ソフトバンク・松坂大輔【写真:編集部】

ソフトバンクへ移籍後初実戦で松坂は何を感じたのか

 9年ぶりの日本のマウンドだった。ソフトバンクの松坂大輔投手(34)が4日、甲子園で行われた阪神とのオープン戦で、移籍後初の実戦に登板した。結果から言えば、3回を投げてね球数は57球。安打は3本許し、四球も2つ与えたが、無失点で最初の実戦マウンドを終えた。

「久しぶりの実戦でしたし、緊張というか、フワフワしていて、うまく力が入らない感じだった」

 こう振り返った立ち上がり。先頭の鳥谷に投じた復帰後最初のボールは139キロの真っすぐ。次の137キロの真っすぐで中飛に打ち取り、最初のアウトを取った。上本は142キロの高めの真っすぐで空振り三振、西岡を四球で歩かせ、ゴメスはスライダーで遊ゴロ。2回はいきなりマートン、ルーキーの江越に連打を浴びるも相手の盗塁失敗などもあり、2つのアウトを取ると最後は梅野を外角低め、139キロの真っすぐで見逃し三振に取った。

「フワフワしていた」という1、2回。確かに松坂はおかしかった。フォームにはまるで躍動感がなかった。体の沈み込みはなく、手投げになっていた。真っすぐはほとんどがシュート回転。逆球もあれば、2回にはすっぽ抜けの大きく外れるボール球も2度もあった。真っすぐは130キロ台後半がほとんど。おそらく、この日の松坂を見た人の多くが「これで大丈夫なのか?」と首を傾げたはずだ。

毎年最初の実戦マウンドは「フワフワ」、「1、2回はまったく参考にならない」

「1、2回は自分でどう力が入っているか、分からないくらいだった。最初の試合はそういう感じ。そういう感覚になるのは予想通り。1、2回は自分の中ではまったく参考にならない」

 最初の2イニングに関して、松坂自身はこう説明した。日米通算164勝の実績を誇る経験豊富な右腕だが、この「フワフワする」感覚は毎年、その年の最初の実戦マウンドで味わうものなのだという。

「フワフワしたのがなくなって、ようやく落ち着けたんじゃないでしょうか。3イニング目にようやく形が出始めた。少し力のあるボールが行きだした」

 “今の松坂大輔”というところを評価するならば、その対象は3回の投球だけになるだろう。1死から鳥谷に中前安打。ヒットエンドランで右前に運ばれた上本に盗塁も決められ、2死二、三塁のピンチを招いた。ここで、ギアが上がった。

「簡単には打たれたくないですし、走者が出てから、抑えることを意識した」

 2ボールから投じたゴメスへの3球目は145キロをマーク。四球にはなったが、6球目はこの日最速の146キロを計時した。マートンにも145キロの真っすぐが2球あった。

「重心が高くなっていたのが、3回になって下に下りてきた。力が入るというか、強く腕を振ることが出来たのが、3回だった」

「最後のイニングでそこそこのボールが行きだしたのは、いいきっかけになる」

 フワフワ感から抜け出し、ようやくピッチングらしくなった。シュート回転していたボールはあったが、球の勢いは1、2回より上がり、フォームも力強くなった。昨季、アメリカでも最速は150キロ超をマークしており、140キロ台後半の真っすぐを投げられるということは分かった。

「全体的にいえば、良くなかったです」。初の実戦マウンドをそう総括した松坂。まだ球のバラツキがあり、投球フォームも安定していない。宮崎キャンプ終盤、右手親指と薬指にマメが出来たため、投球練習が出来なかったことも影響しているだろう。

 初マウンドを終えると、様々なメディアで、様々な評価の声が飛び交っていた。あえて言えば、調整登板の場を1試合踏んだだけである。この1試合だけを参考には出来ない。久々に実戦で投げた投手を、その1試合だけでは評価しきれないだろう。

「まだ3月頭ですし、まったく気にしていないですけどね。最後のイニングに限ってですけど、そこそこのボールが行きだしたのは、いいきっかけになるかなと。新たに出てきた問題はない。実戦で、打者に対して投げていくことで、自然と状態は上がっていくと思います」

 こう語った松坂の次回登板は10日の巨人戦(長崎)となる模様。開幕までにはこれを含め、あと3試合の登板機会がある。果たして平成の怪物は輝きを取り戻せるのか? この結論を出すにはまだ、しばらくの時間の猶予が必要だろう。