この記事をまとめると

■道路交通法では2022年5月から70歳以降のドライバーに高齢者講習が義務付けられている

■高齢者による免許返納件数は増加傾向にあったがコロナ禍以降はまた減少している

■返納数を増やすには免許返納者たちへ向けた移動のケアをもっと充実させる必要がある

高齢者の免許返納の実情とは

 操作ミスや判断の遅れ、勘違いや標識見落としによる逆走などの危険行為。これらが事故を引き起こす可能性は高く、いずれも高齢による身体能力の低下が招くことも多いといわれています。高齢者が安全に運転を続けるためには、こうした加齢による身体的な変化を自認し、それに応じた運転と安全対策を実施していくことが必要ということで、道路交通法では2022年5月から高齢者講習が義務付けられ、免許の更新時に運転適性検査が行われるようになっています。

 一方で、ご自身で運転に不安を感じるようになったり、周囲から勧められたりして運転免許証を自主返納することも高齢となったときのひとつの選択肢。自主返納すると、公的な本人確認書類として有効な「運転経歴証明書」の交付が受けられるので、免許返納後も免許にかわる身分証明書を持つことができます。自主返納は、各都道府県の警察署や運転免許センターで手続きができます。

※画像はイメージ

 しかし、巷でよく耳にするのは、危ない運転を見かねて家族が「もう返納したら」と助言しても、「まだ大丈夫だ」と、頑として返納をしない父親がいるといった話です。いったいいま、免許返納の現状とはどうなっているのでしょうか。

 パーク24のアンケート調査によれば、「自身の運転免許証の返納について考えたことはありますか」の問いに、60代以上の20%が「ある」と回答。次いで50代が8%、40代が3%と、やはり年齢が高くなるにつれて考える割合が多くなる結果となっています。

「返納について考えたきっかけ」の問いには、「操作ミスによる交通事故のニュースを見たから」という回答が70%とダントツの多さ。次いで「運転する機会が減ったから」が19%、「運転操作ミスをして危険を感じたことがあるから」が11%、興味深いのは「身近な人が運転免許証を返納したから」が10%と多い回答となっていることです。

 これに関連して、「家族や親族、友人などで返納した人はいますか?」という質問では、34%が「いる」と回答。前回のアンケート調査では32%、前々回が29%だったので、少しずつ増えていることがわかります。返納した人の年代は、「70代」が53%で最多となり、次いで「80代」が32%、「60代」が12%と続いています。人の心理として、自分だけが返納するのは勇気がもてなくても、「あの人も返納したなら」と連帯感や安心感がもてることで、返納に踏み切る人が徐々に増えていくのかもしれません。

課題は免許返納者へのケア

 ただ、警察庁の運転免許統計(令和4年版)によれば、2013年に13万8000人だった返納者は2019年に60万1000人となるまで右肩上がりでしたが、コロナ禍によって密を避けた移動手段として自家用車が見直されると減少傾向となり、2022年は44万8000人にとどまっています。

「自身が運転免許証を自主返納する想定年代」という質問では、20代以下から30代、40代、50代、60代以上の年代別の回答でもすべての年代で「70代」という回答が50%以上を占めていますが、30代と20代以下の回答では「60代」が「80代」と同じくらいの割合を占めています。回答者の年代が上がるにつれて「80代」が増えてくる結果となっています。

 免許返納は本人だけの問題ではなく、家族など身近な人の協力や、自治体による代替交通機関のサービスといった社会全体の問題です。間違えてはいけないのは、返納させることが目的ではなく、事故をなくすことが本来の目的だということ。事故ゼロのためにはどうすべきかを考え、総合的な対策で解決していくことが大切ですね。