「果物」はコンディション維持をサポートしてくれる

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連載「強い子どもを育てる ミライ・アスリートの食講座」第20回

 栄養・食事の観点からジュニア世代の成長について指南する、「THE ANSWER」の保護者向け連載「強い子どもを育てる ミライ・アスリートの食講座」。プロ野球・阪神タイガースなどで栄養サポートを行う公認スポーツ栄養士・吉谷佳代氏が講師を務め、わかりやすくアドバイスする。第20回は「果物」について。

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 日本人の果物の摂取量は、年々、減っています。

 厚生労働省と農林水産省が定めた「食事バランスガイド」では、“1日200gの果物を食べること”というのが目標値です。

 ところが、厚労省が実施する国民健康・栄養調査(令和元年)によると、実際の摂取量は平均で96.6gと半分以下となっています。

 特に、子どもの果物不足は深刻。摂取量を年代別でみると、0〜6歳までが93.2g、7〜14歳が73.9g、15〜19歳はさらに減って66.3g。小さな子どもよりも、中学生、高校生のほうが少ないのが現状です。小学生に関しても、この数値には給食も含まれているため、家庭ではほとんど摂れていないことが伺えます。

 私は選手の栄養アドバイスを行う際、学生、社会人、プロを問わず、必ず「毎日、果物を食べていますか?」と質問します。実際、中学、高校年代の部活動やクラブでは、「食べている」と答える選手は1割いくかいかないか。30人の部員がいたら2、3人くらいです。果物はお子さんが自ら買って食べる、という類の食品ではないので、家庭で出していない、あるいは出してもしっかり食べて、と伝えていないのだとわかります。

果物がもたらすこれだけの効果「スポーツ選手にとっては力強い味方」

 保護者の声から果物離れが進んでいる理由としてよく挙がるのは、「他に買わなければいけない食品があるので優先順位が低い」「値段が高い」「いちいち皮をむかなければいけないので、ひと手間かかる」という意見です。その際、私が感じるのは果物をデザート、つまり「嗜好品」としてとらえている方が非常に多い、ということ。「果物を出すならゼリーのほうが安いし、手もかからない」といった比較をされるのです。

 しかし、スーパーに野菜と並んであるように、果物は野菜と同じカテゴリーの生鮮食品です。保護者の方には是非、「野菜は体に大事」と子どもに食べさせるのと同様に、毎日の食卓に果物を出してほしいと思います。

 果物に豊富に含まれる栄養素といえば、ビタミン群です。特にビタミンCが多く含まれることは、みなさんもご存じかと思います。ビタミンCを一言で表現するならば「ストレスと戦うビタミン」。免疫システムをサポートする働きや、疲労に役立つといわれています。

 ほか、水溶性の食物繊維、そしてオリゴ糖も果物に多い栄養素。これらはお腹の調子を整えてくれるうえ、やはり免疫力の維持にもつながります。

 以上のことから果物は、コンディション維持をサポートしてくれる、スポーツ選手にとっては非常に力強い味方です。スポーツ選手は運動量が多く、激しい呼吸により口や鼻からウィルスなどの外敵が侵入しやすい環境下にあります。毎日、元気に過ごし、よいパフォーマンスを発揮するためにも、是非、積極的に食べるよう心掛けてほしいと思います。

 では、子供たちはいつ、どんな果物をどのぐらい食べるとよいのでしょう。

食べるのに一番いいタイミングが「朝食時」の理由とは

 食べるのに一番いいタイミングは朝食時です。果物に含まれる「果糖」という糖質は、食べてすぐに使われるエネルギー源。朝練のある子どもであれば体を動かすガソリンになりますし、午前中の授業の集中力にもつながります。

 次に、果物の種類。果物は旬を迎えると栄養価もグッと高くなるので、できれば旬のものから選びます。先に取り上げた水溶性の食物繊維、オリゴ糖がバランスよく含まれている果物で今の時期から冬に旬を迎えるものでは、梨やりんごが代表的です。

 ビタミンCが特に多い果物であれば、かんきつ類。今ならみかんがとてもおすすめです。しかも、みかんは携帯性に優れた果物。朝ご飯の時に食べられなくても、かばんにしのばせて、朝練の後に補食として食べられます。

 オールシーズン買えるものでは、オレンジ、グレープフルーツあたりのかんきつ類が手に入りやすいですが、ビタミンCが圧倒的に多いのはキウイフルーツ。果実の色が緑と黄色にわかれますが、ゴールドと呼ばれる黄色のほうがビタミンCなどの栄養価が高いです。

 量については、これまで子どもに毎日は食べさせていなかった、という方はゼロから「1日1回」にすることを目標にしましょう。

 100gの果物を大まかにお伝えするとキウイフルーツやみかんなら1個、ナシやリンゴで1/2個、いちごだと6粒程度です。1日の目標値、200gの果物を食べるには、「キウイフルーツ+みかん」「みかん+りんご」など、果物を組み合わせ、1日2、3回に分けて摂るのが現実的かと思います。

 ビタミンCは冷凍しても壊れにくいので、旬の時期、安い日に買って冷凍してストックしておくのもおすすめですよ。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。

吉谷 佳代
管理栄養士/公認スポーツ栄養士。江崎グリコ株式会社で健康食品開発や、スポーツサプリメントの研究開発に従事。その傍ら、多くのアスリート、学生スポーツ、ジュニアへの栄養指導、食育イベントに携わる。2013年に独立。以降、ジュニアからトップアスリートまで幅広い競技の選手に対し、栄養サポートを行う。現在、プロ野球・阪神タイガース、実業団女子バレーボール・JTマーヴェラスのチーム専属栄養士。過去には、シスメックス女子陸上競技部(2015〜2020年)、Bリーグ・西宮ストークス(2014〜2017年)、自転車ナショナルチーム(2013〜2018年)をはじめ多くのプロ選手やジュニア選手の栄養サポート実績を持つ。