祖父がこだわって「注文住宅」を建てた翌年に他界…。身内に今後住む人がない場合、固定資産税を考えれば処分するのがベスト?

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相続人がいないまま亡くなった場合、残された家の扱いはどうしたらいいでしょうか。 本記事では、家を引き継ぐ人がいない場合に発生する固定資産税の負担や、空き家として放置するリスク、処分の選択肢について解説します。

注文住宅を引き継ぐ人がいない現実

親族が他界したことをきっかけに、その家の今後について家族で話し合う際、問題になるのが「誰が引き継ぐのか」という点です。実際には、子や孫が遠方に暮らしていたり、すでに別の住まいを持っていたりして、誰も住む予定がないということも少なくないでしょう。
都市部への移住やライフスタイルの多様化により、実家を継ぐという意識は薄れつつあります。親族のこだわりや思い入れが詰まった家であっても、住む人がいなくなれば空き家となり、管理の手間やコストだけが残ります。「想い」は大切ですが、「現実」を見据えた判断が求められることもあるでしょう。
 

引き継がれない家にのしかかる固定資産税の重み

注文住宅は、他の建売住宅と比べて仕様が良く、資産価値が高い分、固定資産税の額も相応に高くなる傾向があります。誰も住まない状態でも、所有権が残っている限り税金の支払いが生じます。
また、住んでいないにもかかわらず、毎年数万円~数十万円単位で固定資産税が課税されるのは大きな経済的負担となるでしょう。さらに、適切な管理がされていないと「特定空き家」に指定される可能性があります。
「特定空き家」に指定されると「空き家等対策の推進に関する特別措置法」に基づいて「住宅用地の特例措置」が解除されてしまうため、税額は最大6倍に跳ね上がるケースもあるため注意が必要です。
 

空き家として放置することのリスクと責任

親族の家をどうにもできずにそのまま放置してしまうと、次第に空き家特有の問題が表面化してきます。人の出入りがなくなることで湿気や害虫が繁殖し、建物の劣化は急激に進行するでしょう。
外観が荒れてくると、近隣住民から不安の声や苦情が寄せられたり、自治体からの指導が入ったりすることもあるため注意が必要です。防犯面でも、空き家は不審者に狙われやすく、放火や不法侵入などのリスクが高まるでしょう。
こうした問題は単なる「個人の家の問題」ではなく、地域全体の安全や景観に影響を及ぼす社会的な課題です。また、放置が続けば最悪の場合、行政代執行による取り壊し命令が出され、その費用も所有者が負担することになります。
 

注文住宅の処分・活用という現実的な選択肢

誰も住む予定のない注文住宅については、早めに処分や活用方法を検討することが重要です。まずは、売却することを考えてみましょう。立地や状態によっては買い手が見つかることもありますが、地方や郊外では需要が限られている場合もあります。
また、解体して更地にすることで土地としての価値が上がる場合もあるため、活用方法の一つとして検討してもいいでしょう。空き家バンクや自治体のマッチング制度を活用し、所有者が希望者に物件を譲渡する事例も増えています。
さらに、賃貸物件として運用したり、リノベーションして宿泊施設に転用したりするケースもあります。費用や手間はかかりますが、「何もしないで放っておく」よりも確実に未来につながる選択肢です。親族が残した大切な家を「次に生かす」ことも、家族にできる供養なのかもしれません。
 

家族で考える未来のかたち

家は、家族にとってかけがえのない思い出の象徴です。しかし、その家を引き継ぐ人がいなければ、税金や管理の負担、空き家としてのリスクが現実的な問題として降りかかってきます。
「いつか誰かが住むかも」「思い出だから残したい」という気持ちも理解できますが、現実から目を背けずに家の将来を考えることが、家族にとっても、地域にとっても大切な責任です。
家を処分するか活用するかの選択肢はさまざまですが、どの選択にも「家を大切にする」思いが込められているはずです。住んでいた方の思いを受け継ぎながら、家の新たな未来を家族で築いていきましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー