「地味に積み立てをする」と、投資は負けにくい(写真:kikuo/PIXTA)

これまで「お金持ちになったサラリーマン」に共通する3つのこととして、「給与天引きを利用する」「会社の制度をできるかぎり利用する」「継続的に投資をする」を挙げました。特に前回の記事「20代若手社員が億万長者になる地味な投資法」では、「自分が勤務している会社以外の株式に投資することはリスク分散にもなる」ということについてお話ししました。

なぜ投資は「一度にまとめて」しないほうがいいのか

今回お話しするのは「継続的に」という部分です。つまり「一度にまとめて投資をする」のではなく、「積み立て」による投資は、さらにリスクの分散が図れるうえに、普通のサラリーマンが仕事しながら投資するのに最適な手段だということを詳しくお話ししたいと思います。特に20代の若手社員にはぜひ実践していただきたいのです。

投資というと、「ボーナスなどで少し大きな資金がたまったらまとめて始める」「貯蓄は若いうちからコツコツ少額で積み立てる」、というイメージを持っている方がどうも多いようです。しかし実は逆なのです。資産形成するための投資こそ小額でコツコツ積み立てながらやったほうがいいし、貯蓄は資金があるのであればまとめてドンと預けたほうがよいのです。

なぜなら投資は、価格変動のリスクがあるからです。株式にせよ投資信託にせよ、売買によって利益を出すには、安く買って高く売ることが必要です。では、どうやって安く買えばいいかというと、これがなかなか難しいのです。「今買うのが安いのかどうか」「将来は値上がりするかどうか」、いずれも将来になってみないと結果はでないことですから、考えだしたらなかなか買えません。

特に、人間は価格が上がってくると、なるべく損をしたくない気持ちから「もう少し下がったら買おう」と考えがちです。そんなときに限って下がるどころかまだ上がり続け、「あのとき買っておけばよかった」ということになります。反対に、下がりだすと「もっと下がって安く買えるかもしれない」と考えることから「もう少し待とう」となります。

非常に安いときというのは、悪いニュースや情報が出てみんなが投げ売りして大幅に下がっているときであるとか、その成長性が世間にまだ認められていない状態のときであることが多いのです。そういうときにごく普通の人はなかなか買えるものではありません。ましてや大きな金額であればあるほど、慎重にならざるをえません。

時間を味方につけて、リスクを分散させる

したがって、難しいタイミングで購入するのではなく、少額で定時定額、機械的に買っていく「積み立て投資」という方法が少なくとも初心者にはいちばん効率的で現実的です。いちいち今が買い場か悩む必要がありませんし、定額で買っていけば、価格が高いときは少なくしか買わず、安いときには多く買えるので、多くの場合、買い付けコストが抑えられます。売るときは、価格を見て注文を出すわけですから、その平均買い付けコスト以上で売却すれば利益は出ます(本当に自信があるなら、もちろん個別の銘柄を買うという選択肢もあります)。

時間を分散することによるリスク低減効果が発揮されるには、価格が上下する波が何度も繰り返されるだけの期間、長く買い付けを継続する必要があります。その都度、タイミングよく売買を行うことは事実上とても困難です。その意味でも「手間がかからない」「思い悩むストレスがない」「天引きや自動引き落としで最初からなかったものとして日々の生活ができる」、少額での積み立て投資が現実的で効果的な方法です。

天引きでの「積み立て投資」というと、上場会社に勤務している人は「従業員持ち株会」がまずは頭に浮かぶと思います。奨励金もたとえば10%などと現状の金利情勢ではびっくりするほど高いケースもあります。ただし、これは会社が社員の皆さんに安定株主の一員になってもらうこと、株価を意識した仕事ぶりに期待しているからです。単なる資産形成支援ではありません。ですから、ご利用になる場合は前回お話ししたように、「集中投資」であるということをよくわきまえてほどほどに、というのが私からのアドバイスです。

リスク分散を図る投資の対象としては自社以外の株式への投資、勤務先とは違う業種または経営に及ぼす要因が逆に影響するような会社の株式はもちろんですが、もっと多くの会社、数百社といった会社の株式に広く投資をし、それらの会社の成長、つまりその経済全体の成長を取り込むことができるのが「投資信託」です。

投資は必ず「将来の自分」を大きくしてくれる

投資信託という仕組みを使えば、最低1000円程度、あるいはもっと少額から、数千社にだって投資することができます。もちろん、少額のため議決権は行使できませんが、投資した会社の業績が向上し、価格が上がればそれを享受することができます。

残念ながら、中には下落する株もあるでしょう。しかし、投資先全体としてよければ、投資信託の価格は値上がりします。「確定拠出年金」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」で主流のインデックス型の投資信託は、まさしく世界経済や日本経済の成長を資産に取り込む金融商品です。これを毎月「積み立て」で継続的に買っていくことは、投資時期的にも投資対象としても、リスク分散が図られます。

自分の能力で収入を得ることは何より大切なことです。しかし、投資によってその依存先を分散することができるからこそ、サラリーマンの「投資」は意味があります。また、自分が資金を投じていることで、特定の業種・地域以外の経済・政治事情にも関心が高まり、その大局的な見方、磨かれた経済センスが自らの仕事に活きる場面も多くなると思われます。

収入依存先を分散する意味でも、幅広い銘柄に長期に分散投資を少額で継続していくことは、実は多くのサラリーマンにとって資産形成のへ近道です。次回は、初めての「売り」体験における「あるある投資」をご紹介したいと思います。