トライアルで7ゴールを決めたのは、間違いなく最高の“名刺”となっただろう。バルセロナのカンテラという貴重な場所を懸けてのトライアルなら、なおさらのことだ。リオネル・メッシを輩出したバルサのカンテラは、おそらく世界で最も重要な下部組織である。

だからこそ、アイルランドのザック・ジルセナンが「アイルランドのメッシ」とみなされるのも、驚きではないだろう。関係者は9歳のザック君が輝かしいキャリアを築くと予想しており、アイルランドのブックメーカーに至っては、彼が21歳になるまでにアイルランド史上最年少代表選手となり、さらにキャプテンになるかどうかも注目している。

セント・ケヴィン・ボーイズのトニー・オニール監督は、アイルランド『サン』で、「ザックは怪物級の選手だよ。素晴らしい才能とテクニックを併せ持ち、すでに見事なパーソナリティーも持っている。だが、常にやれと言われることに耳も貸すんだ」と称賛している。

実際、トッテナムもザック君の獲得を望んでいたのだ。ザック君の家族は、父親の仕事の関係でオーストラリアに住んでいたが、トッテナムはオーストラリアまで彼の視察に来た。だがそれから、バルセロナからトライアルの誘いがあり、その電話が彼の人生を変えたのである。父親のステファンさんは『インデペンデント』で、次のように話した。

「私たちはアイルランドに戻っていたんだ。ザックがスパーズでプレーすると思っていたからね。だが、その間にバルセロナから連絡があったんだよ。元選手の一人がオーストラリアでザックのプレーを見て、クラブに彼のことを知らせたんだ。それで5月のトライアルを提案されたんだよ」

「ファンタスティックな経験だった。世界中から400人以上の少年が来ていたよ。6月には残ったのが90人となり、そしてベストの16人による試合があって、私の息子も出たんだ。そこで彼は文字通り爆発した。7ゴールを決めたんだ。それで2週間前、クラブからポストをオファーされたんだよ」

サッカーに夢中の少年なら、誰しもが夢に見るようなことだ。ジルセナン一家はこの夢をかなえることに決めた。ザック君のそばにいるために、全員でスペインへ移住することにしたのだ。ステファンさんは『サン』で、次のように話した。

「あちらにいく我々はクレイジーだと人は言う。ザックはまだまだ若いからね。でも、バルセロナでは世界最高のサッカーを教えているんだ。それに、我々は息子がロボットになることを望んでいない。ただ彼が楽しむことを望んでいるんだ」