闘莉王が称賛する二人の天才 中村俊輔と小野伸二の違いはどこにあるのか?

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豪快ミドル弾の中村に敬意 「短期間でジュビロが100%俊輔さんのチームになった」

 ジュビロ磐田の元日本代表MF中村俊輔は、22日の敵地・鹿島アントラーズ戦で鮮やかなミドルシュートを決めた。

 J1通算70ゴール目となる一撃を決めた38歳のファンタジスタは、横浜F・マリノスから移籍して1年目で健在ぶりを示しているが、日本サッカー界において、その天才性は唯一無二だと証言する男がいる。

「これまでいろいろな選手を見てきたけれど、一番の天才は俊輔さん。自分は中田(英寿)さんとプレーしたことはないけれど、俊輔さんは本当の天才。個人的には、日本では一番の選手だと思う。誰も真似ができない」

 こう語ったのは今季からJ2の京都サンガF.C.でプレーする、元日本代表DF田中マルクス闘莉王だ。今季リーグ戦5試合5得点とDF登録ながらゴールを量産している闘将は、イビチャ・オシム監督、そして岡田武史監督が率いた日本代表で共闘した背番号10に敬意を示している。

「あの人の凄さは磐田の試合を見れば分かる。これだけの短期間で、ジュビロが100%俊輔さんのチームになっている。それが凄い。誰もが認めざるを得ない力を持っているからこそ、なせる業でしょう」

闘莉王も羨む中村が持つ天賦の才

 代表でチームメートとして共闘した一方、J1では昨季まで名古屋グランパスの一員として、横浜FMの中村と対峙してきた。22日の鹿島戦で決めた強烈なミドルシュートについては、こう語っている。

「突き刺したね。あの人はボールが当たった瞬間、シュートが入るかどうか分かると言っていた。あれは誰も止められない」

 中村はシュートを放つとボールの軌道の結末を見届ける前に、ベンチに向かって喜びながらダッシュしていた。インパクトした瞬間にゴールを確信できるのも、レフティーならではだという。

「人間には生まれつき才能を持っている人がいる。俊輔さんはそうだね。自分には才能はない。ただ一つあるとすれば、あの人にできて、なんで自分にはできないんだという負けず嫌いな部分、向上心という部分かな。でも、どうしても真似できないものもある。あの左足や閃きの部分。それが俊輔さんのプレー」

 “超攻撃的DF”の異名を持つ闘莉王もまた、万能性を武器にしている。最終ラインでは空中戦などの強さのみならず、アメリカンフットボールのクォーターバックのようなタッチダウンパスを前線のターゲットに通す。ドリブル突破も強烈だ。現在は京都でFWとしてゴールを量産しているが、中村のプレーは模倣できないものだという。

今も忘れられない1本のロングボール

 闘莉王には、今でも忘れられないエピソードがある。

「横浜国際でやった代表戦かな。自分のアシストで(大久保)嘉人がゴールを決めたシーンがあったけれど、翌日のミーティングで岡田さんに『なんであそこに走っていたんだ?』と驚かれた。あの時、俊輔さんがボールを持っていた。あの人が走れば出てくるという確信があった」

 闘莉王がこう振り返ったのは2008年6月2 日、南アフリカ・ワールドカップのアジア3次予選オマーン戦(3-0)で、当時の岡田武史監督も驚愕したワンプレーは生まれた。

 前半22分、中盤からのロングボールに走り込んだのは、最終ラインにいるはずの背番号4だった。相手マーカーとのヘディングでの競り合いに勝ち、フリーで走り込んできた大久保に完璧なボールを落とすと、これを右足でゴール左隅に決めた。

 このシーンで前線に走り込んだ闘莉王の最高到達点に、柔らかいロングボールを入れたのは中村の左足だった。FWのようなアシストを決めた闘莉王はゴール直後、大久保ではなく中村に走り寄った。自陣右サイドのタッチライン際から正確なクロスを放った10番もまた、両手で自分の両目を指差してから闘将と抱き合った。

 その時「見ていたよ」と中村は闘莉王に語ったそうだが、あの場面であのロングパスを通すイメージは、誰もが見える光景ではないという。「あの人はピッチ全体で、今何が起きているのか見えているのだろうね」と闘莉王は、その豊かな才能に脱帽する。

小野の魅せる技術も唯一無二

 そして現在コンサドーレ札幌でプレーする小野もまた、日本サッカー界が誇る天才の一人だと闘莉王は認めている。浦和レッズと2004年のアテネ五輪代表で共闘し、今でも親交は厚い。中村自身も小野を天才と認めているが、二人の天才性には違いがあるという。

「どちらも天才でしょう。伸二さんの場合は足技やトラップが凄い。魅せるという部分で抜群で、あれも真似できるものではない。怪我がなければ、どうなっていたか分からないよね。でも、ゴールに関わる部分、勝負を左右するという試合における影響力という部分では、俊輔さんが上かな」

 かつて移籍1年目にフェイエノールトでUEFA杯(現UEFAヨーロッパリーグ)優勝の偉業を成し遂げた小野は、“ベルベット”と呼ばれるほどの受け手に優しいパスを披露。観衆のみならず、マーカーを幻惑する華麗なプレーの数々は、サッカーの魅力を体現している。1999年のシドニー五輪アジア1次予選のフィリピン戦で左膝靱帯断裂の重傷を負って以降、そのキャリアは故障との戦いとなったが、その天才性もまた真似ができないものだと、闘莉王は称賛した。

 だが、一撃必殺の直接FKのみならず、クロス、スルーパスというフィニッシュに直結する技術、試合を決める能力では中村に軍配が上がるという。

 百戦錬磨の闘莉王が認める中村と小野は、4月30日にヤマハスタジアムで行われる磐田と札幌の一戦で再び相まみえる。日本サッカー界を牽引してきた二人の天才は、どんなプレーでスタジアムを魅了してくれるのだろうか。

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

【動画】YouTubeのJリーグ公式チャンネルで公開された小野伸二の今季初ゴール

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 YouTubeのJリーグ公式チャンネルで公開された小野伸二の今季初ゴール

 

【動画】YouTubeのJリーグ公式チャンネルで公開された中村俊輔の鹿島戦ミドル弾

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 YouTubeのJリーグ公式チャンネルで公開された中村俊輔の鹿島戦ミドル弾