【さかえだ いくこ】「株価低迷」から10年で”3.6倍”の銀行も…時価総額1兆円超えの地銀「一兆円クラブ」7社の実名
時価総額1兆円超えが続々の大型地銀
地方在住の筆者がお世話になっているのが地方銀行(以下:地銀)です。特に中小企業に多いように思いますが、「給与の振込のため〇〇銀行(その土地の地方銀行の名前)に口座を作ってください」と言われることが珍しくありません。メガバンクの支店は地方にはないことが多いからです。
地銀は、地域の企業や個人から預金を集め、そのお金を企業への融資や住宅ローンとして貸し出すことで利益を得る金融機関です。預金金利と貸出金利の差(利ざや)が主な収益源です。役割は単なる「お金の貸し借り」だけではありません。地域企業の成長支援や創業支援、自治体との連携による地域活性化など、地域経済を支えるインフラとしての役割を担っています。近年は人口減少や企業数の減少により競争が激しくなっていますが、日本銀行の金利引き上げによって貸出収益の改善が期待されており、経営統合やDX(デジタル化)を進めながら収益力の強化を図っています。また、投資信託や保険の販売手数料、事業承継支援、M&A仲介などのコンサルティング業務も重要な収益源となっています。
地銀は全国地方銀行協会に加盟する「地方銀行」と第二地方銀行協会に加盟「第二地方銀行」の2つに大別されます。第二地方銀行のルーツは、戦後の地域金融を支えた「相互銀行」にあります。相互銀行は、さらにその前身である「無尽会社」から発展したもので、中小企業や個人に資金を供給する役割を担っていました。1989年の金融制度改革により相互銀行は普通銀行へ転換し、従来の地方銀行と区別するため「第二地方銀行」と呼ばれるようになりました。現在は地方銀行との業務の違いは小さくなり、地域密着型の金融機関として地域経済を支えています。2026年5月末現在、「地方銀行」は61行、「第二地方銀行」は34行あり、多くの銀行がその株式を上場させています。銀行の数が多いように感じますが、あとからご紹介するように過去四半世紀程度で経営統合が非常に多かった業種で、銀行の数は少しずつですが減ってきています。
地銀は長く続いた低金利により、業績の成長があまり期待されない業種だった故、積極的なリスク資金の矛先にはならなかったため株価も長いこと低迷し、かつてはPBR1倍割れ銘柄がたくさんあったものでした。2016年3月期と比較できる地銀の大手行、千葉銀行(東プ:8331)について、時価総額等を比較した結果は以下の通りでした。
株価は10年で約3.6倍になり、PBRも1倍を超えています。株式投資に関してだけ言えば、10年でずいぶん景色が変わった業種です。かつては上位行でも4,000億円程度だった時価総額も1兆円超えが続々と誕生しています。
この記事では、時価総額が1兆円(2026年6月1日終値現在)を超える大型地銀をご紹介します。
首都圏最大の地銀グループ
■横浜フィナンシャルグループ(以下:横浜FG)(東プ:7186)
傘下に横浜銀行と東日本銀行、神奈川銀行を有する首都圏最大の地銀グループです。
横浜銀行は単体での預金、総資産が地銀でNo.1で、横浜FGの収益の大半を得ています。横浜銀行が大企業・中堅企業に強い一方、他の2行は中小企業向け融資に強みがあり、全体でバランスが取れています。2016年に横浜銀行と第二地銀の東日本銀行が経営統合されてコンコルディアFGが設立され、2023年に第二地銀の神奈川銀行を完全子会社化し、2025年10月に現在の商号になりました。
■千葉銀行(東プ:8331)
千葉県内に強固な地盤を持ち、地銀有数の収益力を持ちます。総資産は地銀においてNo.2です。2025年に同じ地盤の千葉興業銀行との経営統合に合意し、2027年4月の経営統合後、千葉県におけるシェアが預金で約34%、貸出金で52%になる見込みです。新たに設立される持株会社に既存の株式が移転されますが、その移転比率は1:1と発表されたため、足下は千葉銀行と千葉興業銀行の株価に大差がありません。
■しずおかフィナンシャルグループ(東プ:5831)
静岡銀行を中核とする金融グループです。自己資本比率が高いことで知られています。
2028年4月をめどに第二地銀の名古屋銀行との経営統合を目指しており、総資産規模で全国4位の地銀グループが誕生する見込みで、規模とサービスの双方で競争力を高めることを目指しています。株主還元に積極的で、足下の配当利回り3.48%(2026/6/1現在)と他行より高くなっています。
9700億円の政策保有株を抱える
■京都フィナンシャルグループ(東プ:5844)
京都銀行を中核子会社とする、京都府が経営地盤の銀行持株会社です。
地盤とする京都は、歴史的にハイテク産業や観光産業、伝統産業(西陣織、京仏壇等)が強いです。京都銀行はハイテク産業を中心とした京都の有力企業に創業当初から投資を実施してきました。ニデック(東プ:6594)、任天堂(東プ:7974)、京セラ(東プ:6971)、オムロン(東プ:6645)、ワコールHD(東プ:3591)等々の企業の株式を多く保有しています。26/3期末、京都銀行単体が保有する時価ベースの政策保有株は約9700億円で29年3月期までの5年間で政策保有株を3000億円以上削減する方針を打ち出しています。これらのいわゆる政策保有株式の売却によって得られた現金が株主還元されることが期待されます。
■めぶきフィナンシャルグループ(東プ:7167)
2016年10月に茨城県を地盤とする常陽銀行と栃木県を地盤とする足利銀行が経営統合して誕生した金融グループです。足利銀行は2003年に経営破綻し、一時国有化された日本で唯一の地方銀行です。当時の栃木県では、足利銀行が県内貸出の約半分を占める「地域経済の心臓」ともいえる存在だったため、通常の破綻処理ではなく、営業を継続しながら再建する方式が採られました。2013年に再上場を果たした後、2016年の経営統合を経て今に至ります。2026年3月期連結決算発表時に公表した2027年3月期予想は純利益が前期比13%増の950億円で、3期連続で最高益を更新の見込みです。これは、中期経営計画で掲げていた2028年3月期目標を1年前倒しで達成することになります。
半導体関連企業の支援に注力
■ふくおかフィナンシャルグループ(東プ:8354)
福岡銀行、熊本銀行、長崎県の十八銀行と親和銀行が20年10月に合併した十八親和銀行などを傘下に持つ九州の大手地方銀行グループです。26/3期末の連結総資産は約33.6兆円と地銀トップ水準です。九州は熊本にTSMCの工場が設立されるなど、半導体産業の集積が進んでおり、ふくおかFGも半導体関連企業の販路拡大、融資、産業用地や人材紹介などに力を入れています。
■八十二長野銀行(東プ:8359)
長野県を地盤とする銀行です。1931年、第十九銀行と六十三銀行が合併し、八十二銀行を設立されました2023年、長野銀行を完全子会社化し、2026年1月、長野銀行を吸収合併し、八十二長野銀行に商号変更されました。長野県内の貸出金シェアは6割超で、県内唯一の地銀として地域経済を支える役割を担います。
静岡銀行、山梨中央銀行、八十二長野銀行の3行は「富士山・アルプスアライアンス(提携)」を組んでおり、静岡、山梨、長野の各県に移住した人が利用しやすい住宅ローン商品を用意しています。移住に伴う就業・転職が生じても使いやすいように、審査要件から勤続年数を外し、移住直後の生活の変化に配慮し、元金返済は最大5年間猶予します。さらに住み替えまでに旧居を売却していなくても借りられる配慮をしているユニークな商品です。
話題の記事をもっと読む→利上げしても円安が止まらない"たった一つの理由"…日本が突き進む「通貨大暴落」のシナリオ
