ボーイング787型機が南極に着陸するのは初めてだ(写真はノルウェー極地研究所のウェブサイトから)

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中型旅客機のボーイング787型機が2023年11月16日(日本時間)、初めて南極への着陸に成功した。南極には舗装された滑走路はなく、ノルウェー極地研究所のトロール基地から7キロ離れた氷上に設けられたトロール飛行場の3000メートルの滑走路に着陸した。ノルウェー極地研究所のX(旧ツイッター)には、雪煙をあげながら氷原に着陸する機体の動画が投稿されている。

今回の787型機が、トロール飛行場に着陸する飛行機としては最大。787は11年に営業飛行を始めた比較的新しい飛行機。燃費のいい新型の飛行機で一度に多くの資材を運ぶことで、環境負荷を減らすことができるとしている。

ケープタウンから5時間かけて飛行

飛行機は、ノルウェーの航空会社、ノース・アトランティックが運航。普段は主に欧州と米国を結ぶ路線を運航している格安航空会社(LCC)だ。

航空機の位置を表示するウェブサイト「フライトレーダー24」によると、今回のフライトは11月14日の深夜1時(日本時間)にノルウェー・オスロを出発し、約12時間かけて南アフリカのケープタウンに到着。16日の6時にケープタウンを出発し、11時1分に南極のトロール飛行場に着陸した。飛行機は45人の乗客と12トンの研究機材を積んでいた。

フライトレーダー24は、航空機が出す「ADS-B」と呼ばれる空中衝突を回避するための信号を活用。上空の衛星や、世界中のボランティアが地上から受信したデータをフライトレーダーのサーバーに送り、それを集計して世界中の航空機の情報を表示する仕組みだ。

フライトレーダー24のブログによると、22年12月末にトロール基地でADS-B受信設備が稼働。これは「南極初」だといい、南極を飛ぶ飛行機を追跡しやすくなった。

787は「南極での総排出量と環境負荷を減らすのに役立つ」

滑走路の整備は2年かけて行われ、05年に完成。それ以前は、数週間の船旅に加えて、雪と氷の上を約250キロにわたって移動する必要があったが、滑走路の完成で輸送効率が飛躍的に向上した。これまで、ボーイング737型機や767型機が着陸したことはあったが、さらに大きい787型機の着陸に成功したことで、さらに効率が上がるとみている。

ノルウェー極地研究所の発表では、カミラ・ブレッケ所長が787型機着陸の意義を

「このような大型機を着陸させることは、トロールへの物流にまったく新しい機会を開くことになり、南極におけるノルウェーの研究強化にもつながる」

と説明。「最も重要なこと」として挙げたのが、近代的な大型機を利用することで実現できる環境上のメリットで、「南極での総排出量と環境負荷を減らすのに役立つ」とした。787は767といった従来機種に比べて燃費が良く航続距離が長い点も、環境負荷低減に貢献している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)