2017年3月11日に創設される「準中型免許」。以降に取得した普通免許では、運転できる自動車の範囲が狭まります。しかしメリットが生まれる側面も。背景には、ある社会問題が横たわっていました。

10年ぶりの新区分創設で普通免許にも変化

 2017年3月12日(日)に運転免許制度が改正されます。普通自動車、中型自動車、大型自動車に加えて「準中型自動車」が新設され、これに対応する新しい免許の区分「準中型免許」が誕生します。

 免許区分の新設は、2007(平成19)年6月2日の中型免許以来、約10年ぶり。なおこのとき、2007年6月1日までに取得した普通免許は、「中型車は中型車(8t)に限る」という「限定付き中型免許」へと自動的に移行しています。

たとえば、いわゆる2tトラックの「キャンター」は、2017年3月12日以降に取得した普通免許では運転できなくなる(写真出典:三菱ふそうトラック・バス)。

 今回新設される「準中型免許」で運転できるのは、車両総重量3.5t以上7.5t未満、最大積載量2t以上4.5t未満、定員10人以下の自動車です。この新設により、各免許で運転できる自動車は以下のとおりになります。

・普通:車両総重量3.5t未満、最大積載量2t未満、定員10人以下
・準中型:車両総重量3.5t以上7.5t未満、最大積載量2t以上4.5t未満、定員10人以下
・中型:車両総重量7.5t以上11t未満、最大積載量4.5t以上6.5t未満、定員29以下
・大型:車両総重量11t以上、最大積載量6.5t以上、定員30人以上

 2007年6月2日以降に取得した普通免許は、上記の準中型免許で運転できる範囲もカバーしていました。つまり、現在普通免許を教習中の人は、3月11日(土)までに免許試験に合格しなければ、運転できる範囲が狭まります。たとえば2tトラックなどは、3月12日(日)以降に取得した普通免許では運転できなくなります。

「準中型」のメリットと、その背景にあるもの

 中型免許を取得するには、2017年3月12日(日)以降も引き続き、普通免許を取得してから2年以上経っていないと受検できず、20歳以上という年齢制限もあります。一方、新設される準中型免許は、普通免許がなくても受検でき、さらに普通免許と同じく18歳以上で取得可能。つまり準中型免許の新設によって、これまで中型自動車とされていた4tトラックなどが18歳でも運転できるようになります。

 警視庁は準中型免許の新設について、「貨物自動車による交通死亡事故の削減と、若年者の雇用促進のため」としています。全日本トラック協会なども「準中型免許によって、トラック運送業界への若い人の就職間口が大きく広がり、高校新卒者をはじめとして若年ドライバーの積極採用に大きな期待がかかっています」(『準中型免許Q&A』2016年7月発行)と、制度改正に期待を寄せています。

 東京都世田谷区の自動車教習所「フジドライビングスクール」の田中さんは、「普通免許を受験する人の多くはトラックなどを運転する目的ではないので、運転可能な自動車の範囲が狭まることによる影響は限定的」としつつ、以下のように話します。

「普通免許でトラックを運転できることは、貨物事業者にとってドライバー確保を有利にするものでした。しかし、目線が高く重心が後ろに偏るトラックの運転感覚は、乗用車とは全く異なるので事故も多く、専門的な教習を受けてから乗るべきです。今回の制度改正は、危険のカバーと貨物ドライバーの確保、双方に配慮したものといえます」(フジドライビングスクール 田中さん)

 なお、2007年6月2日から2017年3月11日までに取得した普通免許は、3月12日に「準中型車は中型車(5t)に限る」という限定付き準中型免許へと自動的に移行します。

【表】免許制度はこう変わる

準中型免許の創設によって普通免許で運転できる自動車の範囲が狭まるが、これまでの中型自動車の一部を18歳からでも運転できるようになる(警視庁の資料をもとに乗りものニュース編集部で作成)。