「萌え萌えきゅん」は台湾語でも…日本進出した「台湾メイドカフェ」がインバウンド客から人気を集めているワケ

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2005年に台湾南部の都市・高雄市で創業し、台湾全土に7店舗を構える「ツクヨミメイドカフェ」(月讀女僕珈琲、以下「ツクヨミ」)。その日本初進出となる「秋葉原店」が昨年12月にオープンした。

インバウンド客で賑わう都心の繁華街として“夜の街化”も囁かれる秋葉原に、台湾で随一の人気と歴史を誇る正統派メイドカフェが“逆輸入”されたことで話題となった同店。「ツクヨミダイニングカンパニー」のオーナー・鄭傑中(ていけっちゅう)氏をインタビューし、“メイドカフェ”にかける愛情と情熱を聞いた。

台湾でも市民権を得ているメイドカフェ

「ツクヨミ」が店を構えているのは、末広町駅からも程近い中央通りに面した飲食店ビル。同じく海外進出にも注力する世界最大級のメイドカフェグループ「めいどりーみん」も入る、秋葉原の代表的なメイドカフェビルだ。

「昔ながらのメイド喫茶・メイドカフェという業態が、今の秋葉原でどこまで受け入れるか。未知数なところもありましたが、ぜひ挑戦したいと思いました」

オーナーの鄭氏は現在44歳。アニメ「ドラゴンボール」ハマって以来、幼少期から日本のアニメや漫画、ゲームに親しんできたという、自他ともに認めるアキバ系オタクである。大学時代には日本への留学経験もあり、日本語も堪能だ。

「1992年に「少年ジャンプ」(集英社)の翻訳版である「宝島少年」が発行され、1997年に発売された「ファイナルファンタジー7」は当時、台湾でも大ヒットしました。そんな時代に多感な時期を過ごした世代です。高校の頃には「Comic World Taiwan」という同人誌即売会も開催されるようになり、比較的マイナーな日本の漫画作品などにも広く触れてきました」

そんな日本のサブカルチャーのひとつとして、メイドカフェは台湾でも市民権を得ているらしく、台湾本国で現在「ツクヨミ」は老舗メイドカフェとして認知されている。鄭氏が高雄市のパソコン街に1号店をオープンしたのは19年前。日本で「電車男」が流行していた頃と考えれば、かなり先駆的だ。

このほど念願だった秋葉原への出店に乗り出したのは、コロナ禍で休業することになった台北のメイドカフェ経営を、日本人オーナーから引き継いだことがきっかけだったという。

「コロナ禍が落ち着いた昨年、4年ぶりに私が来日した際に、その日本人オーナーの方へ挨拶にうかがったんです。非常におもしろい方で気も合ったので、私から「一緒に秋葉原でメイドカフェをやりませんか?」とお誘いしたところ、二つ返事で引き受けていただきました」

インバウンド客の需要をキャッチ

日本人の協力者を得た鄭氏が、台湾発のメイドカフェとして「秋葉原店」の大きなコンセプトに据えたのが、日台をはじめとするオタクたちが国際交流できる店づくりだ。

「秋葉原店」には現在10名以上のメイドスタッフが働いており、うち約半分は日本国籍。残りは台湾と香港の出身者で、中には英語をはじめ3〜4言語を使いこなすほど語学堪能なメイドもいるという。

「日本での知名度や事業実績がなく、メイドカフェという業態もあり、テナント探しには苦労しましたね。メイドさんは諸事情でSNSの「X」で募集しました。自信や誇りを持って楽しみながら働けるメイドカフェをつくりたいと考えていますが、オープンまでに人が集まらないのではないかと不安でしたね。いまの秋葉原店には、メイドカフェで働くことに人一倍強い気持ちを持つ子が多く集まってくれたと思っています」

とくに外国籍の女性が異国の地である日本のメイドカフェで働く場合、心理的にもさまざまハードルがあることは想像に難くない。しかし、さまざま国籍のスタッフが集まった結果、狙い通り「秋葉原店」には多様な客が訪れるようになったという。

「メイドカフェを体験してみたいインバウンド客も入りやすく、楽しみやすい店ということで、秋葉原を訪れる海外観光客も多く来店されています。もちろん、一番のメインは日本の方々ですが、中華圏のお客様も多いですし、韓国や欧米の方々も来られます。3割ほどは女性客が占め、グループでの利用も多く、週末の夜などは満席になることもあります」

料理のクオリティの高さも同店の人気の要因のひとつ。魯肉飯(ルーローハン)や排骨麺 (パーコーメン)、屋台料理として人気の揚げ物のセットなど、本格的な台湾料理に舌鼓を打てる。

「八角の香りなどは、日本人の好みに寄せて多少アレンジしています。“ガチ台湾料理”というと言い過ぎかもしれませんが、よりオーソドックスで家庭的な台湾の味わいです。台湾から香辛料などを持ち込み、本場の味付けに仕上げているため、留学や仕事で日本に長期滞在している台湾人には、ちょっとした帰省気分を味わってもらえるかと思います」

客単価は平均2000円〜2500円程度。「初めてセット」(記念写真、オムライス、ドリンク:2500円)や本場の味わいを堪能できる「台湾朝食セット」(記念写真、蛋餅or葱餅、大根餅、ドリンク:2500円)といったセットメニューも用意する。もちろん定番のオムライスも提供しており、メイドカフェでお馴染みのおまじない「おいしくなーれ」「萌え萌えきゅん」は、台湾語でも対応可能だ。

メイドさんと一緒に「萌ㄟ〜萌ㄟ〜啾〜」できるサービスは、日本ではまずここでしかあり得ない体験だろう。

後編記事『秋葉原に誕生した「台湾発メイドカフェ」がスゴイ…中国、台湾、香港からもオタクが集まる「驚きの実態」』では、鄭氏が考える同店の目標について、お話を聞いた。

秋葉原に誕生した「台湾発メイドカフェ」がスゴイ…中国、台湾、香港からもオタクが集まる「驚きの実態」