自分は常連だからと、わがままを言いたい放題の勘違い客もおり、自分の食卓と勘違いする人もいる。許容限度をわきまえた上で、店に迷惑をかけずに食事をしてもらいたいものだ。

◆真心あふれるおもてなしにも限度

 日本のサービス業においては、真心あふれるおもてなしといったホスピタリティ精神は当たりまえ、些細なことや小さなミスもすぐに謝罪するのは当然といった「お客様は神様」的な風潮がある。こうした日本のサービス文化が「カスハラ」を生んだ背景もあるので、過剰な接客などの線引きは難しいとは思う。店によりサービスレベルが異なるので基準は様々だが、再考する余地はあると思う。

 業歴の浅い飲食店では、売上を早く軌道に乗せ売上を安定させるためには、常連さんなど固定客の確保が重要になる。そのために客に低姿勢になり、客の方が優位になるケースは多い。2割の固定客が売上の8割を占めるという「パレードの法則」の意識を持つ店主が陥りやすい。

 固定客の選定における鑑識眼が必要だ。店を中長期的に支えてくれる優良顧客を組織化して顧客基盤の盤石化に力を入れてほしいもの。そして、カスハラ客が入りにくい店の雰囲気を醸成できたら最適だ。

◆快適な場の提供という使命感

 飲食店は基本的に、快適な食事の場を提供するといった使命感から、店内であまり揉め事を作りたくないものだ。そういう弱みに付け込んで攻撃をしてくる悪意あるクレーム客や態度が横柄なカスハラ客はいる。有名店であれば、それ相当の金銭が要求できると勘違いする客もいる。

 だが、相手が大きいほどそういう要求には乗らず、クレーム対応はマニュアル化され、手慣れたもの。誠意をもって謝罪はしつつもできること、できないことを明確に伝えて、前例主義で対応するものだ。逆に、個人店は早期に解決したがるからお金をすぐ払ってしまう。個人店の皆さんは注意しないといけない。

◆他のお客まで不愉快にするカスハラ客

 カスハラ客の存在は、楽しく食事をしたいという他のお客様まで不愉快にするものだ。従業員だけでなく、総ての人を不愉快にするカスハラ客は本当に見苦しい。今までのお客様迎合主義が、お客さんをよりわがままにさせたのである。

 だから、無理難題を当然のように言うカスハラ客もおり、自分だけのオリジナル商品を店側に作らせる客も出てくる。連れてきた客に、店がなんでも自分のいうことを聞くところを見せて、自分の力を誇示して自慢する馬鹿らしい客も存在する。

 できないことは、できないとはっきりと断る勇気が必要である。そうしないとわがままを言う客の要求はどんどんエスカレートして歯止めが効かなくなる。それを放置すると、オリジナルメニューを作ってあげる人が多くなり、店の作業負担が増えるだけで利益率も低下し、何のために商売しているのか分からなくなる。

 こんなワガママ放題のカスハラ客がいるから、飲食店で働く人が少なくなるのだと思う。ただでさえ、人手不足の飲食店だけに、毅然とした対応策を講じねばならない。

◆飲食店の経営を難しくする場合も

 何を勘違いしているのか、自分の使用人のように店員を使う客もたまにいる。筆者の経験上、わざと異物を混入させて、歯が欠けたからと因縁をつけ金銭を要求するクレーム客、グラスの口が欠けていて口を切ったと口から血を流し、救急車を呼べと騒ぐグループもいた。

 飲食店というのは基本的に救急車や警察を呼ぶことはあまりしない。もちろん、呼ばざるを得ない時もあるが、極力避けるのだ。なぜならば、快適な雰囲気で楽しく食事をされる目的のお客様に対して、店内の騒動で迷惑をかけたくないからである。