アンヌ遙香さん
 2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(40歳・以前は小林悠として活動)。

 20年間生活した東京をあとにして、故郷北海道で自然や犬との気ままなシンプルライフを楽しむアンヌさん。本連載では、40代の今だから感じる日々のあれこれを綴ります。
 第89回となる今回は、アンヌさんが開幕中のワールドカップのテレビ放送を見て感じたことを綴ります(以下、アンヌさんの寄稿です)。

◆本田圭佑さんの解説が大きな話題に

 サッカーワールドカップが始まると、普段はあんまりサッカーを見ない人までテレビの前に集まりますね。はい、実は私もそのひとりかも。

 熱心な北海道日本ハムファイターズファンの私は普段は完全なる「野球の民」であるわけですが、先日の日本代表対チュニジア戦はしっかりリアルタイムで観戦。

 ワールドカップというのは不思議な魅力がありますね。ピザを予約し、日本代表のユニフォームを着て、応援タオルを愛犬にかぶせる……そんな準備をしているだけでなんだか楽しい!

 正直に言うと、ワールドカップが終わったあとも私が熱心にサッカーを見続けるかといえば、そこはちと自信がない、けれどもそれでいいの! 多くの国民をひとつにする力。それがワールドカップの魅力。

 そして今回、私が試合そのものと同じくらい楽しみにしていたのが、本田圭佑さんの解説。今大会、本田さんの解説は大きな話題になっています。従来の「解説者像」とかけ離れたイメージはさまざまな意見があるかもしれませんが、私は本田さんの解説を聞きながら「魅力的なコメンテーターとは何だろう」と改めて考えさせられた次第。

 あ、私はサッカーの素人ですので、今回はあくまでも「本田さんから考えるテレビコメンテーター像」に関しての考察をさせてください。

◆本田さんの解説の魅力は“抜群のバランス感覚”

 印象的なのは本田さんが実況アナウンサーに対して積極的に質問をする場面が結構見受けられる点ですよね。「あの選手は何センチですか?」「どこのクラブでプレーしているんですか?」など、

 普通ならいわゆる「解説者」ならあらかじめ知っていそうだと思わるようなことを、臆せず尋ねる本田さん。

 実況アナウンサーが「インテルです」と答えれば、本田さんは「へぇー」と素直な反応。あの「へぇー」、めちゃくちゃ良くないですか?!

 視聴者のためにあえて聞いてくれている、というスタンスももしかしたらあるのかもしれませんが、おそらく本田さんは、敵国の全選手の細かなプロフィールまで完璧に頭に入れているわけではないのでしょう。

 でも、それでいいのです。なぜなら彼が提供する価値は、選手名鑑のようなデータではないから。ワールドカップという極限状態で選手が何を考えるのか。なぜ今そのプレーを選んだのか。ピッチの中でどんな心理が働いているのか。

 そこに関しては、誰よりも深く語ることができるわけで、つまり本田さんは、自分が語るべき領域と、そうでない領域を正確に理解されていると私は分析します。わからないことは聞く。わかることは熱く語る。このバランス感覚が抜群じゃないですか?

◆実感を伴う「魂から出る言葉」

 考えてみれば、コメンテーターという仕事は「何でも知っている人」になることではないのですよね。 むしろ「自分が本当に語れることは何か」を理解することがスタートとも言えるかも。

 私自身、生活している北海道のテレビ局でコメンテーターをさせていただいていますが、そのたびに思うのです。

 知識量だけで勝負しようとすると限界があるのが現実。世の中には自分より詳しい専門家が必ず存在している中で、だったら何が必要なのか。それは実感をともなう「魂から出る言葉」かどうかではないか? と。