4月23日(火)のヤクルト対広島戦は死球合戦だった。
その頂点が、8回2死一、二塁で代打に起用された前田智徳が、新人の江村将也にカウント2−2からぶつけられた四球だ。
前田は、怒り心頭の形相でマウンドに詰め寄り、両軍選手・コーチ陣が入り乱れての揉み合いになった。
実はこの打席の2球目でも、かなり際どいインコース攻めの投球がグリップエンドに当たっている(結果はファウル)。
これも伏線にあった上での、前田の怒りだったのだろう。

「左尺骨骨折」と診断され長期離脱となる前田は、気の毒という外ない。
1日も早い回復を祈らずにはいられない。

しかし、しかし、である。
それを踏まえても、私は前田のリアクションは残念だった。
私見を述べさせていただくと、不可抗力の死球に対し怒りを露わにするのは前田のような大選手には非常に不釣り合いな行為である。
いわんや、相手はルーキー。
「格下」という表現では言い表せないくらい両者の間には差がある。
そんなプロ野球界の「お子様」が、特に意図もなく単に未熟なだけの結果としてぶつけたのである。

死球は痛いと思うし、いわんや骨折とは不運の極みだが、超一流の「オトナ」がプロの門を叩いたばかりのひよっ子に、怒りを前面に出すのはプロフェッショナルな行為とは言い難かった。
メジャーでは、死球を痛がったり、怒りを露わにするのは、(表現は悪いが)チンピラの行為だ。

江村の死球は、技術が不十分ということが原因だが、違う死球もあった。
2回裏2死走者なしの場面で、広島先発のバリントンは、ヤクルトの宮本に死球を見舞っているが、これはおそらく「意図的」な一撃だろう。

2回表に、先頭の廣瀬純がヤクルトの先発村中恭平に死球を受けていたからだ。
バリントンが、「お返し」をしたのはほぼ確実だ。
これはメジャーでは(良し悪しは別にして)常識的な行為だ。
ベテランの廣瀬の仇を、同じくベテランの宮本慎也でとる。
恐らく、仮に栗原健太が先にぶつけられていたとすれば、報復されるのはバレンティンか畠山和洋あたりであったろう。