まずはご報告から。
今月26日に、NHKのBSで放送される「新BSディベート」という番組に出演します。
内容はもちろんサッカーの話。「W杯サッカー 日本はどう戦うのか」についての討論です。
出席者はトルシエさん、加茂周さん、山本浩さん、それから後藤健生さん。
オシムさんもビデオ出演する予定だそうです。
皆さん、是非気にとめておいてください。
どんな展開になるのか、僕自身も楽しみです。

というわけで、今回は討論のお話。

何を隠そう僕は、サッカーほど、討論向きのスポーツも珍しいと思っている。
それこそがサッカーの最大の魅力だとさえ思う。
喋るという人間の本能的な行為に、サッカーの本質が絶妙にマッチしているのだ。
喋らずにはいられない。意見を述べずにはいられない。
サッカーを観た後はそうした衝動に駆られる。
サッカーがなくなったら、地球上の会話の総数は、何パーセントかダウンすることは間違いない。

言論の自由の象徴と言ってもいいだろう。
上司や奥さんにはダメでも、サッカーには自由に意見が言える。
サッカーが世界ナンバーワンスポーツに君臨する所以だ。

ところがその魅力が、日本には十分に伝えられているとは言い難いのだ。
サッカーの魅力を伝えるべきメディアに、何よりその姿勢が乏しい。
常に誰かの顔色を窺っているような、情けない態度が随所に見て取れる。

日本人の議論下手も輪をかけていると思う。
人を目の前にすると、違う意見を述べることにハードルの高さを感じてしまう。
言うべきか、言わぬべきか、悩みつつも結局、言わない。
そうした人が圧倒的多数を占める。

僕のような人は少数派なわけだが、僕は言いたい。
たかがサッカーじゃないですか、と。
政治を語るわけではないのだ。そこに人の生き死には関わっていないのだ。

一言でいえば、エンターテインメント。
エンターテインメントという、ある意味で馬鹿馬鹿しい話に対し、真面目なふりを装いながらアーだ、コーだ言っているわけだ。
オシムの言葉を借りれば「趣味」を語ることと同じだとなる。

もし日本代表が来年のワールドカップで3連敗しても、会長サンがぺこりと頭を下げ、ごめんなさいすれば、すんでしまう話なのだ。
麻生サンがごめんなさいするのとワケが違う。

だが、サッカーファンは概して生真面目だ。
エンターテインメントと関わっている意識を持つ人は多くない。
「たかがサッカーじゃないですか」は通じにくいのだ。
「たかが」と「されど」の関係で言えば、「されど」の方が大きく勝っている人が多い。
サッカーをずいぶん高貴なものとして捉えている。

もちろん僕にも「されど」の気持ちはないわけではないが、それが強くなりすぎると、自由な空気が失われる。
重たい話になっていく。
サッカーに魅力は失われていく。

ところが、インターネット上の書き込みでは、その反対の現象が起きている。
自由すぎる声が、大手をふるって歩いている。違う意見を述べることにハードルが存在しないかのようだ。
人を目の前にしたときには言えないことが、ネット上なら言えてしまう。
そこに僕 は、健康的な匂いを感じないのだ。

自分の意見を人を目の前で、いかにきちんと伝えられるか。
討論にはある意味でのスリルがある。
それを楽しめるか否か。
サッカーが面白いものになるか否かも、その点に掛かっていると思う。
日本のサッカーはそうした意味で、まだまだ面白くない。
僕はそう思う。



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