「暗闇スマホ」で緑内障に?“女性”が警戒すべき「4つの特徴」と“あの初期症状”

急性緑内障(正式名称:急性閉塞隅角緑内障)は、眼内を循環する房水の排出口が突然塞がれ、眼圧が急激に上昇する疾患です。強い眼痛や頭痛、吐き気、視力の急な低下などが現れ、脳神経系の病気と間違われることもあります。視神経は一度障害されると回復が難しいため、早期発見と迅速な対応がとても大切です。

監修医師:
柳 靖雄(医師)

東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

暗闇でのスマホ操作と急性緑内障リスク|リスクが高い方の特徴と早期発見の重要性

急性緑内障は、誰にでも起こる可能性がある病気ですが、その発症リスクはすべての人で同じではありません。眼の構造や年齢、性別、遺伝的な要因などによって発症しやすさには差があることが知られています。特に、もともと房水の出口である隅角が狭い方は、暗い場所でのスマートフォン操作や特定の薬剤の使用などをきっかけに急性緑内障発作を起こす可能性があります。

一方で、自分が高リスクであることを自覚している方は決して多くありません。実際には眼科検診を受けるまで隅角の狭さに気づかず、発作を起こして初めて病気が判明するケースもあります。そのため、リスク要因を正しく理解し、早い段階から眼の状態を把握しておくことが重要です。このセクションでは、急性緑内障を発症しやすい方の特徴と、視機能を守るために欠かせない早期発見のポイントについて詳しく解説します。

急性緑内障リスクが高い方の特徴

急性緑内障を起こしやすい方には、いくつかの共通した特徴があります。そのなかでも特に重要なのが、眼の構造的な特徴です。

まず、遠視の方は急性緑内障のリスクが比較的高いとされています。遠視の方の眼球は、近視の方と比べて前後の長さ(眼軸長)が短い傾向があります。そのため眼の内部空間がやや狭くなり、房水の排出口である隅角も狭くなりやすいと考えられています。

隅角が狭い状態では普段問題なく過ごせていても、暗い場所で瞳孔が開いたり、薬剤の影響で散瞳したりすると、房水の流れが急に妨げられることがあります。その結果、眼圧が急激に上昇し、急性緑内障発作につながる可能性があります。

また、年齢も重要なリスク因子です。加齢に伴い、水晶体は少しずつ厚みを増していきます。若い頃は十分な広さがあった隅角も、水晶体が前方へ押し出されることで徐々に狭くなっていきます。そのため、急性閉塞隅角緑内障は40代以降で発症リスクが高まり、特に50代・60代以降では注意が必要とされています。

性別にも特徴があり、女性は男性よりも急性緑内障を発症しやすいといわれています。これは女性のほうが眼球の構造上、隅角が狭くなりやすい傾向があるためと考えられています。実際に急性閉塞隅角緑内障の患者さんでは女性の割合が高いことが報告されています。

さらに、家族に緑内障の方がいる場合も注意が必要です。緑内障そのものが直接遺伝するわけではありませんが、隅角の広さや眼球の形状などの体質的特徴が受け継がれる可能性があります。そのため、親や兄弟姉妹に緑内障の既往がある方は、自身も定期的な眼科検査を受けておくことが望ましいでしょう。

加えて、過去の眼科検診で「隅角が狭い」「閉塞隅角の可能性がある」と指摘された経験がある方は特に注意が必要です。その時点では症状がなくても、将来的に急性緑内障発作を起こすリスクを抱えている可能性があります。

このほかにも、白内障が進行している方や、特定の薬剤(散瞳作用を持つ薬など)を使用している方では発症リスクが高まることがあります。自分がどの程度リスクを持っているかを知るためにも、一度眼科で詳しい検査を受けることが大切です。

無症状で進行することもある緑内障の早期発見

急性緑内障は突然発症する一方、慢性緑内障は長期間自覚症状がないことが多い疾患です。どちらも定期検診が重要ですが、病態は異なります。急性緑内障は突然症状が現れる病気として知られていますが、緑内障全体でみると、自覚症状がほとんどないまま進行するケースのほうが多いとされています。

一般的な緑内障では、視神経が少しずつ障害されることで視野が徐々に狭くなっていきます。しかし、人間の脳には欠けた視野を補完する働きがあるため、初期の段階では異常に気づきにくいのが特徴です。

例えば、片目の視野が一部欠けていても、もう片方の目が補うことで日常生活に大きな支障を感じない場合があります。そのため、「見えているから大丈夫」と思っていた方が、検査を受けた際にすでに中等度以上の緑内障と診断されることも珍しくありません。

また、緑内障による視野障害は周辺部から始まることが多いため、読書やスマートフォン操作など中心視野を使う作業には影響が出にくい傾向があります。その結果、病気がかなり進行するまで自覚症状が現れないケースもあります。

こうした背景から、緑内障では「症状が出てから受診する」のではなく、「症状がなくても定期的に検査を受ける」ことが非常に重要とされています。

眼科では、眼圧測定だけでなく、視野検査や眼底検査、光干渉断層計(OCT)による視神経評価などを行うことで、早期の異常を発見できる可能性があります。さらに、急性緑内障のリスク評価には隅角検査が有用であり、自分の隅角が狭いかどうかを確認することができます。

特に40歳を過ぎた方や、遠視の方、女性、家族歴がある方は、自覚症状がなくても定期的な眼科検診を受けることが望ましいでしょう。

また、暗闇でスマートフォンを使用する習慣がある方は、自分が急性緑内障のリスクを持っているかどうかを知っておくことが重要です。隅角の状態を把握しておけば、日常生活で注意すべきポイントも明確になります。

緑内障は早期に発見し、適切な管理を行うことで進行を抑えられる可能性が高い疾患です。一方で、失われた視野を回復させることは容易ではありません。だからこそ、「症状がないから大丈夫」と考えるのではなく、定期検診を通じて自分の眼の状態を把握することが、将来の視力と視野を守るための大切な第一歩となります。

まとめ

暗闇でスマートフォンを長時間操作する習慣は、目への負担(眼精疲労・調節緊張・ドライアイ)を増やす可能性があります。すべての方が急性緑内障を起こすわけではありませんが、もともと隅角が狭い方、遠視の方、40代以降の方、女性で家族に緑内障の方がいる方などでは、暗所での散瞳や就寝前のうつむき姿勢が、急性緑内障発作の誘因になり得る点に注意が必要です。

激しい眼痛・頭痛・虹視・急な視力低下が出た場合は、時間を問わず眼科(可能なら救急対応)を受診してください。症状がないうちからの定期検診で、自分の隅角の状態を把握しておくことが、将来の視力を守るうえで重要です。部屋を適度に明るくする、就寝前のスマホ使用を控える、画面の明るさを調整するなど、今日からできる環境改善から始めていただければと思います。

本記事で述べている「暗闇・うつむき姿勢と眼圧・散瞳」は、緑内障リスクのある方にとって注意すべき要素です。一方で、消灯後のスマホ使用と急性緑内障発症を直接結びつけた大規模研究はまだ限られており、スマホを使うすべての方が失明するわけではありません。不安がある方は、症状の有無にかかわらず眼科で隅角検査を受けることをおすすめします。

参考文献

日本緑内障学会「緑内障診療ガイドライン(第5版)」

東京大学医学部附属病院「眼科」

日本眼科学会「目の病気(緑内障)」