両チーム最多、7本のシュートを放った常盤木高・京川舞(中)。しかしゴールならず。ポストに当たるなどツキもなかった
 国内女子サッカー、なでしこリーグは東日本大震災の影響により開幕を延期し、今月末からのスタートを予定しているが、これに先立ち、なでしこリーグ2部に当たるチャレンジリーグは10日開幕した。

 ゆめりあ球技場(静岡県磐田市)では2試合が行われ、震災によりホームゲームの会場変更を余儀なくされ、遠く静岡県で開幕を迎えた常盤木学園高(宮城県仙台市)は、スフィーダ世田谷に0−3で敗れた。

 もう1試合、静産大磐田ボニータは、アギラス神戸に9−0で快勝した。

 昨季、チャレンジリーグEASTを制し、全日本選手権では強豪のクラブチーム、日テレベレーザを倒し、ベスト4まで進んだ常盤木。年代別の日本代表選手もいる。対してスフィーダ世田谷は今シーズン昇格したばかり。

 常盤木が優勢に試合を進めるかと思われたが、序盤から全体の動きが悪い。トラップミス、パスミスが目立ち、ボールが持てない。エースFWでU-19日本代表の京川舞(18)にもボールが入らず、世田谷に試合の主導権を握られてしまう。

 36分、ペナルティエリア内でDFのハンドを取られPK。先取点を取られ、劣勢の時間帯が続く。それでも徐々に動きは良くなり、京川のドリブルや縦に早い攻撃も見られ、惜しいシュートも放つ。

 前半は0-1。ハーフタイムのロッカー。常盤木・阿部由晴監督は「普通のサッカーをすれば勝てる」と選手たちに話したと言う。しかし、後半もシュートが何度もポストに当たるなど、ツキもなく点を取ることができない。後半はボールを持ち、攻撃を仕掛ける時間帯が増えたが、まだ、プレイ全体に昨季のような落ち着きが感じられない。

 52分、クリアミスから失点。63分、DFの連携ミスから失点。結局、世田谷を上回る17本のシュートを放ちながら無得点。0−3で開幕戦を落とした。

 阿部監督は試合後「普通にできなかったねぇ…。ツキがなかったのもあったが焦っていた。昨季からメンバーも替わり、世間が認めるほどの強さがあるわけではない」と話した。
 
■プレナスチャレンジリーグEAST第1節
常盤木学園高等学校 0−3 スフィーダ世田谷FC
 得点(世田谷)田中36' 福原52' 永田63'

■プレナスチャレンジリーグWEST第1節
静岡産業大学磐田ボニータ 9−0 アギラス神戸
 得点(静産大)河原崎15',59' 平野17',70',90' 寺田23' 西山57' 西ヶ谷64' 白井72'


 「日本のサッカーの力を信じている。みんな仲間だ」と書かれた横断幕が、春の強い風になびく。両チーム旗、リーグ旗、そしてFIFAフェアプレイ旗が半旗として掲げられている。スタンドには、選手とともに仙台からやってきた応援団が陣取り、「がんばろう!東北」のメッセージボードも見つけることができる。

 静産大磐田ボニータ代表が、試合を開催できない東北の仲間を代替地として受け入れたことを説明、彼女たちにエールを送った。その後、黙とうが捧げられ試合開始。いつもとは違う雰囲気の中、ホイッスルが吹かれ、今シーズンのリーグが始まった。

 トップリーグのなでしこLは今月末まで試合をキャンセルしているが、チャレンジLは予定通りの開幕。しかし、常盤木高、JFAアカデミー(AC)福島(福島県楢葉町)2チームの状況は良くなく、AC福島の試合は代替日程、会場未定のまま延期、常盤木高も静岡県にまで遠征してのホームゲームとなった。

 阿部監督は「学校がまだ始まっていないので午後から練習はしている。グランドは大丈夫だが、照明装置が余震でまた壊れてしまった」と言う。その後、考えが甘い、相手をなめていたと試合の敗因について厳しく語ったが、「不安を抱えている子はいると思う。集中しているかと問えば、皆、できていますと答えるが…」とも話す。親類、友人、知人を亡くした選手もいるという。家や住んでいる街が変わってしまった中、眠れぬ夜も少なくはないだろう。

 今季の目標は?と聞かれ、阿部監督は「本当は考えなくてはいけないが…」と言い、「(こんな状況だが)学生なので勉強に、そして部活動に励まなくてはいけない。選手たちはサッカーに」とも話した。

 5月には宮城県での試合開催も可能になるようだが、リーグの公式日程には「未定」の文字が並び、ホームゲームの開催は決まっていない。常盤木学園高の次戦は23日。AC長野パルセイロレディース戦、長野県長野市においてである。

(取材・文=小崎仁久)