「次の一手」は?

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 東京都知事選での“躍進”によって、またたく間に全国的な知名度を得た前安芸高田市長の石丸伸二氏(41)。ところが選挙後のメディア対応をめぐり、その「人物評」に関して賛否が入り乱れる大論争に……。一方で専門家は、石丸氏の発言の裏にひそむ「意外な精神構造」を解き明かす。

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 とくに論議を呼んだのが、テレビの選挙特番でコメンテーターを務めた元乃木坂46の山崎怜奈とのやり取りだった。

 山崎が石丸氏の掲げた公約について質問したところ、「前提のくだりが全く正しくないと感じた」とピシャリ。さらに3選を果たした小池百合子氏との公約の比較に話が及ぶと「全然次元が違うと思う」と質問そのものに疑義を呈し、山崎が「すみません、不勉強で」と謝罪する一幕もあった。

「次の一手」は?

「放送後、山崎さんは自身のXに〈あー怖かった〉と投稿しましたが、この石丸氏の対応についてSNSでは『パワハラ上司の典型』などの批判が噴出。一方の石丸支持者からは『コメンテーターの質問が悪い』と擁護の声が上がり、激しい論争が展開されています。同じくテレビ番組で“対決”した社会学者の古市憲寿さんも、石丸氏から『同じ質問を繰り返してますよね』や『もう1回言えってことですか』など何度も切り返され、最後まで話が噛み合うことはなかった。古市さんは石丸氏の印象を〈出来の悪い生成AIみたい〉だったとSNSに投稿しています」(スポーツ紙デスク)

 石丸氏自身は山崎との質疑を振り返り、「真剣勝負でこう斬ったら、相手は竹刀も持っていなかった…みたいな」と表現。「あれはちょっと、可哀そうだったかな」と反省の弁を口にした一方で、「もういっぺん、あの場にいても、同じ風にやっちゃう」と語っている。石丸氏とは「何者」なのか――。

「高学歴モンスター」

「石丸氏が優秀であるのは誰もが認めるところですが、精神科医の目から見ると、石丸氏には〈無自覚型のナルシシスト〉の傾向が強く窺えます。アメリカの精神科医であるグレン・ギャバードはその特徴を6つ挙げ、そのなかの一つに〈“送信器”はあるが“受信器”がない〉というものがあります。つまり自分の優秀さをアピールする発信ばかりに気を取られ、自分の発言を相手がどう受け止め・どう感じるかにまで想像力が及ばないことを指しています」

 こう指摘するのは精神科医の片田珠美氏だ。多くの人が“パワハラ”と感じた前述のテレビでのやり取りを思い返すと、納得できる部分があるように感じる人もいるのではないか。

「他の特徴として、(1)他人の反応に気づかない(2)傲慢で攻撃的(3)自己陶酔(4)注目の的でいたい(5)他人の気持ちを傷つけることに鈍感――といったものが挙げられます。要は自分が他人に及ぼす影響に無頓着かつ無自覚であり、さらに自分は正しいという“無謬性”に疑いを持たないという特徴を持っている。いわゆる『高学歴モンスター』と呼ばれる人たちに見られる傾向で、このタイプの人は自分の落ち度を指摘されると過剰に反応する一面(拒絶過敏性)も併せ持っています」(片田氏)

 そして、この手の人物は政治の世界では決して珍しい存在でないという。

「絶望の裏返し」

 片田氏が続ける。

「私が石丸氏と重なって見える部分があるのが、兵庫県知事の斎藤元彦氏です。斎藤氏のパワハラ疑惑などを告発した元局長が亡くなるという悲劇に接してなお、斎藤氏は当初、自分の正当性を主張することに必死でした。〈無自覚型のナルシシスト〉は米トランプ前大統領にも通じる点があり、“強いリーダーシップ”といえば聞こえはいいが、政治家として見た時、致命的な一面も有しています。政治家の務めは“民意を汲み上げる”ことですが、耳を傾けるという〈受信器〉の機能が弱ければそれも叶わない」

 実は片田氏が注目するのは、むしろ“石丸フィーバー”を生んだ背景という。

「石丸氏の人気は、既存の政治や政治家への絶望の裏返しと考えます。普通の人々が協調性や同調圧力と折り合いをつけ、自己愛を抑圧して生きるなか、自信満々に自己愛を制御することなく突き進む石丸氏を見て“停滞した現状を打破する存在”と感じても不思議はない。つまり今回の『石丸現象』は、日本の政治状況という腐敗した土壌によって生み出されたといえるのではないか」

「改革者」か「ダークヒーロー」か。石丸氏の今後の動向から目が離せない。

デイリー新潮編集部