Dバックス・ホール球団社長(右)、ゴンザレス社長付補佐【写真:編集部】

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日本への愛を語るホール球団社長「日本をすごく身近に感じています」

 ダイヤモンドバックスのデリック・ホール球団社長は、Full-Countへの単独インタビューの中で、将来的にポスティングでのメジャー挑戦が固まった際、日本ハムの大谷翔平投手、広島の前田健太投手の両エース獲得に乗り出す方針を明らかにした。日本人投手獲得を熱望する背景には、全米を席巻した伝説のトルネードの存在があるという。

 ホール球団社長は、米国野球殿堂入りを果たしたランディ・ジョンソン社長付補佐、2004年のワールドシリーズ制覇に貢献した強打者、ルイス・ゴンザレス社長付補佐とともに来日。宮城県・石巻では、東日本大震災の被災地支援に向けたチャリティー活動の一環で、子供向けの野球クリニックを行った。

 その一方で、ヤフオクドーム、マツダスタジアム、QVCマリン、東京ドームで日本プロ野球のスカウティングを展開。ダイヤモンドバックスの日本でのブランディングに力を入れている。

「私は過去7、8度、日本に来ています。そのことで、ダイヤモンドバックスがいかに日本を愛しているのか、それを分かっていただけると思います。私自身も大好きです。一番訪問したい国なんです。東京は世界で一番気に入っている都市です。皆さんすごく親切ですし、もてなしに関しては比類ないのではないでしょうか。私自身、日本をすごく身近に感じています。そして、球団も同じです」

 ホール球団社長は2012年8月にも来日。被災地の石巻市を訪問した。当時ダイヤモンドバックスに所属し、今季限りで現役引退する楽天の斎藤隆投手とともに、地元の人々と交流を育んだ。日本に対する温かい視線、そして、日本人選手獲得に力を注ぐ根源には、あるスーパースターとの交流があるという。

「ノモさんはその当時、マイケル・ジョーダンよりも人気があった」

「現在、日本人選手は在籍していませんが、それでも日本の被災地復興などのチャリティでお役に立ちたいと考えているのです。特別な気持ちで、日本と向き合いたいと考えています。なぜなら、我々には日本とこの国の人々とこの国の野球に対する敬意があるのです。

 私はかつてドジャースで広報部長でした。ヒデオ・ノモさんの仕事の関係で、初めて日本に来ました。会見にもいつも同席していましたね。今でもノモさんとも仲良くしています。今でも連絡を取っていますよ。今回は日程的に入れ違いで会うことができませんでした。でも、ノモさんに選手の情報をもらうということはありません。友情という部分でのお付き合いです。しばらく会っていないので、久しぶりに会いたいのですが」

 独特なトルネード投法でMLBを席巻した野茂英雄氏との交流が、日本への愛の源流に横たわっているという。ドジャースで1995〜98年、2002〜04年と2度に渡り活躍した野茂氏を、ホール球団社長は広報として支えていた。

「日本の最高のタレントを獲得したい。それが私の大きな夢なのです。私にはこれまでの歴史があります。ノモさんは特別ですね。私の生涯で一番のお気に入りの選手です。5日ごとにドジャースタジアムは満員になるのです。カメラのフラッシュがスタジアム中に瞬きます。メディアも彼を追いかけました。ものすごいパワーをもたらしたのです。

 1年目には新人王を獲得しました。どの町に行っても、誰もがノモさんを見たいとスタジアムにやってきます。私はヒデオ・ノモがLAの球団にもたらしたインパクトというものを未だに覚えています。彼が先発する試合は朝8時からストリートが盛り上がる。ノモさんはその当時、マイケル・ジョーダンよりも人気があったのです。本当です。アメリカでは凄まじい人気でしたね。私はその熱気を是非とも再現したい。私にはその体験があるのです」

黒田、和田、田中の獲得にも動いたDバックス

 バスケットボールの「神様」で、当時NBAシカゴ・ブルズのスーパースターだったジョーダン氏よりも、野茂氏のアメリカでの人気は絶大だったと振り返る。そして、野茂フィーバーの成功体験が日本への愛情と日本人獲得への熱意につながっている。2012年に斎藤隆投手を獲得したDバックスは、かつて日本人投手獲得に何度も動いたという。

「我々は黒田さんも獲得しようとしたんですよ。彼がフリーエージェントになった5シーズン前ですね。黒田が欲しかった。我々はその時、獲得まであと少しだったと思います」

 2011年オフにドジャースからFAとなり、ヤンキースに移籍した黒田博樹投手(現広島)の獲得にダイヤモンドバックスは動いた。現カブスの和田毅投手獲得も検討。そして、2014年シーズン開幕前にはヤンキースの田中将大投手の争奪戦にも参戦している。

「我々は猛プッシュしました。なぜなら彼はインパクトをもたらす投手だと評価したからです。我々のチームで貢献できる選手だと信じて、攻勢をかけました。我々はギリギリの選択肢に残っていたと、人づてに聞きました。ヤンキースの次です。我々がいかにアグレッシブだったかというのはオファー内容でも分かると思いますけど、ダイヤモンドバックスがいかに日本を愛しているのか、をとにかく伝えようとしました」

 黒田、田中の争奪戦で、圧倒的な資金力を誇るヤンキースに2度挑み、惜しくも敗れた。しかし、ホール球団社長は「インパクトのある日本人選手をロースターに加えること。それが我々の夢なんです」と語る。近い将来に起こるであろう前田、そして、大谷の争奪戦を制することで、その悲願を実現するつもりだ。