《イオンの人が、被災者に水を1本ずつ配っていた》「ガス漏れが起きているから離れて!」緊迫の瞬間 被害は震度で測れない…2016年熊本地震との違い、爆発音は「音で意識が飛ぶかというくらいのすごい音」
令和8年熊本地震において、益城郡嘉島町の大型商業施設「イオンモール熊本」は最大の悲劇の現場のひとつとなった。7月28日16時27分頃、熊本県熊本地方を最大震度7の地震が襲った約1時間後、同施設で爆発が発生。翌29日夕方時点で、3人が死亡し、1人が心肺停止の状態だと発表された。
【写真を見る】外壁はすべて吹き飛んで、中の骨組みや鉄筋が剥き出しになった「イオンモール熊本」。警察の部隊が撮影した内部の映像も
イオンの吉田昭夫社長らが熊本市内で開いた会見では、ガス漏れの可能性に言及しつつ、詳しい原因については調査中としていた。「イオンモール熊本」から徒歩3分ほどの距離にある「共生薬局 嘉島店」の従業員たちは、突然の激しい爆発音に仰天したという。
薬局長の伊達淳さん(39)が語る。
「いつも通り調剤をしていたら、突然グラグラと強い揺れが始まり、いろいろな物が降ってきた。すぐにスタッフたちに机の下に潜るよう指示して、私もその場にかがみ込んだ。全然身動きが取れず、洗濯機の中にいるような感覚でした。
揺れが収まった後、散乱した物を片付けていたら、今度は大きな爆発です。ドンというよりバンという感じで、トラックとバスが正面衝突でもしたのかという、聞いたことないような乾いた音。地鳴りかと思っていたら、外で若い男の人が『なんか爆発しているぞ!』と叫んでいた。初めて音で意識が飛ぶかというくらいの、すごい音でした」
スタッフの岩田朋子さん(51)は、震度7の揺れが2度発生した2016年の熊本地震も経験している。現在暮らしている宇土市は震度6強が観測され、「家の中がグチャグチャです」と明かす。
「タンスとか食器棚とか、10年前の熊本地震で倒れなかったものまで全部倒れ、立っているものはないくらい。壁も外れて倒れていました。
断水で水も出ず、今朝はネットカフェでシャワーを浴びて来ました。前回の地震の教訓で、トイレはタンクに水を溜めていたので、それで流しました。今日は玉名市の実家まで帰ろうか迷っています」
薬剤師として働く60代女性は、「前回の地震と同じ震度7くらいかと思った。すごいスピードでワーッと揺れた」と振り返る。
「全然立っていられず、カウンターの下に潜り、机の足に捕まってどうにか揺れが収まるのを待ちました。揺れが収まった後、散乱した薬を片付け、終わって帰る直前くらいに爆発音がしました。ボーンとかバーンとか、ものすごい音で。
夫が車で迎えに来るはずだったのですが、『車が大破したから迎えにいけない』と電話がかかってきました。『窓を突き破って、車の中はコンクリートやらガラスやらの破片が散らばっていて、どぎゃんもならんけん』って」
この女性の夫は地震発生後、イオンの駐車場で妻の仕事が終わるのを待っていたところ、爆発に遭遇した。夫からは「歩いてでも(こっちに)来てくれ」と頼まれたが、しかし外は炎天下だ。女性は同僚に頼み、駐車場まで車で送ってもらったという。
イオンに到着した女性は、現地の惨状を目の当たりにした。
「駐車場は砂利とかガレキで凸凹していて、ガラスの破片やコンクリートの瓦礫が散らばっていた。車と車の間とかに人が横たわってるんですよ。爆音で具合が悪くなったのか、3人くらい横になったり、しゃがみ込んだりしていた。あとは若い男女らが呆然とした様子で地面に体育座りしていましたね。
灰色のヘルメットを被ったイオンの人が、被災した人たちに水を1本ずつ配っていました。警察はおったけど、消防も救急車もまだ来てなくて。そのうち警察の人がすごい顔して、『ガス漏れが起きているから、ここから離れてください!』と指示していました」
被災直後の混乱が続くなか、「共生薬局 嘉島店」では、片付けや流通関係の把握に追われている。薬局長の伊達さんは、「薬局は、病院などの医療機関とも連携しているため、業務を止めるわけにはいかないという意識がある」と真摯な思いを語った。
苦境にあっても、一人ひとりが自分にできることを続けている。そうした支え合いが、被災地に希望をつないでいるようだ。
