中長期的な物価上昇率の水準の提示について、「インフレターゲットとは違い、ルールで縛りつけた政策運営をするわけではない」と語る福井俊彦総裁(撮影:宗宮隆浩)

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日銀の福井俊彦総裁は9日、東京都中央区日本橋の日銀本店で行われた金融政策決定会合の後、量的緩和政策の解除と新しい金融政策の導入について会見を行った。

 日銀は、新しい金融政策として、幅を持たせた物価上昇率の数値「中長期的な物価安定の理解」を提示。現時点での、望ましい中長期的な水準は0─2%程度との認識を示した。政策委員の意見の中心値は1%前後だったという。原則、上昇率は1年ごとに点検する。

 福井総裁はこの数値について、「いわゆるインフレターゲット(物価上昇率の目標値)とは違い、ルールベースの政策運営をするわけではない。透明性の確保と機動的な政策運営を両立できる枠組みを考えた」と、ルールで縛りつけるのではない、新しい政策概念だと説明した。

 3月解除に踏み切った理由は、満場一致ではなかったものの(賛成7人、反対1人、欠席1人)、会合で消費者物価指数などの解除条件が満たされたと判断されたことを挙げ、「判断に至った以上、直ちに実施するのが金融政策の常道。わざわざ次回まで持ち越すのは、確定要因を不確定要因として市場にハングオーバーすることになり、非常に無責任だ」と述べた。

 小泉純一郎首相が「デフレ脱却とはいえない」との見解を示すなど、政府に量的緩和策の解除に慎重な見方もあることについては、「首相も『デフレ脱却の兆しが見えてきた』と語るなど、表現の相違は別にすれば、経済情勢の見通しで政府と見解は一致している」と強調した。

 「極めて異例な政策」(福井総裁)と振り返る量的緩和政策の意義については、「デフレのリスクの糸を遮断する効果があった」と述べた。また、解除後の民間銀行の当座預金残高は、数カ月をめどに削減するとし、3月中は「30兆円前後で推移すると思っている」との見方を示した。【了】

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