寺社へ行った際に、引くことの多い「おみくじ」。「吉」「凶」といった結果や文言を確認した後、結んで帰るのが一般的な方法ですが、そもそも、おみくじはどうして「結ぶ」必要があるのでしょうか。また、結ばずにそのまま持ち帰ってもよいのでしょうか。

 オトナンサー編集部では今回、おみくじにまつわる知識について、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

神の意志を占う「くじ引き」が起源

 齊木さんによると、そもそも、日本の寺社仏閣で引くようなおみくじを発明したのは、平安時代の天台宗の僧、良源(りょうげん)とされています。天台宗の最高位だった良源が、国の祭政に関する重要事項や継続者を決める際、神の意志を占うために行った「くじ引き」がその起源だそうです。

 個人の運勢を占うものとして、おみくじが行われるようになったのは、鎌倉時代初期になってから。当時は自分でくじを用意するのが一般的で、高価だった「紙」の代わりに、木に赤い印をつける程度のものでした。また、戦国時代には戦の日取りや戦い方を決めるのにおみくじが使われていたそうです。

 その後、江戸時代初期に、徳川家康の側近であった天台宗の僧、天海大僧正が深く信仰していた良源から夢枕で信託を受けて、戸隠に隠された偈文(げもん)百枚を発見、その百枚に番号をつけたことから、今日のおみくじのスタイルが確立され、日本全国の寺社に広まったと言われています。

結ぶのは「凶」「大凶」などの場合

 おみくじを結ぶのは「凶」「大凶」など結果が芳しくない場合で、その理由は以下の3つです。

【悪い運気を境内にとどめてもらう】

 おみくじを結ぶことで悪い運気を境内にとどめてもらい、さらには、ご加護を願うという意味合いがあります。

【「結ぶ」という行為は神様と縁を「結ぶ」に通じている】

 生命力の強い木に結ぶことで、木に宿る神様と縁を結ぶことができ、運気が上昇すると考えられています。

【困難な行いを達成し「凶」を「吉」に転じる】

 普段の利き手と反対の手で結ぶという、困難なことを一つやりとげることで、凶が吉に転じるとされています。

 基本的な結び方は以下の通りです。

1.おみくじを縦長に四つ折りにする
2.結び所へかけて1回結ぶ
3.結び目の中心に両端を挟み込んで完了

「近年、木に結ぶと木の生育が悪くなるため『結び所』を設ける寺社が多くなっています。寺社のルールをしっかり守り、神様にお祈りをしながら結びましょう」(齊木さん)

「吉」「大吉」も結んで構わない

 それでは、良い結果である「吉」「大吉」などの場合は結ばないのでしょうか。

 縁起の良い吉や大凶は、持ち帰る人も多いはずですが「結んではいけないという決まりはありません。『結ぶ』行為は神様とご縁を『結ぶ』こと。お願いがしっかりと結ばれるように、との気持ちを込めて結ぶのもよいでしょう」。

 また、縁起物であるくじを一度持ち帰り、数日後に結ぶことも。その場合は以下のことに注意します。

おみくじを粗末に扱ってはならない】

 おみくじはお札やお守りと同じように、神々の魂が込められていると言われます。ゴミ箱に捨てることも当然厳禁です。

【いつか必ず寺社へ返納する意識を持つ】

 お財布などに入れて大切に持ち歩くようにします。返納期間に決まりはありませんが、半紙に包んで納める場所にそっと返すのが作法です。その際も、これまでの感謝の気持ちを込めて返納するとよいでしょう。

【結ぶ場所がない寺社で「凶」などの場合】 

 むやみに扱うのではなく、基本的に持ち帰りましょう。おみくじは、いわば「神様からのアドバイス」であり、良い方向に努力するための身の処し方を考えるための材料です。「凶」などで手元に置いておきたくない場合、近くの寺社でも構わないので、返納または「お炊き上げ」をしてもらう方法があります。

おみくじには、『結び所』に結ばなければならない、持ち帰らなくてはならないというルールは必ずしもありません。大切なのは、吉凶にかかわらず、その内容を今後の生活の指針とすること。出雲大社のように『吉凶』がなくメッセージのみ書かれている場合もあります。神様からのメッセージと受け止め、いさめとして持ち歩くもよし、寺社にとどめるもよし。大切なのはメッセージに対する自分の姿勢なのです」

(オトナンサー編集部)