韓国MERSの政府対応を問題視する声も

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 韓国で拡大する中東呼吸器症候群(MERS)コロナウィルス。現在、その政府対応がいろいろと問題視されているが、個人的には、この状況はおよそ10年前に起こったSARS問題と非常に近い感覚を覚えている。そして、韓国政府がその対応を見誤ると、経済的被害は、SARSで受けた香港経済以上のダメージを伴うと予想するが、果たして、今の韓国政府には一体どこまでのイメージがついているのだろうか。

 やはり、こういう緊急事態に陥った時、その最初の障害にもなるのが、「面子」という、体裁上の問題だ。これは、311の震災時における東京電力にも少し近いことが言えるのかもしれないが、「面子」という自己保身に囚われると、本来、最優先させなければならない喫緊の課題が疎かになり、結果として状況を悪化させるということがよくある。

 私はSARS問題が起こった時、香港に滞在していたが、当時の中国政府の対応はかなり杜撰なものだった。例えば、現地メディアの報道では、当時、中国政府が発表した感染者数に疑いの目を向けたWHOが上海の病院施設を訪れようとした時、それを事前に察知した病院側が、感染の疑いのあった患者を緊急車両に割り当てて、査察の間だけ車両を走らせて、その数をごまかそうとして非難を浴びたことがあった。

 当然、中国政府は感染者数の大幅情報上方修正を余儀なくされた訳だが、やはり、ここでも「面子」というものが、事の問題を肥大化させてしまっている。韓国の場合、その「面子」に対するこだわりは下手をすると中国以上にも及ぶと考えると、このMERSはとんでもない事態を引き起こす可能性は決して否定出来ないだろう。

 しかも、一部のメディアは、現在進行している感染拡大の懸念以前に、自国への観光産業に対する危機感を募らせ、あろうことか、ここでも日本に対する敵対心を煽るものまで存在している。まさに「面子」の問題だ。

 個人レベルでも、感染の疑いがありながらも、嘘をついてまでも国外に渡り、中国をはじめ、感染の拡大を促しているというから、事態は深刻さを増すばかりである。もちろん、こうした話のどこまでが本当なのかは分からないが、結局は、屹然とした対応が遅れれば遅れるほど、流言飛語にも似た風評が先走り、観光を始めとした二次、三次被害へと拡大するのだ。しかし、今の韓国政府にはそこまでの判断を見ることはできない。

 結局、SARSの場合、喧騒慌ただしい香港の町中から人の姿が消え去り、当時、馴染みの飲食店はことごとく閉店に追い込まれた。連日、失業率の上昇が新聞誌面を賑わせ、観光客どころか、出張のサラリーマンすら立ち寄らなくなってしまった。しかし、香港経済は、本土マネーを積極的に招致することによって、この難局を打開することができたが、それはそれで、当時の香港においては、ある意味、不幸中の幸いといったところだろう。

 しかし、正直に言って、今の韓国にはそれに代わるものがない。しかも、韓国経済は輸出依存が非常に高く、その中心はグローバル・ビジネスで成り立っている点は、まさに香港と同じ構造を持っているのだ。それだけに世界から交流を阻まれるような懸念を与えれば、そのダメージは想像以上に深刻になるのは明らかだろう。そうならないためにも、韓国政府には、一定の自制心を持って冷静に臨んでもらいたいところなのだが、果たしてどうだろうか。

著者プロフィール

一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター

東條英利

日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。

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