肉ブームの陰で焼き肉店の倒産が急増、業界が注目するのは「羊肉」人気
農林水産省が把握しているだけでも全国に320種類以上のブランド牛(銘柄牛)があり、47都道府県すべてに独自のブランド牛がある。それは地方経済活性策の一環でもあるが、テレビの食レポバラエティー番組の影響もあって、近年は「肉ブーム」が続いている。
しかし、そんな中、焼き肉店の倒産は過去最多を更新するレベルで急増している。東京商工リサーチなどの調査によると、2025年度の焼き肉店の倒産(負債1000万円以上)は57件に達し、2年連続で過去最多を記録した。倒産した57件のうち約9割が小・零細店舗だ。
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過去10年間の倒産件数を見てみると、2020年からのコロナ禍では倒産件数が10件台だったが、2024年度は50件に増えた。コロナ禍では、「換気が良い」「一人経営に向く」など外食界の勝ち組とも言われたが、状況が一変した。
倒産急増の背景には、複数のコスト高騰が同時に押し寄せる複合的な要因がある。まず、輸入牛肉の価格高騰(ミートショック+円安)だ。多くの身近な焼き肉店が頼ってきたアメリカ産やオーストラリア産などの輸入牛肉が、現地の需要拡大や記録的な円安によって高止まりしている。
次に、光熱費・人件費の上昇だ。強力な換気ファンを回し、ロースター(焼き台)を常に加熱する焼き肉店は、もともと電気・ガス代の負担が重い業態だ。深刻な人手不足によるアルバイト時給の引き上げが利益を直撃している。
小規模店は差別化で大手に対抗
のべ1万5000軒の飲食店を食べ歩き、100日連続で焼き肉を食べる「100日町焼肉生活」を2度達成しているグルメプレゼンターはっしーさんによれば、「小・零細店舗は自分の店の強みを認識し、差別化することがより求められる時代になった」とのこと。
大手の資本力(安さ・大量仕入れ)に対抗するため、中小・個人店が取り組んでいる差別化事例には次のようなものがある。
ただ肉を提供するのではなく、肉ごとに最適な食べ方をスタッフがプレゼンするスタイル。例えば、タレや薬味のパーソナライズで、30種類以上の薬味や塩、自家製タレを自由に組み合わせられる「タレバー」の設置など。
大手チェーンが真似できない「小回りの利き方」を武器にするやり方。一頭買いではなく「エッジの効いた特定部位」、カルビやロースではなく、チエキ(珍味部位)や特定のホルモンに異常に強い店としてのブランディングを狙う。はっしーさんによれば、東京・中央区の「月島焼肉 牛タン処 兎月」は、“牛タン”メニューだけで20種類以上を用意しているとか。
時間の差別化もある。深夜に特化したり、逆に業態の多毛作化で店舗を24時間フル活用したりする。昼メニューは焼き肉ではなく、仕込みで出る端肉を使った「牛すじカレー」や「肉盛り冷麺」などが考えられる。はっしーさんによれば、札幌市の「焼肉リゾート ハワイ」は22時~7時までの深夜営業のみだそうだ。
そして、テレビ朝日系「モーニングショー」によれば、羊肉が焼き肉業界に新しい風を吹かせているという。羊肉には、生後1年未満の子羊「ラム」と2年以上の大人の羊「マトン」がある。鉄分やビタミンB12などの栄養素を多く含んでいて、とくに女性から人気があるそうだ。
羊肉が焼き肉業界から注目されている理由は価格で、羊肉は牛ロースより3割ほど安く仕入れることができる。99.5%が輸入で、その多くがオーストラリア産だ。東京・目黒区の「焼肉だいごろう」の店主は「和牛とラムの二本柱で営業しているが、客の95%がラムを注文する」と話す。
国内の和牛人気にも転換点が訪れるか。
文/横山渉 内外タイムス
