2017年最初のグランドスラムであるオーストラリアン(全豪)オープンが開幕。第5シードの錦織圭(ATPランキング5位、1月16日付け、以下同)は、1回戦でアンドレイ・クズネツォフ(48位・ロシア)を、5−7、6−1、6−4、(6)6−7、6−2で破り、2回戦に進出した。 

 前哨戦のATPブリスベン大会決勝で痛めた左でん部のケガは回復し、幸いこの1回戦には影響がなかったようだ。大会開幕前に、マイケル・チャンコーチは、「大丈夫だと思います。練習をたくさんしてきましたが、よくできています。(1回戦の)月曜日には準備が整うでしょう」と語り、さらにダンテ・ボッティーニコーチも、「ここ2〜3日、圭は何も不平を言っていません。100%だと思いますし、いいプレーができていると思います」と語っていたことが、錦織の勝利によって証明された。

 ただし、試合のスコアが示すように、テニスの内容はベストと言えるようなものではなく、錦織からは反省の言葉がこぼれた。

「メンタル的に攻め切れていなかったので、そこが一番原因だと思います。フィジカル的にはまったく問題なかった」

 錦織は試合前に、クズネツォフをこう評していた。

「まだ完成されていない選手ですけど、そんなにやりたい選手ではない。(全豪の)速いサーフェスで、フラット(無回転)でどんどん打ってくるようだと、いろいろ気をつけないといけない」

 心配は現実のものとなり、クズネツォフはフラット系のボールを駆使して、バックのダウンザラインへ果敢に打ち、錦織が苦戦する場面も多く見られた。

「あそこまでフラットに打ってくる選手は少ないので、それに対応しきれなかった。最後まで、そんなに余裕はなかったですね」

 こう振り返った錦織はファイナルセットに入って、やっとトップ10選手としての底力を見せ、ボールを早いタイミングで左右に打ち分けて、クズネツォフを走らせ、ミスを誘った。最後の重要な場面では、錦織の精神力がクズネツォフを上回り、3時間34分のロングマッチを制した。

「どんな形であれ、勝つのが一番。1回戦を長い試合でもしっかり勝てたので、自信になってくれるとは思います。これ(2回戦以降も長い試合)が続くことはなるべく避けたいですけど」

 錦織の5セットマッチでのフルセットの成績は15勝5敗となり、改めて第5セットに強いことを印象づけた。

 初戦を何とか突破した錦織だが、これまでシーズン終盤やクレーシーズンの試合数が増えた時などに起こっていた左でん部のケガが、オフ明けの開幕戦で発生したことは、正直にいえば、気がかりであった。

「(どこでケガが発生したか、心当たりは)特にはないですね。たまたまつったものだと思うので、そんなには気にしていないです」と気丈に振る舞ったが、これからの全豪での試合で、突発的な痛みが再び発生しないことを願わずにはいられない。

 今季、錦織はプロ10年目のシーズンとなり、今まで過酷なワールドテニスツアーで戦ってきた疲労が、知らず知らずのうちに彼の体に蓄積されていたとしても何ら不思議ではない。錦織の非凡なテニスは体への負担が小さくなく、本人による体のケアはもちろん、チーム錦織のトレーナーによるサポートも受けながら、痛みやケガを予防して、暑さもともなう過酷な全豪の戦いを乗り切ってほしいものだ。

 2回戦で錦織は、ジェレミー・シャルディ(71位、フランス)と対戦する。シャルディはジュニアの時から対戦してきた選手で、当時は2歳年上のシャルディに歯が立たなかったが、プロとしての対戦成績は錦織の4勝2敗で、現在錦織の3連勝中だ。

「(シャルディは)展開がすごく早い選手なので、そんなにラリー戦にならないと思う。サーブはいいけど、ミスも多く、ミスを誘えると思う」
 
 その2回戦は1月18日(水)に行なわれるが、「この(全豪の)サーフェスで戦うのに、もうちょっと早い展開だったり、自分から攻めることが必要だったりする。少し改善して、次の試合をしたい」と語るように、グランドスラムの戦いの中でテニスのクオリティを上げていきたい。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi