更年期にさしかかると体の不調が増えてきます。「病院に行くほどではない」とそのままにしている症状が、じつは病気の可能性も…。産婦人科医の高尾美穂先生が、更年期世代の「肩こり・首こり、頭痛や立ちくらみ」について解説。対処法や病院にかかった方がよい症状についても伺いました。

※ この記事は『高尾美穂のオトナ世代のこころとからだ相談室』(扶桑社刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。

Q:以前から悩んでいた肩こり・首こりがひどくなった気が…

最初の質問は、肩こり・首こりについて。

「若い頃から肩こりがありましたが、40歳を過ぎてから首こりまでひどくなり、ずっと治りません。右ばかりがこっています。どうすればいいか悩んでいます。HRT(ホルモン補充療法)で軽減できますか?」(45歳)

A:まずは運動で肩や首のこりを改善。正しい姿勢も意識して

もともとあった肩こりが、更年期になってさらにひどくなるケースは少なくありません。更年期は自律神経の乱れによって交感神経が優位になり、血流が滞りがちになります。また、加齢によって筋肉量が減少し、正しい姿勢を保てなくなることも肩こりや首こりを悪化させる原因です。さらに、加齢による目の疲れも肩こりに影響します。

こうした理由から更年期は肩こりが悪化しやすい時期ですが、肩こりに対して更年期障害の代表的な治療薬であるHRTはあまり効果的だとはいえません。人によっては体調が回復することで体を動かしたくなり、結果的に肩こりが緩和される場合もありますが、基本的な対策は、やはり適度な運動と姿勢改善です。

●定期的にストレッチを

まずは肩をぐるぐる回してみましょう。それだけで血行がよくなり、痛みがやわらぎますよ。肩甲骨を寄せる、腕を上げ下げする、伸びをするのも効果的です。スキマ時間にぜひ取り入れてみてくださいね。ときにはプロの手を借りて、マッサージや鍼灸などの施術を受けるのもいいでしょう。また、枕の高さが合っていないと肩や首のこりが悪化することもあるので、自分にぴったり合う枕をつくるのもおすすめです。

なお、首こりの主な原因は「ストレートネック」です。スマホ操作やデスクワークで長時間うつむいた姿勢が続くと、首の自然なカーブが失われ、つけ根に負担がかかり、こりを感じやすくなります。首こりは肩こりに影響するため、正しい姿勢を意識することが大切です。

とくに大人世代は、加齢によりピンとした姿勢の維持を助ける筋肉が衰えやすくなるため、肩や首のストレッチだけでなく、背中や体幹を鍛える筋トレも同時に取り入れていきましょう。

Q:頭痛や立ちくらみは更年期のせい?

続いては、頭痛、立ちくらみについての質問です。

「更年期症状があり、2年前くらいから頭痛と立ちくらみがあります。市販薬を飲むと落ち着きますが、調子が悪いときは数日続くことも。この症状が更年期によるものなのか、ほかの病気か区別がつきません」(53歳)

A:年齢的に病気のリスクが増加。ほかの病気ではないか検査を

まず大前提として、更年期障害の診断には、ほかの病気が原因ではないか確認する必要があります。頭痛や立ちくらみは女性に比較的多い症状ですが、更年期によるものとは限りません。

たしかに更年期は、女性ホルモンの乱高下が激しく、自律神経が乱れやすいとき。そのため血管の収縮・弛緩や血圧の調整がうまくいかず、頭痛や立ちくらみが起こることも珍しくありません。

しかし、慢性的な頭痛や立ちくらみのようなふらつきには、脳腫瘍といった怖い病気が原因の場合もあります。相談者さんは更年期症状を感じているようですが、すべての不調を「更年期のせい」とひとくくりにするのは危険なことです。「市販薬を飲めば治まるくらいの軽い頭痛で病院に行ってもいいの?」と悩まず、専門医への受診をおすすめします。「仕事や家事を休みたい…」と感じるほどの症状であれば、病院にかかる立派な理由になります。

●定期健診で健康チェックをしましょう

さまざまな不調が現れる更年期は、健康状態の棚卸しをする絶好のタイミングです。気になる症状の裏に大きな病気の原因がないかチェックしましょう。40代以降は、女性は子宮体がん、乳がん、卵巣がんのほか、大腸がんの罹患率が上がります。また、健康を守っていたエストロゲンが減ることで血圧、コレステロール値などが高くなり、動脈硬化、糖尿病などを指摘されるケースも増えるので、定期健診も忘れずに。

なお、検査の結果、「様子を見ましょう」と言われると病院に行くのをやめてしまう人がいますが、これはもったいないこと。健康に対する心構えが必要な世代だからこそ、面倒くさがらず「経過」を「観察」するための通院をおすすめします。