ズボラだからこそ生まれた!とにかく効率を追求した「子育てをする親」に向けた育児本に込められた想いとは? ヨッピーさんインタビュー

写真拡大 (全3枚)

2024年9月30日に刊行された、ヨッピーさんの育児本『パパもママも必読!子育てがラクになるノウハウを集めた育児ハック』(KADOKAWA)。ライターとして様々なメディアで活躍し、託児銭湯も主催しているヨッピーさん。そんな彼がなぜ育児本を書くに至ったのか、経緯や想いをお伺いしました。

Amazonで『パパもママも必読!子育てがラクになるノウハウを集めた育児ハック』を見る

――新刊の発売、おめでとうございます。お子さん、とんでもなく可愛いですね。

ヨッピーさん(以下、ヨッピー):
でしょう。鬼のような可愛さなんですよ。ちょっとこれ、見てくださいよ……!

ヨッピー:
寝ぼけてる息子なんですけど、破壊力がヤバい。こういう子どもの可愛いシーン、他にもあと6万8,250件くらいあるんですが、こういうのを見るたびに「育児、やっぱ男の人も全員やるべきでは!?」って思ってて。

世間では「男は育児しない!」って怒るお母さんがたくさん居ますし、確かに「育児は女の仕事!」みたいな考え方で最初からまったく育児をしない男性もいますけれども、一方で「男は育児をさせて貰えなかった」っていう側面もあるよな、って思うんです。

「男は稼いでナンボ」みたいな圧力は確実にありますし、男性側が「育休取りたい」とか「給料が下がったとしても、もう少し仕事の負荷が低い仕事に転職して子どもとの時間が欲しい」って言っても「収入が減るならダメ」って奥さんからブレーキかけられたりする事はあるじゃないですか。それがすごく可哀想だなって。

だから「男はもっと育児しようぜ」と呼びかけるのと同時に、「育児を男性の手に取り戻そうぜ!」みたいな事も社会に訴えかけていきたいですね。

――この「育児ハック」を書かれたのもそういう動機からでしょうか。

ヨッピー:
いえ、本を書いたのは物凄く単純で、「こういう本が無いな」って思ったからなんです。本の中にも書いたんですけど、奥さんの妊娠が発覚した時に、僕はとにかくビビったんですよ。SNSでは「育児は地獄ぞ」みたいな事を言う人達がいっぱいいるじゃないですか。

それに僕は割とズボラな性格をしているし、面倒臭いことは嫌いだし、「そんな僕が果たして子どもを無事に育てられるのか?」って。だから「まずは勉強だ」と思って、本屋さんに行って育児本をアレコレ買ったんですけど、その中には「授乳は3時間毎にしましょうね」とか書いてあるじゃないですか。

「3時間毎に授乳してたら親はいつ寝れば良いんだ?」と思いながらページをめくっても、そこには何も書いて無いんですよ。

つまり、「子どもにとってこれが必要!」っていうのは全部書いてたとしても、「その必要なものを揃えるにはこうすると良いよ!」みたいな事を書いた本が無かったんですよ。僕はその情報こそ知りたいのに!

仕方ないから自分なりに試行錯誤して、あれこれ試して失敗したりしながら育児に挑んだんですけど、逆にズボラで面倒臭がりな気質が活きたんですよね。とにかく効率を追求したんです。おかげで我が家はそんなに時間に追われることもなく、余裕を持った生活を出来ているので、「この経験を本にしたら色んな人が助かるんじゃないか?」っていう。

――「無かったから自分で書いた」という事なんですね。

ヨッピー:
その通りです。動機は他にも色々ありますけど。例えば、これは子どもがいる家庭の人には全員共感して貰えるんじゃないかと思ってるんですが、自分に子どもが生まれてから、子どもの悲しいニュースを見るとめちゃくちゃ落ち込んじゃうんですよ。虐待死事件とか……。本当に心が痛むんですよね。

でも、ああいう事件って多くは育児に追われて余裕がまったくない事が原因で起こってしまったりするじゃないですか。この「育児ハック」みたいなノウハウが広まって、育児の負荷が低減される事によって、悲しい事件が少しでも減るといいな、とかも思ってます。

――どういう人に読んで欲しいんでしょうか。

ヨッピー:
「子育てをしている全ての人に」と言いたいところではあるんですけど、自分で育児をやっててつくづく実感したのは、「これは総合格闘技だな」っていう。自分のあらゆる面が問われるんですよ。

例えば、

親兄弟との関係性が良いか
協力してくれる友達はいるか
体力はあるか
お金はあるか
メンタルは安定してるか
情報収集能力はあるか

などなど、とにかく全部問われるんですよ。

親兄弟など親戚との関係性が悪かったら親の手を借りることも出来ないだろうし、友達が居なかったら要らなくなったものを交換し合ったり一緒にお出かけしたりも出来ませんし。

逆に言えば上に挙げたようなものが全部揃ってるような人はこの本を読まなくても良いかもしれません。たぶんそういう人は育児で困らないので。

なので読者として想定しているのは親元から離れて都市部で働いてる共働き夫婦、とかですかね。生まれ育った地元から離れて夫婦ふたりで育ててる、とかだと親を頼れないですし。

――「育児は登山に似ている」という一説は「その通りだな」と思いました。

ヨッピー:
でしょう。育児しながらつくづく思ったんですよ。「あー、これは登山だわ」って。登山って、準備が大事なんですよ。準備や下調べを一切せず、適当な装備で適当に山に登って、雨が降ってくるわ食料は無いわって事態になったら最悪じゃないですか。お腹も空くし寒いしで「良い景色だな〜」とか言ってる場合じゃなくなるんですよ。

雨具や防寒具を用意して、行動食を用意して、天気予報も確認して、準備万端の体制を組んで登るからこそ、山でしか見れない景色や達成感を堪能できるのであって、お腹が空いてたり寒かったりで、その余裕が無かったら登山なんて何にも楽しくないですもん。

育児も同じなんですよね。別に「育児は大変だぞ!!」ってビビらせるつもりは無いんですけど、何の準備も下調べもせずに、適当に育児期間に突入して夜泣きやイヤイヤ期に振り回されてたら「子ども、可愛い〜」って感じる余裕すら無くなるじゃないですか。

だから、山登りを楽しもうと思ったら準備が大事なのと同じように、育児を楽しもうと思ったらやっぱり準備が大事なんですよ。山に登らないと得られない美しい景色や達成感があるのと同じく、子どもを育てないと得られない幸福感や達成感もやっぱりあるのでその辺も似てますね。

山に興味が無い人からすれば「山に登って何が楽しいの?大変だしお金もかかるし」って思っちゃうのと同じように、子どもに興味が無い人が「子どもを育てて何が楽しいの?大変だしお金もかかるし」って思っちゃうところらへんも似てる。

ただ本当に、必要以上に「準備しなくちゃダメよ!」みたいに煽りたいわけではないんですよ。そのせいで「育児ってそんなに大変なのか……」って尻込みする人が増えたら嫌なので。でもやっぱり、準備は大事なんだよな〜〜。

――男性目線の育児本という意味でも価値がありそうです。

ヨッピー:
どうなんでしょうね!? 発売にあたって子どもが生まれたばっかりの知り合いにたくさん本を配ったんですけど、読んだ女性から「男性ならではの目線で新鮮でした」みたいな感想をいくつか貰って、「あれ?そうかな?」って思いました。自分ではその辺がよくわからなくて。

でもまあ、僕は男ですし、男性の目線なのでやっぱり女性の目線とは少し違うのかもしれないですね。「出産後はとにかく奥さんを休ませろ!」みたいなくだりとかかなあ? その辺は確かに男性の目線かも。男性にも女性にも両方に読んで欲しい、というか夫婦揃って読んで欲しいなと思って書いてるんですけど。

夫婦で価値観を共有しておくことも大事なんですよね。これも自分で育児しながら思った事なんですけど、「なにごとにもこだわるタイプ」ってたぶん育児で苦労するんですよ。

離乳食は手作りで、とか。ミルクは使わずに完全母乳で、とか。部屋は常に綺麗に、とか。そういう風にこだわればこだわるほど当然タスクが増えて大変になるじゃないですか。子どもなんて簡単に部屋をめちゃくちゃにするので、毎回きっちり片づけて掃除したくなるタイプの人だとかなり大変。

なのである程度「どの程度までやるか」「どの程度なら妥協できるか」みたいな価値観は夫婦で共有しておくべきなんですよね。

奥さんが「めっちゃこだわるタイプ」で、旦那さんが「ほどほどで良いタイプ」だと、旦那さんの家事育児に対して奥さん側が不満を持っちゃうんです。「ぜんぜん出来てないじゃん!」って。そのうち「もう貴方には任せられない!」みたいになってタスクを全部自分が抱え込んで潰れてしまう、みたいな。

なのでそういう自覚がある夫婦は事前にちゃんとすり合わせておいた方が良いですね。僕は子どもが生まれる際に「効率重視でやろうと思います!」って奥さんに提案したんですよ。

これも本に書いた内容ではあるんですけど、我々親の役割って、「子どもを、健康に育てること」じゃないですか。

でもこの「健康」って2つの意味があるんですよ。
一つは「身体の健康」で、もう一つは「心の健康」です。

身体の健康は確かに手作りの栄養満点ご飯で育むことが出来るかもしれませんが、育児と家事に追われていつもピリピリしてる親の元では「心の健康」は育たないじゃないですか。

なので、「時間に追われてイライラするくらいなら、多少部屋が散らかってようがレトルト食品に頼ろうが、親がニコニコしてる方が子どもの成長にとっては良いんだから我が家はそういう方針でやりましょう」って。

――家事育児の効率化だけでなく、お金の話までフォローしているのはさすがですね。

ヨッピー:
でしょう。本で「このサービスが便利だぞ」とか「この商品が便利だぞ」なんて風に書いてるので、「それを買うお金が無いんじゃ!」とか言われそうだな、と思って。

お金の話の所は、ある意味常識的な内容で別に「FXで大儲け!」とか書いてるわけではないんですけど、NISAとかポイ活とかって未だにやってる人の割合のほうが少ないんですよね。「やらないと損やで?」みたいなものって世の中にはたくさんあるのに、まだまだ浸透していないのでその辺もカバーしたら金銭的な余裕も出て来るのかなー、と。

実際、子どもが生まれるっていう友達に「子どもが生まれるなら洗濯乾燥機はマストやで。洗い物めちゃくちゃ増えるからイチイチ干したり取り込んだりしてられなくなるよ」みたいな話をしたら、「ドラム型のやつは高いじゃないですか」とか言われたんですよね。

そんで僕が「スマホの回線はどこ使ってる?」って聞いたら「DOCOMOです」みたいな。「DOCOMOならahamoに変えたら月5,000は浮くぞ!夫婦揃ったら月に1万円や!月に1万円浮いたらそのお金で洗濯乾燥機のローン組めるやないか!」みたいなやりとりがあったりして。

そういう人ってゴロゴロいるんですよ本当に……!

――最後に読者に向けて一言

ヨッピー:
とにかく、育児って楽しいんですよ。いま2歳と0歳の子どもを育ててる最中なんですが、子どもを連れてお祭りに行ったりプールに行ったりしながら、「ああ、間違いなく今が人生のピークっていうくらい幸せなんだろうな」って思うくらい。

もちろん自分の時間は間違いなく減るし、大変な事もたくさんあるんですけど、それを全部チャラにして、膨大なお釣りが来るくらいの幸せな時間を与えてくれるのが子どもなので、そんな風に育児を楽しめるような家庭が増えると良いなと思っております。

そのためにもやっぱり「準備は大事だな〜」と思うので、是非ともこの「育児ハック」を読んで、育児に備えてください!!

ヨッピー(よっぴー)

1980年生まれ。ライターとして様々な媒体で記事を執筆している。ライター以外にも、お出かけメディアの編集長や、講演、イベント主催などを行なう。子育てをしている親にゆっくりお風呂に入ってもらいたいという思いから託児銭湯も主催。著書に『明日クビになっても大丈夫!』(幻冬舎)がある。
X(旧Twitter):@yoppymodel