――最後に、山口さんにとって“理想の父親”とは?

山口:常に心掛けていることというか、今の時点で親父である以上「こうありたい」というものをしておかなくてはいけないと思うんですけど、がむしゃらに生きている姿を、もう思いっ切りオープンに見せてもいいと思うんですよね。それを隠すこと無く、見せられる親父になりたいですね。コケた所を見せてもいいし、失敗した所を見てもらっていいし、ダメな所も見て欲しい。でも、それを「どう克服するか?」という。絶対にお父さんだってコケるんだよ、失敗するんだよって。それは人間だから、当たり前。でも、「どう立ち上がるか?」とか「どう乗り越えるか」という姿を見せなきゃいけない、そこは頑張らなきゃいけないと思うんです。

親父として「見られている」という意識は、普通の大人よりあると思うんですけど、一人の人間として、自分自身が心掛けなきゃいけないことかなと思いますね。立ち上がり方とか、壁にぶつかった時の乗り越え方ですよね。やっぱり、逃げて行く姿を子供に見せちゃいけないと思うんです。「親父はどう乗り越えて行くんだろうな?」というのを、子供はその時は理解できていないと思うんですけど、大人になった時に「そう言えば、うちの親父はあの時こうしてたな」ということが、ちゃんと背中を見て育つというか、脳裏に刻まれていることだと思うんですよね。

――先ほど仰っていた経験という意味では、失敗を怖れて始めから何もしないのではなく、失敗も含めて色々な経験をしてもらいたいという。

山口:はい。本当にちょっと何年か先に行ってる人間ぐらいの気持ちですね。僕自身も今ガァー!って走り続けている所なので、それを子供が見た時に「この大人すごいな」みたいな。たまたま、それが親父だったということですかね。


 山口さんが、人生で1番の財産と語る“経験”。映画「96時間」の主人公ブライアン・ミルズは、アメリカ政府の秘密工作員として幾多の修羅場を潜り抜けてきた“経験”によって、愛娘の海外旅行に潜む危険を敏感に察知し、娘が誘拐されるその瞬間にも冷静な対応で適切に助言を与え、カリフォルニアから遠く離れたパリへと自ら単身乗り込むと、備えた特別な追跡ノウハウで逆に犯人一味を追い詰めていく。

 そして、「子供に見せるべきは、壁にぶつかった時の乗り越え方」という山口さんの言葉を象徴するかのように、ブライアンは愛娘を救出する先で何度となく壁にぶつかろうとも、一度も臆すること無く最短距離を無我夢中で突き進んで行く。娘の扱いにおいてはあまりにも不器用な彼だが、その寡黙な後ろ姿が物語るメッセージには、現代社会において多くの親子が共感を覚えるに違いない。

映画「96時間」特集

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