挑む
今後、統合会社はサプライチェーンのあらゆる場面で規模の力を打ち出してくるはず。欧州勢の営業利益率は1ケタ台後半なのに対し、日立は2016年度の実績で4・2%にとどまる。イタリアのアンサルドSTSの買収により、収益性の高い信号事業や一括ソリューション事業を提供できるようになったが、日立との融合はこれからだ。
東原敏昭社長は「20年代前半までに鉄道事業で売上高1兆円を目指す」と宣言するが、資本市場や社外取締役などの見方は甘くない。日立全社で中期的に目標とする営業利益率が10%であり、「鉄道が足を引っ張るのであれば、日立グループから離れて成長していくことも選択肢」(証券アナリスト)という意見もある。
もともと日立は「規模を追う事業は得意ではない」(中西宏明会長)。半導体やハードディスク駆動装置(HDD)なども結局は手放した。
シーメンスとアルストムの統合で“ビッグスリー”の一角、カナダ・ボンバルディアも早晩再編に動くだろう。国策により世界最大の鉄道車両会社になった中国中車は、これまでの廉価品から中級品を作るまで実力を付け、世界市場へ打って出てくるのは時間の問題だ。
ただ、日立がボンバルディアや中国勢などと組み、再編を仕掛けることは、財務上も企業文化の観点からもありえないだろう。
それでも日立にとって鉄道事業は、成長戦略の柱の一つであり、グローバルオペレーションの象徴に変わりはない。その命運を握る人物が、鉄道部門の最高経営責任者(CEO)を務めるアリステア・ドーマー氏。
脇を固めるのは、IEPの顧客である英鉄道会社から引き抜いたカレン・ボズウェル日立レールヨーロッパ社長、アンサルドSTSのアンディー・バー社長などの英国人たち。それをナンバーツーの正井健太郎最高執行責任者(COO)が日本からサポートする形だ。このチームは現状、うまく機能している。
アルストム出身のドーマー氏は、ライバルの実力と出方をどう分析し、3年の猶予でどんな手を打ってくるか。オペレーション面では「英伊日」の3カ国の一体化を一層進めるはず。
事業面では、世界各国で現地のサービス会社などを地道に買収していくことは普通に予想される。英国海軍に属した経歴から、社内にもなかなか情報を漏らさないのがドーマー流。果たして隠し球はあるのだろうか―。
