受動喫煙防止のためにも喫煙所が重要だ

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「EXPO 2025大阪・関西万博」に向けて、大阪市は2025年1月をめどに市内全域で路上喫煙禁止に向けた条例改正を進めている。一方、東京都内でも中央区、千代田区、港区、渋谷区、文京区、台東区では区内全域の公共の場で、紙巻きたばこと加熱式たばこの路上での喫煙を禁止している。このうち千代田区では、喫煙所の設置者に対して上限700万円と運営維持管理への助成を積極的に行っている。

J-CASTニュースBiz編集部では、早期に路上喫煙禁止を決めた千代田区の事例をもとに、喫煙所の増減や喫煙者のおかれている現状を調べてみた。

公衆喫煙所は行列、満員

千代田区は2002年に「安全で 快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」を制定し、路上禁煙地区を区内の30%を指定した。現在では区内全域に広げ、違反者に対しては指導員が口頭での注意と2000円の過料を請求する。区公式サイトで公表している路上喫煙過料処分件数(図1)によると、2006年の1万799件をピークに、22年には2730件まで減少している。

助成事業の結果、法人、団体および個人が設置した「誰でも利用できる」公衆喫煙所は、2023年3月時点で76か所。カフェやコンビニエンスストアなどの民間喫煙所の数は96か所となっている。また、公衆喫煙所の維持管理経費についても千代田区が年間264万円まで助成金で負担しているという。

NEWSポストセブンは2016年10月31日付記事「路上喫煙に過料2000円 賛否両論の『千代田区ルール』は今」で、千代田区の喫煙所の数を「公園や公共施設など公設喫煙所とあわせても48か所」と報じていた。比較すると、現在は28か所増えていることになる。

実際に千代田区内の喫煙所を訪問した。ビジネスパーソンの多いJR四ツ谷駅近辺の「喫煙所ジョリー」では午前中やランチタイムになると、喫煙者で行列ができ、入れ代わり立ち代わり利用していた。またJR秋葉原駅の高架下「ミマツたばこ」では、朝10時ごろには満員に近い人であふれていた。

「喫煙所が足りない」「時代を考えると適正な数」

J-CASTニュースBizでは、千代田区内に勤務する喫煙者のビジネスパーソンに、喫煙所に関して意見を聞いた。以下のような声が寄せられた。

「以前は公園の端っこにタバコを吸える場所などがあったが、撤去が進んでいて喫煙所が足りないと感じます」
「自宅と会社の喫煙室となじみの喫煙所でしか吸わないので、あまり困ったことがない」
「都内でも駅によって喫煙所設置数がバラバラなので、喫煙所が少ない駅前に行くときはちょっと困っています」
「少ないとは思うが、今の時代を考えると、適正な数だと思って諦めている部分もある」

「喫煙所が少ない」という声が、やや優勢だ。ある行政関係者はJ-CASTニュースBizの取材に、「都心の地価を考えると、無料の喫煙所を設置するのは公費で助成しても難しい」と明かす。詳しく聞くと、こう説明した。

「都内に喫煙所の設置する場合で一番問題になるのが、場所の選定。多くの喫煙者が利用しやすい場所となると、大抵地価が高い場所だ。設置条件を満たしていても、地価と助成金が見合わないため断念するケースもある」

千代田区の場合、オフィスの利用者が喫煙所探しに困っているのだろう。「行政のホンネとして、企業経営者がオフィスの一角に福利厚生として喫煙所をつくるのが一番いい解決法なのだが、なかなか理解は得られていない」とこぼした。