コヴェントリーとしては難しい展開となってしまったが、71分には反撃へ転じる。敵陣中央で背後からのボールを収めたカラム・オヘアが右サイドへ散らすと、フリーでボールを受けたファビオ・タヴァレスがクロスボールを供給。ニアサイドでフリーになっていたエリス・シムズがダイレクトボレーを沈め、コヴェントリーが1点を返した。

 勢いに乗るコヴェントリーは続く79分、ミラン・ファン・エヴァイクが背後のスペースへボールを入れると、左サイドへ流れたシムズがボールをキープ。時間を作ってから中央へ切り込み、横へ渡すと、サポートしていたカラム・オヘアがミドルシュートを放つ。この一撃がアーロン・ワン・ビサカに当たってゴールに吸い込まれ、コヴェントリーが1点差まで詰め寄った。

 一時はマンチェスター・ユナイテッドにとって余裕の展開かと思われながら、終盤はコヴェントリーが同点を目指してゴールに迫る場面を作り出すなど、試合は最後まで手に汗握る展開に。最後まで諦めないコヴェントリーは後半アディショナルタイム、敵陣でクリアボールを拾ったヴィクター・トープが左サイドへスルーパスを送ると、ハジ・ライトが左足でクロスボールを送る。ファーサイドへ詰めていたルイス・ビンクスがダイレクトで合わせると、このシュートがワン・ビサカの腕に直撃。主審は迷わずペナルティスポットを指差し、コヴェントリーにPKが与えられた。

 キッカーを務めるのは、PKに繋がるクロスボールを上げたライト。GKアンドレ・オナナの逆を突く一撃をゴール右下に蹴り込み、コヴェントリーが土壇場で試合を振り出しに戻した。

 このPKにより、試合は延長戦に突入。延長前半の序盤にはマンチェスター・ユナイテッドがビッグチャンスを構築。94分、敵陣で相手のミスからボールを拾ったホイルンドがボールを持ち運び、ボックス右へ走り込んでいたアマド・ディアロへボールを繋ぐと、マイナスへの落としからB・フェルナンデスが右足一閃。強烈な一撃はクロスバーを叩いた。

 その後は基本的にマンチェスター・ユナイテッドが押し込みながらも、コヴェントリーもカウンターを中心に一歩も引くことなく、五角の戦いを披露。延長後半に入ると、コヴェントリーが怒涛の攻撃へ。113分、カウンターの流れから前線でシムズがボールを収めると、落としを受けたオヘアが左へ繋ぐ。走り込んできたライトが左足を振り抜くも、シュートはわずかに枠を外れる。続く116分には、ゴール前でうまく反転したシムズが思い切り良く右足で狙ったが、今度はクロスバーに嫌われた。

 さらに延長後半アディショナルタイム、コヴェントリーはオヘアからのスルーパスでライトが左サイドを抜け出すと、ニアサイドへ飛び込んだトープがダイレクトで押し込む。土壇場でコヴェントリーが試合をひっくり返したかと思われたが、ここはライトのポジションがオフサイドと判定され、得点は認められなかった。

 結局、120分間を経過しても試合の決着はつかず、勝負の行方はPK戦に委ねられる。先攻のマンチェスター・ユナイテッドは、1人目キッカーを務めたカゼミーロが真ん中にチップキックを狙ったが、GKコリンズが駆け引きを制する。その後はマンチェスター・ユナイテッド3人目のクリスティアン・エリクセンまで全員が成功。一方でコヴェントリーは3人目のオヘアが放ったキックがGKオナナの好セーブに阻まれる。マンチェスター・ユナイテッド4人目のB・フェルナンデスはゴール右下に流し込むと、コヴェントリー4人目のベン・シーフが蹴った一撃は枠を外れる。決めれば勝利が決まるマンチェスター・ユナイテッドは、5人目に登場したホイルンドがゴール右下に強烈な一撃を叩き込み、勝敗が決した。

 この結果、勝利したマンチェスター・ユナイテッドが、2シーズン連続の決勝進出を決めている。コヴェントリーは健闘も、クラブ史上初の優勝を果たした1986−87シーズン以来のファイナル行きとはならなかった。

 昨日行われた準決勝のもう1試合では、マンチェスター・シティがファイナル行きの切符を掴み取っており、マンチェスター・ユナイテッドは昨季の“リベンジ”を目指して、5月25日に『ウェンブリー・スタジアム』に乗り込むこととなる。

【スコア】
コヴェントリー 3−3(PK戦:4−2) マンチェスター・ユナイテッド

【得点者】
0−1 23分 スコット・マクトミネイ(マンチェスター・ユナイテッド)
0−2 45+1分 ハリー・マグワイア(マンチェスター・ユナイテッド)
0−3 59分 ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)
1−3 71分 エリス・シムズ(コヴェントリー)
2−3 79分 カラム・オヘア(コヴェントリー)
3−3 90+5分 ハジ・ライト(PK/コヴェントリー)