清武 5 相手ボール時はチームに貢献した。穴を作らず勤勉なプレイに終始したが、マイボール時はサッパリ。存在感を発揮することができなかった。何をしていいのか分からなかったというべきかも知れない。自分がボールを持っている時と持っていないときに差のある選手。どちらかといえば持っていない時の動きの質に問題を抱えるタイプだったが、この日はボールを持っても、存在感を発揮できなかった。得点への期待もゼロに近かった。さらなるレベルアップが望まれる。

香川 5.5 劇的な決勝ゴールは決めたが、それ以外では特別な選手には見えなかった。清武同様、基本的にはボールを持ってなんぼのタイプ。しかしこの日は、ボールを持っても期待感を抱けないプレイに終始した。思い出すのは11年前。同じスタジアムでフランスに0―5で敗れた試合での中田英だ。彼はそれでも孤軍奮闘した。当時のフランスは、現在のフランスより3割増ぐらい強かった。試合内容ももっと一方的だった。だが中田英は孤軍奮闘。ミドルシュート、ロングシュートを枠内に蹴り込み、見せ場を作った。中田英にあって香川に決定的に足りないのは、ずばりシュート力。それが目立った試合だ。プレミアで成功するためにも、これは必要不可欠な技術。フランス戦は香川のパンチ力不足が目立った試合といってもいい。

ハーフナ― 4.5 何もできなかった。これは彼だけの責任ではないが、力不足が目立った。本田をこのポジションで0トップ気味に使った方が、相手には数段脅威だと思う。

※ 交替選手
細貝 6 馬力溢れるプレイは目をひいた。

乾 5.5 スピードは目を引いたが、スペースのある中でのプレイだったので、評価は難しい。ザッケローニには、ドイツで好調な彼を、先発、せめて後半の頭ぐらいから起用して欲しかった。

高橋 ― 彼には本田不在時に露呈するサイドへの展開力がある。従来の日本式パス回しに陥っていたこの日のような試合ではもっと早く投入すべきだと思う。

内田 ― 所属チームで内田より出場機会に恵まれない酒井宏が先発したという現実は内田にとってショックだろう。余計なお世話かもしれないが、内田とは何か。自身の存在感をどうすればアピールできるかをこの際、考えるべきだろう。

※ザッケローニ 5 相変わらずメンバー交替のタイミングが遅い。相手のデシャン監督は、スペインとの大一番が迫っていることもあり、試合の流れに拘わらず交替枠一杯の6人を、次々に起用した。その結果、穴を作ることになり敗れた。ザッケローニは、そこを突く作戦に出て勝利を掴んだ。日本戦がコンディション調整を兼ねた試合であることはミエミエだった。一方のザッケローニは大真面目。結果に拘るサッカーをした。勝利こそ一番の良薬との考えに基づいたのだろうが、本当にそうだろうか。かつてならそうだったかもしれない。弱かった頃の日本なら、この勝利はまさに「歴史的な勝利」に値したが、現在の日本に求められているのは、次回も勝てる、あるいは好勝負を演じることができるという確信だ。それが掴めたとは僕には思えない。日本も、翌火曜日にはブラジル戦を控えている。多くの選手を使い、それによって穴を突かれ、試合に敗れてもショックは少ないのだ。

日本のレベルは上がっている。さらに言えば、現在のフランスは、ベストメンバーが揃っても、たいしたことはない。かつてのフランスを10とすれば。現在のフランスは7程度だ。そのフランスが、コンディション調整を兼ね、少し手を抜いて戦ってきたなら、日本は内容的にもっといい試合をする必要がある。結果に拘りベストメンバーを長々と引っ張ったならば。

この勝利は、けっして重くはない。フランスに「歴史的な敗戦」を食らったショックはない。「最悪でも引き分け。これが理想だった」とはデシャンの試合後のコメント。そうした意味で彼は「ショックだ」と言ったのだ。

喜びすぎは、弱者丸出しの行為だと思う。いまの日本は、一般的な日本人が思っているほど弱くない。もっとできるはずなのだ。親善試合にも、それに相応しいたしなみをもって望む必要を強く感じた一戦。

次戦のブラジル戦にも、同じことは言える。ブラジルはかつてほど強くない。2002年の頃を10とすれば現在は7。ガチで戦っても、かつてのように0―3や1―4で負けることはない。ザッケローニに望みたいことは、自信と余裕を持った采配だ。親善試合のたしなみを忘れた采配で、結果を掴んでも得るものは少ない。僕はそう思う。