岩渕の先制点が決まり、喜びに沸くなでしこたち。スコットランド相手に前半で早くも2点を先取し、勢いに乗っていた。 (C) Getty Images

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 フランスで開催中の女子ワールドカップのグループリーグ第2戦。初戦をアルゼンチン相手にドローとしていたなでしこジャパンは、スコットランドを2-1で下した。この結果に対して、開催国フランスのメディアからは、絶賛と苦言の両方が噴出している。

 当日の中継を担当したテレビ局『Canal+Sport』では、初戦アルゼンチン戦に続き、元選手のカンディス・プレヴォさんが解説を担当した。

 プレヴォさんは日本チームに詳しく、「立ち上がりから存在感を出していますね。ナデシコは試合を支配する力をもっています。テクニックがあり、果敢に動き、素早くプレーできるんです」と説明。

 やがて日本が試合を支配し始めると、「細かいショートパスをスピーディーにつなぐパスサッカーが日本のスタイルです。(大会)初ゴールさえ決めれば、解放されると思います」と予言する場面もあった。

 ただ、「かつて見せていたオートマティズムに比べると、まだ別モノとも感じられます」とも指摘しており、「スコットランドは初出場ですから、(スコットランドに)自信を与えてしまえば、一気に日本を圧倒する可能性もあります。今の試合展開では、ちょっと自信を与えてしまっていますね」と懸念も漏らしていた。

 そんな空気が変わったのは23分の岩渕のゴールだ。「やりました! 岩渕です! きましたねえ。日本に笑顔が出ました! いい仕事でした。美しいシュートです!」の声が、会場の「ニッポン、ニッポン!」の声援とともに響き渡った。

「フィジカルではスコットランドが強いと思いがちですが、いまのところ日本がデュエルに勝っていて、スコットランドは徐々に疲れ始めています」

「スガサワ(菅澤優衣香)がPKを獲得しましたが、2011年にはサキ(熊谷紗希)がPK戦の最後を決めたんです。ここはサキがいい気がしますが、スガサワも素晴らしい! 動揺ひとつ見せませんでした! 最初のゴールから、日本は解き放たれましたね!」

 後半もプレヴォさんの解説は詳しく、「日本は対戦相手のビデオ解析で素晴らしい仕事をします。きっとイングランドが相手の第3戦でもしっかり分析してきますよ」と続けた。スコットランドが最初の「反乱」を試みた際も、「スコットランドにとっては今しかない。でも日本はあっという間に鎮めてしまうんですけどね」と笑った。
 
 そしてその称賛は、選手交代時にも及んだ。

「ナデシコは本当に奥ゆかしい。ピッチを出るときはピッチを振り返って一礼します。この謙虚さは本当にすごいです。日本全体がそうなんですよ。福島の悲劇の後も、日本女子フットボールが喜びをもたらしたのです」

 終盤にスコットランドが「本格的な反乱」を起こし始め、実況のアナウンサーが「日本に疑念が出ていますかね」と訊ねた際もプレヴォさんは「ノン、疑念はもっていません。嵐が過ぎるのを待っているんです」と断言した。

 しかし、なでしこが88分にパスミスを発端に失点を喫する。この時はさすがに「完全にアシストですよ!」と叫び、ズルズル押された終盤戦況については「鮫島(彩)にもサキにも経験があるのだから、それを十分に発揮しないのは残念です。次のイングランド戦が見ものです」と苦言を呈した。

 事実、そんな熱を帯びた実況席に反して、スタジオでは意見が分かれていた。

 ハーフタイムにスタジオで解説を担当していた、OGのアリーヌ・リエラさんがコメントを求められると、「パスクオリティーもモビリティーもよく、日本は3−0で試合に決着をつけていてもおかしくなかった」となでしこジャパンを好意的に分析。

 だが、現役選手のシガ・タンディアさんは対照的に、「(日本が)世界王者になれるとは思えなかった。もっともスコットランドのアタッカーも、いいと聞いていたけどそうは見えなかった」と辛口で批評したのだ。

 試合終了後は「日本がここから本当に上っていくのか、そこが見もの。まだかなり丹念な仕上げが必要そうだ」の見解で一致していた。

 一夜明けた15日付全国紙『L’EQUIPE』はと言えば、「日本、辛うじて安堵」と、やはり厳しい見出しがついた。

 記事も真っ先に、日本の「2つの顔」を強調。

「リズムと支配で格上ぶりを見せた前半に対し、終盤は優位にあぐらをかいて眠り込み、スコットランドに反乱を許した。イングランド相手におそらくグループD首位を争うことになるが、日本女子が衰退していないことを示すには、少なくとも昨日の前半戦のレベルを発揮する必要があるだろう」

 失点に繋がった「市瀬(菜々)のプレゼント」ばかりか、「清水(梨沙)の疑惑のハンド」も見逃さずに記述し、採点で「7」の高採点を得たのは岩渕のみだった。

 とはいえ、スコットランド戦の中継前半には、実況アナから「やはりフットボール大国ですね!」の声も飛び出した。

 日本女子に厳しい目が注がれるのも、「大国」と見られているからだ。グループステージ第3戦、日本の「本当の顔」を見せる時がすぐそこまで来ている。

文●結城麻里
text by Marie YUUKI