【今回の相違点】
さて、ギリシャの場合、既に共通通貨ユーロを使用していましたから自国の通貨を防衛する必要はもとよりありませんでした。

国際資本市場におけるギリシャを巡る攻防は従ってトレードできるものに限られていました。具体的にはギリシャ国債やそのデフォルト保険ということになります。

ギリシャ問題が深刻化する過程で、確かにギリシャは国債の発行がままならなくなり、高い金利を支払う羽目に陥りました。

しかしその金利にしても、自国通貨を防衛するときに必要となるような、べらぼうな金利高というほどのことではありません。

つまりギリシャの不景気は主に欧州全体の景気が悪いということに加えて財政支出を絞り込むなどの、公的部門の縮小によるところが大きいわけです。

【マイルドな調整】
アテネでのデモの様子などを見るとずいぶん荒れているので、その感覚からすると容易に受け入れにくい概念かも知れませんが、或る意味、今回のギリシャ危機に対するギリシャ政府の処方はこのように比較的マイルドなものでした

だから確かに欧州救済基金から支援を仰ぎ、独自で借りるよりかなり低利で資金の融通を受けることになっても、それでギリシャ経済が鋭角的に切り返すということは望めないと思われます。

そのもうひとつの理由は為替レートです。

そもそもギリシャは共通通貨ユーロを使い続けるわけですから、デフォルトの際に起こる、ドラマチックな為替水準の訂正というものは存在しません。だから輸出競争力の問題は依然として何ら解決していないのです。

本当の意味でギリシャが輸出競争力を取り戻そうと思えば、それは国内の賃金のかなり大幅な賃下げがなければ駄目でしょう。この過程をinternal devaluationといいます。しかしそのようなシナリオは現実には起こりにくいと思います。続きを読む

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