浦和レッズの「圧巻コレオ」実現の舞台裏とは【写真:Getty Images】

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ACL決勝第2戦でスタンドに広がった“出色の作品”に西川も感動「あれは鳥肌もの」

 J1リーグの浦和レッズは、サッカーのクラブ世界一を決めるFIFAクラブワールドカップ(W杯)に参戦。浦和と言えば、サポーターが織りなす華麗かつ壮大なコレオグラフィーがスタンドを彩ってきた。クラブを象徴する要素の一つと言っても過言はないが、その出色の“作品”を完成させるための舞台裏とは――。

 浦和は11月25日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝、アル・アハリ(サウジアラビア)との第2戦に1-0で勝利。2戦合計スコア2-1で、10年ぶり2度目のアジア王者に輝いた。決戦の会場となった埼玉スタジアムには、試合直前に選手の士気を一層高める感動的なビジュアルが広がった。

 バックスタンドにクラブのエンブレムとACL優勝トロフィーをデザイン。両ゴール裏には前回の優勝を意味する2007(年)の文字と星印、そして今回の優勝を願う2017(年)の文字と星印をあしらい、メインスタンドも一体となってこれがうねるリボンで結ばれていた。

 カラーシートを掲げる“演出者”の観客はもちろんこの光景を目にすることはできないが、眺望した人々は感嘆し、目が点になった。見慣れているはずの選手もこれには驚き、大会最優秀選手に選ばれたMF柏木陽介は「あまりに凄いので鳥肌が立った。準備してくれた人は大変だったと思う」と話し、日本代表GK西川周作も「予想をはるかに上回っていた。あれは鳥肌ものです」と司令塔に続いて感動の言葉を述べた。

 過去にも海外メディアから世界の筋金入りのサポータートップ5に選ばれ、圧巻のコレオグラフィーと絶賛されている。

ACL決勝のコレオは準備に3日…有志が自然と集い、清掃・設置作業に奔走

 このビジュアルは、スタンド四方に及ぶ大掛かりなものとあり、準備に3日を費やした。

 前回、コレオグラフィーを演出したのが今年10月22日に行われたJ1第30節のガンバ大阪戦だったが、当日は雨が降ったため、シートが汚れてしまった。そこで決戦3日前には300人あまりの有志が埼玉スタジアムに集まり、タオルで1枚1枚を清掃する作業に追われた。

 SNSなどで“求人募集”することはない。「レッズに関わりのない人が、面白半分でやって来る恐れもありますから、仲間だけでやりたい。絆だけで広めるのが自分たちの方針です」と有志の1人は熱く語る。

 試合前日は午後9時半に集合し、座席ごとに置くシートの色を最終確認。基本はクラブカラーの赤、白、黒だが、今回はエンブレムの中にあしらわれたボールが黄色のため、計4色を用意した。そして、試合当日は朝から丸めたシートを座席に差し込む重労働が待っている。これも大勢の有志によるものだが、事前に参加することが決まっている人もいれば、当日の呼びかけで協力してくれる人も大勢いるという。

 観客が座席に着き、キックオフ1時間ほど前になると有志代表らがスタンドを回り、シートを掲げるタイミングなどを指南。「ゴール裏のサポーターは、チーム同士の会議で細部を示し合わせます。コレオグラフィーを行う試合は事前通達があり、開門後にサポーターチームの代表が打ち合わせをします」と、かの有志は準備の概要を説明した。

初登場の1995年から知恵を絞り、他クラブでは真似できない“お家芸”が完成

 コレオグラフィーが初めて登場したのは、Jリーグが開幕して3年目、1995年3月22日に大宮サッカー場(現NACK5スタジアム)で行われたジェフ市原(現ジェフユナイテッド千葉)とのホーム開幕戦だ。

 “デカ旗”と呼ばれ、横幅が52メートルにも及ぶ巨大フラッグが、選手入場時に浦和サポーターで埋め尽くされたゴール裏に現れた。白地で中央の赤いハートの中には12の文字が縫い込まれている。のちに赤と黒が完成しクラブカラーが出揃うと、サポーターは知恵を絞っていろんな演出を編み出してきた。

 大勢の人々が何時間もかけて準備し、スタジアムに集まった全員の協力で初めて完成する。無償の奉仕はチームへの愛情の発露に違いない。ビジュアルサポートは、スタジアムに集う人たちとの信頼関係で成り立ち、他クラブのサポーターでは真似のできない“お家芸”なのだ。