米国の生化学者チーム、ゆでたまごを液状に戻す技術を開発。戻してどうする?

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 米カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)が、ゆでたまごを「Unboil」して生のような液状に戻す技術を開発しました。  ケミカルバイオロジー誌 ChemBioChem で発表された論文によれば、この技術を応用すれば将来的には癌治療用抗体の生産やタンパク質の性質研究のコストを大幅に削減できるとしています。ゆでたまごは、生たまごに熱を加えることでタンパク質の変性が起こり、液体から固体に変化したものです。このとき、タンパク質を構成するアミノ酸は水素結合が切断されて形が変わり、凝集が起こっています。UCI はこのゆでたまごに対し、尿素を使って生たまごのような液状に復元する方法を開発し、特許申請を行ないました。その方法について大雑把に説明すると、まずタンパク質の変性剤として作用する尿素をゆでたまごに加え、凝固状態を緩和します。さらに渦流形成機にかけることでアミノ酸の凝集が解かれ、変性によって形が変わっていたタンパク質の構造がふたたび生たまごのような状態に戻ります。従来からタンパク質の変性を復元する方法がなかったわけではありません。ただ処理に約4日ほどの時間を要するという問題がありました。UCI は開発したこの方法であれば、従来に比べると約1000倍の速さでタンパク質を復元できるとしています。UCI は、この技術によって、タンパク質の性質を研究する現場で実験用のタンパク質基材のリサイクルが可能になることをあげています。また医薬品開発の現場に応用すれば、癌の抗体を作るために使われている高価なハムスターの卵巣細胞をもっと安価なものへと置き換え、開発コストや治療費の低減へとつながる可能性も考えられます。ちなみにタンパク質の「蛋白」とはもともとたまごの白身部分、「卵白」を指す言葉。とすれば「タンパク質を復元する」という言葉にも、「生たまごに戻す」という意味があると無理矢理言えるかもしれません。