「麻生さんのスーツ姿は綺麗すぎるんですよ…」「普通あそこまでのラインは出ない」…人気スタイリストが解説する「石破ファッションの問題点」と「世界の常識」
「だらし内閣」「みっとも内閣」――。石破新内閣の発足後、ネット上に飛び交ったのは首相の身だしなみを揶揄する言葉だった。
石破茂首相は11日、国会で第103代首相に指名されたことを受けて第2次新内閣を発足させた。モーニング姿の閣僚たちが恒例である官邸での記念撮影を行ったが、その集合写真が再び話題を呼んでいる。というのも10月1日、第1次内閣が発足した際の首相の着こなしがあまりに非常識なものだったからだ。
前編記事『非常識すぎる着こなしに猛批判…「外交問題に発展するおそれも」石破茂首相のファッションを人気スタイリストが徹底検証』に続き、安倍晋三元首相のスタイリングを務めたイメージスタイリストの岡本章吾氏に、石破首相のファッションの問題点について解説してもらった。
石破ファッションの最大の問題点
首相のファッションにおいて、岡本氏が特に危惧しているポイントがあるという。
「ネクタイのセレクトについては、一番に提言を申し入れたいところです。『レジメンタル』という斜めストライプの柄がありますが、今のところ石破首相はほぼ全てのシチュエーションでこのタイを着用されています。日本では就活時にも薦められる定番ですが、これが海外では外交問題になる恐れを孕んでいるのです」
レジメンタルは、16世紀の英国軍が使用していた旗が起源だ。所属する部隊が分かるようにネクタイのデザインに取り入れたのが始まりで、その後、イギリスの名門大学やアメリカのアイビーリーグでは、大学ごとの柄が制定された。
「レジメンタルは大きく分けて『英国式』と『米国式』の2種類に別れていて、英国式は右上がり、米国式は右下がりになっているのが特徴です。起源からして “ある部隊や団体に所属する”のを表すために使われることから、フォーマルな場や国際社会の舞台にはふさわしくありません。G7やG20のニュースなどで注目していただきたいのですが、各国首脳は基本的に無地か小紋柄のタイを付けています。それほど海外の政治家にとっては常識事項です」
11月6日、米大統領選でトランプ前大統領が2期目の当選を果たした。対米自主独立路線を掲げる石破政権が、トランプ氏との外交の場で無意識に「英国式」を選ぶようなことがあれば、知らず知らずのうちにさらなる悪印象を植え付けることにもなりかねない。
「首脳たちが集まる会談で、石破首相が一人だけレジメンタルを付けていけば、対外的に思わぬメッセージを発信することになってしまいます。また、イギリスへ外遊するときに米国式、逆にアメリカで英国式を選んだりすれば、先方から何かと勘繰られることになる。石破首相はおそらく無意識に身に付けていると思いますが、実は国際的なリスクのある問題なのです」
グリーンカラーを効果的に使う小池百合子
無地でもTPOに合わせて色を使い分ければ、印象は大きく変えられるという。
「ネクタイは政治家の顔が映るときに目に入ってくる小物なので、その人の印象を大きく左右させます。また「色」は最初に視覚情報として入り印象としても強く残ります。スーツと同様、ネイビー系なら誠実で知的、落ち着いた印象を与えることができます。情熱的な赤は強いメッセージを伝えたいとき。ビジネスではプレゼンの場面で使われることが多いですね。グリーンは自然で柔らかい、公平なイメージを与えることができます。この色を最も効果的に使用しているのは小池百合子都知事でしょうね。7月の都知事選でもカラー戦略は見事でした」
小池氏は1992年の参院選初当選のときから、これまでずっと緑色をイメージカラーに用いている。前回の都知事選では、石丸伸二が紫、蓮舫はピンクや赤など、各候補者がイメージカラー戦略を取るなか、小池氏は事務所の内装からファッションに至るまで、かつてないほどこの「グリーン」を前面に押し出していた。
「小池都知事は緑を強く打ち出すことで『中立の立場を取る』「安全、平和、エコロジー」というイメージで勝負に出た。選挙期間中のファッションも常にグリーン系で統一されていて、さすがだなと感じました」
日本の政治家で最もファッションセンスが良いのは
岡本氏が日本の政治家の中で群を抜いてセンスが良いと名前を挙げるのは、麻生太郎氏だ。
「学生時代からオーダースーツを着ていらっしゃることもあり、こなれ感が非常に高い。そして作り手のテーラーも素晴らしい技術です。熟練の技術はもちろん、麻生さんご本人にも理解が深くなければあの仕上がりにはならない。
スラックスの落ち感やシルエットなども絶妙です。シワひとつ見られませんが、人間の足はまっすぐではなく前後左右に重心の傾きがあることが多いので、そこまで踏まえた上で仕立てているか、もしくはご本人が衣服に合わせた姿勢を心掛けているはずです。いずれにせよ作り手と着る側の双方が心を配らなければ、あそこまで綺麗なラインは生まれません。細部へのこだわりが随所に感じられます」
安倍元首相も、外交の場では明るいネイビーのスーツにこだわるなど身なりに気を遣っていた政治家の一人だ。だが実は、最初に頭角を現した頃は全く様相が違っていた。
「安倍さんは第二次政権の発足時に、立ち居振る舞いや話し方はもちろん、髪型から服装までスタイリングを大きく変えています。2006年の第一次政権の頃と見比べてみると、ずいぶん印象が違うはずです。初めて首相に選出された頃は、スーツや髪型も落ち着きすぎて実年齢より老けているように見えますが、再登板時は爽やかで覇気を感じる佇まいです。このときからスタイリストを付け、意識的に変えていたのでしょう。そして期待値も高く感じられました。」
たかが服、されど服――。短命を不安視される石破政権が長続きする秘訣は、“ファッション改革”にもあるのかもしれない。
イメージスタイリスト/岡本章吾 株式会社S-style 代表取締役・イメージスタイリスト(R)。銀座で完全予約制のプライベートサロンを運営。ファッションの戦略家として多くの政治家、経営者のイメージスタイリングから仕立てまでをワンストップで手掛ける
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