ウィリー・ガーソン(モジー役)

写真拡大

ウィリー・ガーソン:みなさん、アイルランドからいらしたんですか?」

――(笑)。今回のモジーという役についてなのですが、制作者のジェフ・イースティンさんと話し合いをされてキャラクターを作っていかれたのでしょうか? それと最初割と控えめだったのが、シーズンを追うごとにキャラクターとして活躍する部分が増えているのですが、その中にはご自分のアイディアもかなり入っているのでしょうか?

ウィリー・ガーソン:(笑)。そうだね。撮影が始まる前に、ジェフ・イースティンとはしっかり話し合いをしたんだ。それでキャラクターについては、番組が進むにつれて、脚本家達が、それを演じている俳優達のことをより理解していったから、脚本家達が楽になって、台詞がスムーズに出てくるようになったんだと思うんだ。俳優達のことがより分かったから、彼らがどんなことを喜んでやるのかもより理解したし、どんなことを書きたいのかも分かったんだと思うんだ。とりわけ僕とジェフのコンビはすごく相性がいいし、ジェフはモジーにすごく拘りを持っているんだ(笑)。だから僕のキャラクターの出番がどんどん増えているんだと思うよ。

――あなたはニュージャージー出身なので、ニューヨークのこともよくご存知と言ってよいですよね?

ウィリー・ガーソン:そうだね。僕は、ここから20マイル(32.1キロ)の所の出身で、川の反対側という感じなんだよね。僕の育った場所は、ニューヨーク郊外と呼ばれるような所だし、ニューヨークに住んでるも同じようなものだった。それに、僕は大学卒業後に、ニューヨークに引っ越ししたし、『セックス・アンド・ザ・シティ』の撮影はニューヨークだったしね。だから僕は自分をニューヨークに詳しい人間だと思っているんだ。

――それでこの作品はニューヨークならではで、ニューヨークの街も魅力のひとつだと思うのですが、あなた自身ニューヨーカーなわけで、この作品のニューヨークっぽさとかニューヨーカーっぽさというのは、リアルだと思いますか? それとも実際とは違うと思いますか?

ウィリー・ガーソン:こういう風にニューヨークを見ることは可能なんだけれども、でも、カメラマンは、僕らが日常的には見ないような方法でニューヨークを見せていると思うんだよね。つまり、ニューヨークを日々歩き回っているいるような人達ですら、こんな風にニューヨークを見るのを忘れてしまっているんだと思うんだ。例えば、ニューヨークの街を普通に歩いている人達のほとんどや、撮影している人達のほとんどは、こんな風に下を見ながら撮影しているけど、でも僕らは、こんな風に上を見上げるようにしか撮影しないんだよね。常に見上げているんだ。建築とか、ビルとか、空とか、美しいスカイラインとかをね。常にね。僕らは、低いアングルから上に向って撮影する。見下ろして撮影することは絶対にないんだ。それが他の番組とはすごく大きな違いを生み出していると思う。僕個人は、実はそうやってニューヨークを見ているし、僕はこうやって見上げて見るのが好きなんだけど、でも、街を歩く人達を見ているとひたすら見下ろしてる、こんな感じだからね。だから人それぞれとも言えるけど、でも、僕らの撮影方法は、あまり撮影されてないような方法だと思うんだよね。だからこの番組は他の番組とは違って見えると思うんだ。

――シーズン2ではルックスも含めた意外な過去が明らかになって、ニール(・キャフリー)との友情の深さも改めて描かれていたと思うんですけれども、シーズン3ではモジーとニールの友情に何か新しい展開はありますか?

ウィリー・ガーソン:シーズン3ではふたりの関係性が試されることになるんだよね。なぜなら脚本家は、彼らはそもそも犯罪者であるということを絶対に忘れていないからね。だからシーズン3ではお互い敵対するような場面がたくさん出てくるし、シーズン2ではすべてが上手くいっていたけれども、シーズン3では、俺はこれがしたい、でもお前はそれがしたいのか? というようなことが起きるんだよね。僕らは結局犯罪者であり、お金が欲しいし、金塊や、貴金属が欲しいんだ。だからシーズン3でふたりの間の問題はより深刻になっていく。それから、僕らの過去についてさらに暴かれていくんだよね。もっと色々と過去について分かっていくんだ。だからすごく面白くなるはずなんだ。

――80年代からTVドラマで活躍されていますが、この20年間で、TVドラマの制作方法とか、撮影方法において、変化したと思われるのはどういう点ですか?

ウィリー・ガーソン:うん、変化したね。ひとつは、やはりお金だね。かつては、すべてを完璧にするためならいくらでも使うというやり方だったけど、今はどこまで安く作れるのか、という考え方に変わった。だから今はより良い作品を完成させるためには、何もかもが大変になったんだ。なぜなら少しでも経費を削減しようとするからね。つまり今はすべてがどれだけ経費が削減できるのか、ということになってしまった。例えば『ホワイトカラー』の場合も、普通1時間番組というのは、8日間で撮影するものなんだけど、経費削減のために、たった7日間で撮影するんだ。つまり、1日に、(脚本の)10〜12ページ分くらい撮影をするんだよね。僕が80年代にTV番組に出演し始めた当時はーー参ったなあ、もうほとんど30年も経つのか(笑)ーー、8日以下で撮影することは絶対になかった。だから今のほうが大変だよ。ずっと大変になったんだ。だけど、それでも素晴らしい作品にしたかったら、自分にできることはすべてやって素晴らしい番組を作っていくものなんだよね。その努力をしない番組もあるけど(笑)、でも僕らは全力を尽くしているんだ(笑)。

――劇中ニールとモジーの会話のシーンがすごく楽しいのですが、そこにアドリブだったり、あなたやマット・ボマーのアイディアが反映されていたりするのですか?

ウィリー・ガーソン:それはあるね。僕らの脚本家は、役者と一緒に作り上げていくことをやり安く思ってくれているから、僕らに提案もさせてくれるし、台詞を変えたり、僕のキャラクターのモジーの場合は、ジョークを常に増やすんだよね。常にね。アメリカのTV局というのは、とりわけ、いつだって、より面白く、面白くしたがるものだからね。だから僕にもジョークを増やさせてくれるし、それが僕らの脚本家の素晴らしいところで、役者と一緒になって作り上げてくれるんだよね。だから、アイディアさえあれば、誰でもアイディアを出すことができるんだ。小道具の人でもね。僕は彼からアイディアをもらうことがほとんどなんだよね(笑)。誰だってアイディアは出していい。だからシーンを撮影をしている最中に、常に変え続けるし、どんどん良いものにしていって、最終的には完璧なものが完成しているというわけなんだ。

――モジーさんとウィリーさんの性格はほぼ100%同じでしょうか? それともオンとオフでは切り替わって、撮影が終わったらすごく静かになったりするんでしょうか?

ウィリー・ガーソン:それはないなあ。でも、モジーは僕がこれまで演じた役の中で、最も自分に近いキャラクターであることは間違いない。でも、もちろん彼は僕とは違うけどね。モジーはほとんどホームレスみたいな感じだけど、僕はホームレスではないからね(笑)。でも、僕に最も近いキャラクターであることは間違いないんだ。それから、とりわけアメリカにおいては、僕が誰なのかもうみんなに知られたから、俳優としては、自分とかけ離れていない役を演じたいという地点に来ているんだよね。なぜなら、視聴者は僕がどんな人間なのか知っているから、番組を見る時に、実際の僕をどういう風に見ているのかを重ねて見るものなんだよね。だから(『セックス・アンド・ザ・シティ』で)スタンフォードを演じている時は、すごく難しかったんだ。僕自身とはかけ離れていたからね。だけど、今こうして人に知られるようになったから、本当の自分自身により近い役をやらなくてはいけないと思ったんだ。そうしないと、僕は今後一生スタンフォードみたいな役を演じ続けることになる(笑)。だから今回は自分にすごく近い役にしたんだ。でも、オフとオンのスイッチの切り替えはすごく簡単だよ。今君達とこうして話していても、すぐにシーンを撮影できる。大きな切り替えはいらないんだ。

――色んな犯罪ドラマがありますけれども、その中でこの作品が今非常に受けている理由は何だと思いますか? それとニールの魅力はモジーから語るとどんなところですか?

ウィリー・ガーソン:犯罪ドラマというのは、常に人気があって、それは恐らくこれからだってずっとそうだと思うんだ。この番組の違うところは、そのタイトルにもあるように、『ホワイトカラー』の犯罪であるということ。だからこの番組では、誰かがTVを盗んで裏道を走っているというようなシーンはない。傑作とされているアートを盗んで裏道を走っている人は登場するかもしれないけどね(笑)。つまり、これは高級な犯罪を扱ったもので、それは他の番組ではあまり見ない。それに普通は、物語を面白くするために、道を逃げながら拳銃の撃ち合いのシーンというのは必ずあるものだけど、『ホワイトカラー』では、拳銃を撃つということ自体が本当にほとんどない。すべてはより感情的なものがベースになっているし、かしこい番組だと思う。つまりこの番組は、視聴者をバカと見なしてはいないんだよね。今は普通視聴者はバカだから、みんなのためにバカな番組を作ろうという番組のほうがほとんどだ。だけど、この番組は、視聴者はバカではない、と訴えている番組なんだよね。視聴者は賢く、長期に渡って感情的に起きていることについて付いていくことができる、と思っている。単に『爆発はどこだ?』とか『拳銃だ!』とかではなくてね。そしてそれは素晴らしいことだと思うんだ。それでもうひとつの質問は何だっけ?

――モジーから見たニールの魅力的な部分はどこでしょうか?

ウィリー・ガーソン:ニールとモジーは、お互いに、すごく尊敬し合っているんだ。それにお互いがお互いにとってこれまで出会った人の中で、最も賢い人間でもあるしね。とりわけモジーは、社交的な人間ではないし、影にいるタイプだし、性格的に人と上手くやっていけないし、それから彼は見た目もこうだし、だからニールみたいな人は彼にとってはヒーローみたいなものなんだ。彼は優れた犯罪者であり、本当に賢くて、しかも見た目もかっこ良くて、女性にはモテモテで、だから、モジーは、ニールの友情によって自分が価値のある人間のように思えているんだ。それからニールはああいう人柄だから、モジーをそこまで尊敬した初めての人物じゃないかと思うんだ。彼はモジーを、まるで彼もロック・スターであるかのように扱ってくれるし、そのおかげでモジーも最高の気分になれる。自分が重要な人間であるように思えるんだ。それにニールは、モジーがどれだけ賢いのかも理解している。ほとんどの人は、モジーをのけ者にしてきたのにね。だけど、ニールは、『違う、違う、彼こそが最も大事なんだ』という風に見てくれた。だから、モジーは彼のパートナーになりたいと思うんだ。

――モジーは、チェスが上手かったり、TVのドラマのDVDを見たりとか、オタクなところがあるんですけれども、実際そうですか?

ウィリー・ガーソン:そうだね、僕も色んなものに対してオタクな方だと思うよ。モジーの凄いところは、彼はすべてのエキスパートであるところなんだ。そして、すべてのエキスパートになるためには、何もかも読むし、何もかも見るし、何もかも知っている。彼は、そういう思考回路なんだ。コンピューターみたいにね。だから常に活発に頭を働かせているし、チェスが最高に上手くなる。僕個人はチェスはやらないけど、ポーカーをやるんだ。それで、そういうことをやると、頭が常に働いているんだよね。コンピューターみたいにね。モジーの頭はそういう風に働いているんだ。

――TV界全体を見た時に、日本から見るとアメリカのTVってすごくキャンセルが多かったり、面白くてもキャンセルになってしまって、厳しいなあと思うのですが、特に先シーズンの地上波、ネットワークの番組は、本当に厳しかったと思うのですが、あなたから見て個人的な意見でいいので、ケーブル局のこういう番組と地上波のネットワークの番組の状況の違いをどのように見ていますか?

ウィリー・ガーソン:確かに、番組を継続させるのは本当に厳しい状況だと思う。さっきも言ったように、経費削減のためにね。TV番組を制作するには、本当に莫大な制作費がかかるからね。それにも増して、TV局の数もかなり多く、局間での競争もすごく激しい。だから始まってすぐに視聴者を獲得できなかったら、広告を出すスポンサーは付かないし、制作費が払えなくなる。しかも、最近はその決断を即雑にするようになったんだ。それはすごく悲しいことだよ。例えば有名な話しは、『となりのサインフェルド』で、それは史上最高に成功した番組だけど、始まった当初の視聴者はゼロだったんだ。誰も見てなかったんだ。だけど、そのまま番組は継続されたんだ。でも、そういうことは今は絶対に起きない。2、3のエピソードを放送して、視聴者がいなかったらキャンセルだ。だから、常に、すごく目立つことをし続けなくてはいけない。そして一度視聴者を獲得したらその後は大丈夫だけれども。そのまま視聴者を逃さなければね。つまり、怠けたことをしなければね。だけど、番組にとっては非常に厳しい状況であることは間違いない。だからそういうアメリカにおいて、僕らの番組が、USAネットワーク制作だったことをすごくラッキーに思っているんだ。彼らは、どのように番組を立ち上げるのかを慎重に考え、マーケティングから、プロモーションから、スポンサー集めまで入念にして、番組が開始することが誰にでも伝わるようにしっかりと準備をするんだ。番組制作過程ですごく時間をかけるんだよね。大量にお金を無駄にしないためにもね。つまり、開始した時には、絶対に視聴者が獲得できることが分かっている。だから僕らはこの番組が、USAネットワークで制作されてラッキーだと思っているんだよね。

『ホワイトカラー “知的”犯罪ファイル』特集ページ - MOVIE ENTER